セオリーの過信は危険!! グレ釣りでよくある誤算と対策を解説 | 関西のつりweb | 釣りの総合情報メディアMeME

セオリーの過信は危険!! グレ釣りでよくある誤算と対策を解説

紀伊有田グレ釣り誤算1

磯のグレ釣りには釣り場ごとのヒットパターンといえるセオリーが存在するものです。しかし、それに固執し過ぎるのは危険です。その一例として、実力派である岩橋 稔さんが戸惑った紀伊有田での釣りを紹介しましょう。ヒットパターンを見つけ出すまでの流れをぜひ参考にして下さい!!

(編集部)

「この釣り場はこのパターンである程度の釣果が期待できる」というセオリーはどの釣り場にもあるものです。実際、高確率で好釣果が見込めるとあり、そのパターンを主体とするのは正攻法だといえます。しかし、それが通用しない状況ももちろんあるということを頭に入れておかなければなりません。

もっとも、状況的に明確な違いがあれば対策を講じることができますが、中にはいつもと同じような状況で反応はあるものの釣果につながらないといった微妙なケースもあるからやっかいです。

そんな微妙なケースの傾向と対策の一例としてベテランの岩橋 稔さんと訪れた南紀・紀伊有田のパターンを紹介しましょう。

グレの数釣りが期待できる紀伊有田。ところが…

釣行日は12月7日。紀伊有田の磯は寒グレ初期に40㌢までの中型を主体に数釣りが期待できる釣り場として人気があります。

その数釣りにつながる要因の1つに全体的に水深が浅いということがあります。ときには矢引き〜1ヒロといったウキ下を中心したアプローチにて反応をとらえられるぶん、手返しよく数を稼ぐことができるわけです。

紀伊有田グレ釣9り誤算
水深が浅いぶん効率のよい釣りを展開できる紀伊有田の磯。水温が高く推移しているなら要注目の釣り場です。

1週間前に沖の大島という磯に乗った岩橋さんは、10投連続でヒットするなど38㌢級を中心に良型を30匹近くキャッチしたとのこと。その好況が続いているとあって再び沖の大島に上がった当日も連発必至であると思われました。実際、開始直後はセオリー通りの浅ダナ狙いで37㌢と35㌢がヒット。前週通りに入れ食い状態となることが予想されましたが、ここから一転して食い渋りへと突入したのです。

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開始早々に良型グレが浅ダナで連発したことがその後の迷いへとつながりました。

次に良型グレの反応をとらえたのは16時の納竿間近。ヒットパターンは開始直後や前回とは大きく異なる〝やや深めのタナ〟だったのです。

それを見つけるまでに時間がかかったのは前週の強過ぎる印象に加え、以下の要因によってグレに食い渋りが見られたことで「セオリーに固執し過ぎた」という点があげられます。

①潮が動かない
②上層で餌が取られる
③見えない餌取りの存在
④活発な浮きグレの存在

では、それぞれの要因について検証してみましょう。

【グレが釣れない誤算①】潮が動かない

「潮が動かない」という状況が続いたのは食い渋りの大きな要因となりました。グレの活性が高まらないことはもちろん、前週のヒットパターンとなった紀伊有田でのセオリーである釣り方が実践しづらいのは誤算でした。

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潮がまったく動かない状況は想定外。グレ釣りではよくある悪条件に苦戦させられました。

「およそどの釣り場でも遊動仕掛け(なるほど式)でグレのタナを探るのがいつものパターン。〝刺し餌を送っては引き戻す〟という操作を食うと考えられる範囲で繰り返してタナの把握に努めるんよ」

仕掛けをジグザグに入れるイメージでグレが食うタナを探るこのパターンでとりわけ重要となるのが潮の流れです。流れがなけば〝送っては引き戻す〟という操作は成立しません。引き戻した際に潮の抵抗がないぶん仕掛けが手前に寄り、タナを探る以前に撒き餌と刺し餌にズレが生じるからです。

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それでもグレに活性があった朝一番は狙い通りに浅ダナで良型がヒット。このテンポのよいヒットがセオリーを信じるというのちの状況に繋がったのです。

【グレが釣れない誤算②と③】上層で餌が取られる=見えない餌取りの存在

朝イチのヒット以降はグレが掛からない状況が続くわけですが、セオリーである浅ダナ狙い(1ヒロ〜1ヒロ半のウキ下)でアタリがなかったわけではありません。時間帯によってはきれいなウキ入れが見られるなど反応は随時見られましたが、タイミングをいろいろとかえて合わせても乗らないという状況が続きました。

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ハリに残る餌を求めて刺し餌もいろいろと使いわけました。

「前週は前アタリがでた段階でラインを空中へ持ち上げるようにして張りを作ることでおもしろいように本アタリがでたんよ。でも、今はそれをすると刺し餌を離すんよなぁ」とベテランも戸惑いを隠せません。

餌取りの可能性も考えられましたが、浅ダナ狙いながらも餌取りの姿はいっさい見えないことから犯人はグレだと推測。餌が取られるタナを中心に探るというグレ釣りの基本も踏まえたうえで「正解はやはり浅ダナ。あとは合わせのタイミングをつかむだけ」という考え方でアプローチを継続することになります。

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岩橋さんが撒き餌によく加えるのがリーズナブルなパン粉。増量や濁りという効果が期待できる従来品に加え、近ごろはアオサ、アミエビ&沖アミといったエキスが配合された高集魚タイプも販売されているので重宝しているとのことです。
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撒き餌のかたさ調整を手軽にできるのもパン粉の利点です。

そして、乗らないアタリを見せる相手の正体を確認するための対策としてBのウキをオモリなしで使用する作戦を実行。浮力の残ったウキを用いることでより大きく表現される小アタリをとって掛け合わせるのが狙いです。

それでアタリが明確にでるようになったものの合わせてもハリ掛かりに至らず。さらにシビアなタイミング合わせが必要ということで、より鋭敏な反応が期待できるカヤウキを用いた2段ウキ仕掛けにチェンジします。これでタイミングをつかみやすいより明確なアタリ(ウキのトップまで入るほどの反応)が狙い通りにでるようになったことから正体の突き詰めは時間の問題かと思われましたが、瞬時に合わせても、タイミングを十分に取って合わせてもフッキングに至りません。

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紀伊有田のようにシモリが多く点在する全体的に浅い釣り場では、シモリ回りにも木ッ葉グレなどの餌釣りがつくことから「沖にグレ、手前に餌取り」といった分離作戦が展開できません。

この状況から見えてきたのは、相手はグレではあるものの何らかの要因で食い渋っている、あるいは木ッ葉クラスが浅いタナにたむろしている、ということです。ここでベテランが見立てた作戦は、前者であるなら潮流の動きだしなどの状況変化を逃さずとらえるしかない、後者であるならやや深いタナ(良型は木ッ葉グレの下にいることが多いため)を攻める、というものでした。


【グレが釣れない誤算④】活発な浮きグレの存在

まずは後者のパターンを実践しようとしたところ、30㌢を優に超える良型とおぼしき浮きグレの波紋があちこちで見られるようになりました。見るからに活性が高そうな動きであったことから「うまく狙えばあれらが食うのでは?」という考えが頭をよぎり、水温がまだ高いということもあって浅ダナの釣りを継続することになったのです。つまり、浅ダナで入れ食いとなったという前週のイメージがあまりにも強過ぎ、正解の足がかりとなる後者のパターンへと向かう流れを断ち切ることになるのです。

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このようなグレの波紋があちこちで見られました。

水温が低いなどの悪条件があるうえ、浮きグレの波紋がすぐに消える状況であれば時間をさほど要さずに諦めがついたのでしょうが、広範囲にわたって活発さが継続しただけに浅いタナでの釣りはしばらく続きました。

結果はこれまでとかわらず、きれいなアタリで餌は取られるものの掛けるまでには至らず。それでも以上の過程を経たことで迷いは払拭され、正解のパターンへとつながります。

【グレが釣れたヒットパターン】ボイル沖アミの刺し餌+やや深ダナ狙いが正解!!

ここで釣り方をリセット。半ヒロのマージンを持たせたウキ下2ヒロの遊動仕掛けでアプローチを開始。そして、掛かりもせず、目視もできない上層にいるであろう木ッ葉グレをかわすために刺し餌にボイル沖アミを使用します。

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ボイル沖アミを予備として持参していたことが貴重な1匹を呼び込むことになります。

しかし、これだとアタリがないまま餌が取られるという状況が続きます。そこで「アタリはごく小さく、遊動部分のマージンがウキへと伝わる反応を妨げているのでは?」という考えの元、マージンをさらに詰めて4分の1ヒロにします。それでも結果はかわりません。

「潮が動かないせいもあってグレはかなり神経質になっているみたいやな」といいながらベテランはウキにヨウジをセット。アタリがダイレクトに伝わる固定仕掛けに変更してアプローチを展開します。

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まずはイサギがヒット。刺し餌が目当てのタナに届いていることを知らせてくれる1匹とあって期待感が高まりました。

これが正解。これまででなかった小さなアタリを掛け合わせると、竿が大きく曲がりました。慎重にやり取りをして取り込んだのは35㌢クラス。遠回りをしたものの、正解にこぎつけて出た結果に岩橋さんの顔がほころびました。

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待望のヒット。ハリスを細くしているだけに慎重なやり取りが展開されました。
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キャッチしたのは35㌢。ポッテリと肥えたナイスプロポーションの魚です。

「タナが把握できれば固定仕掛けはやっぱり強いね。潮がきいていて、刺し餌先行で仕掛けがきれいになじめば遊動のパターンでもアタリがでていたはずやけど、潮が動かんことが海中で何らかの影響を及ぼしてハリスがフケたり、湾曲してアタリがウキに伝わらなかったんちゃうかな? もちろん、夕方の時合というのもあるけど、ヒットパターンをつかめてよかったわ!! 前週のよく釣れたイメージがなかったらもっと早く釣れてたと思われるだけにもったいなかったなぁ。長年釣りをやってても拭えない固定観念って恐いわ(笑)」

〝やや深ダナ〟〝刺し餌には餌持ちのよいボイル沖アミ〟〝固定ウキ仕掛け〟という今回のヒットパターン以外にも、仕掛けのなじみをよくするため(潮が動いていない中で早く潮筋に入れるため)に普段使う1.75号のハリスを1号まで落とす、尾長グレのヒットも想定して使用していた7号のハリを食い込み重視で5号へ落とすなど、仕掛けのライト化も実行。それらも釣果に結びついた要因の1つとだと考えられます。

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抜き上げによる取り込みを数こなすことを想定し、道糸は2.5号を使用。太めとあって食い渋り時にていねいに行ないたいライン操作にやや苦労しました。バリバス・トリビュート磯が有する強さが生きる細いラインを用いていればもう少し早い段階でまた別のヒットパターンがつかめたかもしれません。
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ハリスはバリバス・ハードトップ TiNICKS1〜1.75号を使用。細号柄でも安心感のあるハリスは食い渋り時に大きなアドバンテージになります。
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尾長グレの可能性がある釣り場において小バリの使用は迷うところです。食い渋り時のハリ選択は口太グレと尾長グレのどちらかに的を絞るのが得策です。グラン・ジークグレ 競技スレやグラン・ジークグレ のませといった具合に形状の違いでも掛かりがかわることも多いため、ハリはいろいろな種類を持参するのが望ましいといえます。

終わってみると、この日の紀伊有田の磯はほぼ全滅状態。港に戻ってきた大半の釣り人が残念がる中、遠回りはしたものの正解パターンを見出して良型グレを手にしたのはさすがのひとことでした。

さて、今回の釣行で考えされられたのは…

①セオリーに固執し過ぎるのは考えものである。
②よいときのイメージを持ち過ぎるのはよくない。
③反応がわるいときはいったん大きく釣り方をかえてみる。
④釣り方を大きくかえられる準備をしておく。

…ということです。

①〜③をクリアしていても念のために持っていたボイル沖アミがなければ最後の1匹は釣れていないと思われます。この点でも①〜②の要点を頭に入れ、入念な準備を心がけたいものです。

なお、タナの探り方、2段ウキの活用などの随所に見られたベテランの釣り方は寒グレシーズンでも通用するものばかりです。食い渋りが見られるときの対策としてぜひ活用してみて下さい。

紀伊有田の釣行メモ

松村渡船
電話番号 090-8930-1498
Instagram https://www.instagram.com/matsumuratosenn/
料金 4,000円
備考 ■弁当あり(500円)
■要予約
■船付きに直接集合し、船長がきたところで渡船に乗船。料金は後払い制。
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釣り人思いの船長が案内してくれる松村渡船。あらかじめ乗りたい磯を予約することもできるので気兼ねなく釣行することができます。

タックルデータ

竿 シマノ・イソリミテッド アステイオン 1.2-530
リール シマノ・BB-X テクニウム2500DXG S
道糸 バリバス・トリビュート磯サスペンドタイプ2.5号
ハリス バリバス・ハードトップ TiNICKS1〜1.75号
ハリ グラン・ジークグレ 競技スレ5〜7号
グラン・ジークグレ のませ5〜6号