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海が牙をむく季節。海のウネリの恐さと安全対策を再考察|桑原英高のグレ釣り一直線・尾長グレ追求編 vol.22
尾長グレは夏場でも狙えますが、その前に頭に入れておいてほしいことがあります。それは海の怖さを認識することです。特に注意していただきたいのが太平洋側で見られる、梅雨前線や低気圧の影響によって起こる大きなウネリです。尾長グレ狙いとは直接関係ありませんが、夏磯を楽しむうえではぜひ知っていただきたいと思い、ウネリによって命を落としかけた過去の経験を紹介させていただきます。海の恐さを今一度認識していただき、安全面には万全を期して釣りを楽しんで下さい。
(文:桑原英高)
近ごろはライフジャケットの着用率が上がったと感じますが、夏になると子どもが溺れて亡くなるというニュースが必ず聞かれて悲しい気持ちになります。海や川などの水の力は本当に恐ろしいものです。特に、この時期に太平洋側で見られる大きなウネリは要注意です。いくら泳ぎに自信があっても到底太刀打ちできないパワーがあります。実際、私は命を落としかけた経験があります。安全面を改めて考えるきっかけになればと思い、その経験談を紹介させてもらいます。
ウネリの中では泳ぎの自信など無意味です
この時期、太平洋側に梅雨前線が停滞すると、ウネリの高い日が続きます。その影響もあって釣り人や海水浴客の海難事故がたくさん発生します。ウネリの力というのは想像以上にすごく、泳ぎに自信のある人でもひとたび飲まれるとまともに泳ぐことができません。私自身、中学生のころに危険な目にあっています。
当時は夏場になると朝から晩まで海に潜って貝やタコを取って遊んでいました。もちろん泳ぎには自信があって「波にさらわれても泳いで帰ってこれるわ!!」と思っていました。しかし、その自信はまったく無意味なものだと気づかされます。
あるとき、釣りの最中に友人が高波にさらわれました。中学生のころとあってライフジャケットは着ていません。それでも友人を助けるためにとっさに海に飛び込びました。しかし、目の前に友人がいるにもかかわらず、ウネリの勢いがすごいためにいくら泳いでも手が届きません。今にも溺れそうな友人は必死になって近くの岩にしがみつこうとします。それを見た私は「こっちにこい!!」と大声で叫び続けました。ですが、ウネリの中では近くにいても波の音で声が聞えません。
何度も叫んでようやく友人が気づきました。「沖に出ろ」と私が指差す方に泳ぎ始めましたが、なかなか前に進みません。それで友人の腰のベルトを何とかつかみ、必死の思いでサラシがない沖まで出ました。いったん落ち着いてから波の緩やかなところを捜して上陸。何とか助かりましたが、自身が浮いているのが精一杯の中、友人を引っ張って泳いだことで体力は限界に達していました。助かったのは本当に奇跡的です。
サラシで真っ白になったところでは洗濯機の中を泳ぐようなものです。足にフィンでもつけていれば少しはマシですが、服を着たまま、靴を履いたままだとほとんど身動きが取れません。
磯場から離れた波静かな場所を捜すことが大事です
サラシの中で必死に岩にしがみつこうとしていた友人の手や体は貝や岩で切り裂かれてボロボロとなり、血が噴出してすごいことになっていました。
無理に岩にしがみついても大ケガをするだけですが、釣歴が長くても海や波の怖さを知らない人は落水するとパニックとなって必死でその場に上陸しようとします。そうすると友人のように貝や岩で体はボロボロになり、最悪の場合は出血多量で意識が遠のくことになります。
荒れているときに落水したときは、とにかく波の穏やかな場所に向かって泳ぐことです。波の高い日でも必ずどこかに静かなところはあるものです。
このときライフジャケットを着ていると波がないところを落ち着いて捜したり、救助の船を待つことができます。しかし、着用していないと海面に浮いているのが精一杯となり、体力が続きません。強い波の中では少しばかり人より泳ぎが達者というぐらいでは話になりません。
釣りをするときはライフジャケットが必要ですが、高価なものとあって学生の小遣いではなかなか買えません。釣りをする子どもがいる親御さんはせめてライフジャケットだけは買ってあげてほしいと思います。
【桑原英高プロフィール】
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