夏にチヌの連発が味わえる!! 紀州釣りの基本を徹底解説 | 関西のつりweb | 釣りの総合情報メディアMeME

夏にチヌの連発が味わえる!! 紀州釣りの基本を徹底解説

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夏はチヌの活性が基本的に高いシーズンですが、好釣果を求めるなら同じく活性を高める餌取りをかわす釣り方が求められます。その最有力となる釣り方が紀州釣りです。何かと難しいイメージのある釣りですが、夏をもっと楽しいものにするためにもチャレンジすることを推奨します。初心者の方でも理解できるようにその釣り方を解説しましょう

(文:藤原直樹)

紀州釣りの利点は?

夏場は紀州釣りが特に有効となるシーズンです。同じくウキを用いるフカセ釣りで見られる、活発に動く餌取りの影響で狙いのタナまで刺し餌や撒き餌が届かないためチヌが釣れないという状況は紀州釣りではありません。撒き餌(ダンゴ)を打ち続けることでチヌを集めることができるため、隣の釣り人を尻目に自分だけ入れ食いということも可能です。

紀州釣りに適した釣り場は?

身近な漁港にある波止をはじめ、磯でも紀州釣りは可能です。ただし、底を釣る方法とあって起伏の激しい場所は適しません。根掛かりが多発したり、ウキ下の設定が難しい場所ではなく、できるだけフラットな砂地(泥地)の底質を選ぶことが大切です。

初めてということであれば、漁港などで見られる足場のよい護岸に釣り座を構えるのがベストです。投入時などにバランスを崩しやすいテトラは避けましょう。

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足場のわるいテトラ帯とともに、流れが複雑になりがちな波止の先端回りを避けて釣り座を構えましょう。

また、川のように潮が流れる場所も釣り自体の難易度が高くなります。たとえば、漁港などにある波止の先端は潮流が複雑になることが多いため、釣りに慣れるまでは避けるのが賢明です。釣り座を構えるべきは潮流が緩やかな波止の中央付近や港内向きです。潮通しのよい場所よりはわるい場所の方が自分のポイントへ魚を集めやすくなるのでおすすめです。

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水深は5㍍前後から10㍍ぐらいまでが釣りやすいでしょう。底が見えるほどの浅場は適しておらず、少なくとも3㍍程度の水深が求められます。逆に、水深が深い場所はチヌが釣れる確率は十分にありますが、釣りの難易度は高くなるため初めのうちは避けましょう。もっとも、チヌの活性が高い夏場は深い場所を釣る必要はない(深場を釣るのは主に冬場です)ため、釣りやすい適度な水深の釣り場を選べばOKです。

紀州釣りをする釣り場は実際に竿を出して調べるのがベストですが、慣れない場所へ釣行する場合は餌店などで聞くのが得策です。ただし、渡船を利用する釣り場の場合、紀州釣りを禁止していることもあるので事前の確認が不可欠です。

紀州釣りのタックルは?

竿について

磯竿なら1〜1.5号程度5㍍前後のもの、チヌ用の竿なら軟調より硬調のものを選びましょう。中でも、穂先への糸ガラミなどのトラブルが少ない中通し竿がおすすめです。

選択する際に重視したいのは、餌をくわえたチヌに合わせの力がきちんと伝わることです。したがって「チヌ狙いで使うには少しかたいかな?」と思えるややかための調子が理想的だといえます。

また、他の釣り方よりも糸フケを多く出すことが多いぶん、穂先への糸ガラミが起きやすいという特徴があります。そのため、動きやすい繊細な穂先よりもしっかりとしたチューブラー穂先が採用された竿が適しているといえます。

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リールについて

ナイロンの2~3号を100㍍ほど巻けるリール、番手でいえば2000〜2500ぐらいが適しています。

性能に関しては特にこだわらなくてもいいですが、ハンドルの方向(左右)については一考すべきです。

おすすめは、利き手(ダンゴを投入する手)が右ならハンドルの方向は右、左ならその逆というパターンです。利き手で竿を持つという一般的な考えとは逆ですが、ダンゴを握ってから投入後に糸を送るまでの一連の動作(あとで解説します)を行なうには利き手ではない方で竿を持つ方がスムースなのです。

ラインについて

使用する道糸は2~3号が標準です。サスペンドやシンキングといった沈むタイプよりも道糸の修正(ラインメンディング)がしやすいフローティングタイプがおすすめです。

ウキについて

ウキは紀州釣り用としてさまざまな種類が市販されていますが、天候や釣り場を選ばずに万能に使えるカンつきの玉ウキタイプか、視認性のよい寝ウキが入門用としておすすめです。

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浮力の強いものを選びましょう。

ひと口に玉ウキや寝ウキといっても色や形はさまざまです。その中から選ぶ基準として最優先したいのは浮力です。5B~1号程度のオモリが乗る浮力を持っているものであれば、ダンゴが割れたタイミングや、小さいアタリ(海面に波紋ができる)などの必要な情報を的確に伝えてくれます。逆に浮力が小さいとウキが常に沈んだ状態になりやすく、アタリなのか? 波で沈んだのか? といった具合に反応がでても不明瞭な情報となりがちです。

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浮力が強いウキはダンゴが割れた様子をしっかりと伝えてくれます。

中には「浮力が強いと、餌をくわえたチヌが違和感を覚えるのでは?」と思われる方もおかれるかもしれませんが、活性の高い夏場のチヌに関しては問題ありません。ポコッと浮いたウキをズボッと沈めるほど鋭いアタリを見せてくれるものです。「チヌ=繊細なアタリ」という考え方は紀州釣りには必ずしも当てはまらないのです。

寝ウキは、名前の通りに水面で横たわるのが特徴です。その状態から角度がつけばアタリだと判断できます。ときには海中に引き込む大きなアタリが見られるなど、視覚的にわかりやすいとあってベテランにも愛用者が多くいます。波穏やかな湾内や港内では寝ウキの方がアタリを把握しやすいぶん楽しいかもしれません。

玉ウキや寝ウキ以外に棒ウキタイプもありますが、浮力が小さいことが多いためベテラン向きといえます。ある程度釣りに慣れてから試し、自身の釣りにマッチするなら使い続けるとよいでしょう。

ウキ止めについて

ウキ下を保つためのウキ止めは1つつけるのが一般的ですが、私は通常のウキ止めとしての役割を持つものの上部に基準となるものをセットするという具合に2つつけています。

紀州釣りでは、潮の干満や流れ、魚の活性によってウキ下の変更を頻繁に行ないます。その際、基準となるウキ止め(通常のウキ止めよりも50㌢上や半ヒロ上といった具合にわかりやすい位置にセット)があればウキ下調整幅が明確になり、タナボケを防げるとともに元のウキ下に戻すことも容易になります。

ハリスについて

ハリスはフロロカーボンの1.2~1.7号を用います。長さは1~2ヒロ取れば十分ですが、注意点があります。交換する際は常に同じ長さとすることです。交換するたびに長さがかわるとウキ下もかわってしまうからです。

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仕掛けはあらかじめ作っておくことをおすすめします。

そのため私はハリをセットしてハリスを一定の長さに揃えた仕掛けをあらかじめ用意しています。個人的には5㍍未満なら1ヒロ、10㍍程度なら1ヒロ半、10㍍以上なら2ヒロという具合に水深に応じて使いわけられるようにハリスの長さが異なる仕掛けを用意していますが、慣れないうちは糸つきバリを使用するとよいでしょう。

ハリについて

チヌバリなら1~3号程度、グレバリなら7~9号程度というのが基準となります。

サイズ以外では自重が重要です。基本的にオモリを使わない紀州釣りの場合、底をキープしやすいという観点から自重のあるタイプが使いやすいといえます。

紀州釣りで用いる餌は?

ダンゴについて

紀州釣りの要となるのがダンゴです。慣れてくるとアレコレと考えたくなりますが、まずは基本に忠実なものを使いましょう。

使用する材料は、米ヌカ、砂、細びきサナギ、押しムギです。それぞれの配合割合の目安は、米ヌカ5㌔、砂2㌔、細びきサナギ1㌔、押しムギ0.5㌔という具合です。もっとも、釣りのシステムを理解するまでは、釣りが成立しないことも考えられる自作品の使用は推奨しません。釣り餌店などで販売されている紀州釣り用のヌカや、集魚材メーカーのアイテムなど、水などを加えるだけですぐに使えるものを選ぶことをおすすめします。

釣り餌店などのオリジナル商品は近くの釣り場に合わせて配合されていることが多いため使い勝手が良好です。初めて行く釣り場であれば、使ってみるとよいでしょう。

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紀州釣りが盛んな釣り場の近くにある釣り具店ではこのようにダンゴベースが販売されていることがあります。

いつでもどこでも同じものを使って慣れたいということであれば、紀州釣り専用の集魚材を使うことになります。慣れないうちはうまく配合するのが難しいため、パッケージに記載されている配合パターンを参考にして仕上げましょう。

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まずはパッケージに記載されたパターン通りに作り上げましょう。

そして、ダンゴにするうえで肝心なのが水加減です。水(海水)はもちろん、そのかわりに使用するアミエビの水分のいずれにしても多過ぎると投入できなくなるので注意が必要です。水分を加えるときは「少しずつ」を心がけることが大切です。市販の集魚材であればパッケージの裏に水分量の目安が記載されていることがほとんどですが、釣り餌店のものは記載されていないことがあります。水分量がわからないときはスタッフに確認しましょう。

釣りをしているうちにダンゴベースの水分は飛んでいきます。ダンゴが握れないほどパサパサになれば水分を加える必要がありますが、ここでも入れ過ぎないように注意が必要です(入れ過ぎてベチャベチャになると以降の釣りができなくなります)。慣れるまではバッカンなどに入れたダンゴベースの表面部分(数投分ぐらいの量)だけに水分を加えるようにしましょう。

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水分の調整は慎重に行ないましょう。

ダンゴの配合や調整は紀州釣りの生命線です。これがうまくできるまでには3年ほどかかるといわれています。それだけ経験と努力が必要となりますが、海中での割れ具合など思うままに扱えるダンゴを見つけることができれば本当に楽しい紀州釣りとなります。

刺し餌について

主に使用する刺し餌は、定番の沖アミ(生や加工品)、ボケ(通称、小ボケがベスト。大きくても中ボケまでとします)、コーン、粒サナギなどです。その他、虫餌やフナムシ、カニ類やアケミ貝などが有効な場面もあります。

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刺し餌の基本は沖アミです。
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アタリがでやすいボケも持っていると重宝します。

基本的に沖アミとコーンで釣りを組み立てることができます。ただし、注意したいのは最低でも2種類は持参するということです。チヌや餌取りの目先をかえることはもちろん、餌取りの種類や量を推測するうえでも2種類以上を使いわけるのが有利だからです。また、日ごとにかわる当たり餌を見つけるという点でも1種類のみで挑むのは不利となります。少なくともコーンやサナギなどの常温保管できる餌は常に持参しましょう。

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コーンやサナギは常備しておきましょう。

餌取りに強い紀州釣りとはいえ、ダンゴから出た刺し餌が取られやすいのは他の釣りとかわりません。釣りに慣れればダンゴが割れるタイミングを調整する(主に遅くする)ことで餌取りをかわすこともできますが、対策としてはあくまでも取られにくい刺し餌を用いるのが基本です。その方が勝負が早いですし、打ち返すテンポがよくなるぶん集魚力も上がるため釣果アップが期待できます。

紀州釣りの実釣パターンは?

道具とダンゴの準備ができれば実釣です。

水深の計測について

最初に行なうのはポイントの水深を測ることです。この際、地形を把握するために1個所だけでなく、2~3個所の水深を測りましょう。

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まずは狙いたいポイントの周囲へ投入し、水深の変化を探りましょう。

測り方は、ハリのチモトに2~3号程度のオモリをつける、タナ取りオモリを使う、実際にダンゴを投入する、のいずれでも構いません。水深がまったくわからない初めての釣り場であればオモリを用いるパターンである程度測ってからダンゴを投入して微調整を行なうのがよいでしょう。

ウキ下設定について

まずは、ダンゴの割れ具合を把握することも兼ねて、ダンゴが割れるとウキが海中から飛び出すように、着底したダンゴの真上にきた玉ウキが5㌢ほど沈む状態にウキ下を合わせます(寝ウキの場合は、ウキが立っている状態に合わせます)。

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釣り始めはウキが5㌢ほど沈むウキ下の設定とします。これでダンゴの割れ具合を見きわめましょう。

この際、ウキ下を決める下側のウキ止めと、基準とする上側のウキ止めは半ヒロや50㌢という具合に任意で決めた間隔を取ってセッティングします。

たとえば50㌢の間隔を取った場合、潮位の変化に合わせて下側のウキ止めを上へ動かしてウキ下を20㌢深くすると、間隔は30㌢となります。やがて潮位が下がって元のウキ下に戻すときには、上側のウキ止めの位置を目安にして下側のウキ止めを20㌢下げればいいわけです。

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1〜2回程度のウキ下調整であればどれだけ動かしたかを記憶することも可能ですが、5㌢や10㌢といった微調整を何度も繰り返すと釣り始めに測った水深や元のウキ下がわからなくなるものです。その都度、水深を測り直すのは大きな手間となるため、2つのウキ止めを使うことを推奨します。

ダンゴ投入時の注意点

ダンゴの形を保ったままきちんと着底させることが最重要です。空中で割れたり、着底前に割れるのは水分や粘りが足りないか、握る際の力が弱いかのいずれかです。まず水加減を調整する前に握る回数を増やしてみましょう。

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着底するまで割れないかたさになる握り方を見きわめましょう。

ダンゴを握る際に大切なのは、握る回数を数えながら一定の力を加えることです。強かったり弱かったりと不安定な力加減だと握る回数でダンゴの割れをコントロールできません。「握る回数を2回増やすと割れるのが10秒遅くなる」といった具合に細かなコントロールをするには一定の力加減で握ることが不可欠なのです。

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一定の力加減で握ることが大切です。

そして、ダンゴの投入点がポイントとなるわけですからできるだけ同じポイントに投入することが大切です。私は、およそ1㍍四方程度の範囲をキープするように心がけています。

ダンゴが割れてから注意点

基本となるウキ下の設定が完了すれば、魚を寄せるべく打ち返しを続けます。

投入後になじんだウキは、アンカー的な役割をしていたダンゴが割れると潮の流れや風などの影響を受けて自由に動きだします。このとき、ウキや仕掛けを引っ張らないように竿先からウキまでの道糸にたるみを持たせておくことが大事です。一般的なウキ釣りではたるみ(糸フケ)が少ないほどアタリがでやすくなりますが、ウキから下にオモリがない紀州釣りの場合は不用意に引っ張ると仕掛けが浮き上がるので注意が必要です。サソイを入れるとき以外はウキや仕掛けを引っ張らない程度の糸フケを出しておきましょう。

仕掛けは潮などに流されてポイントからずれていきます。そのままどんどん流さず、2~3㍍程度動けば回収して打ち返しましょう。

アタリ〜取り込みについて

魚が寄り始めるとさまざまなアタリがでます。どれを合わせたらよいのかと迷うものですが、チヌのアタリは基本的に明確です。したがって、しっかりとウキを沈めるアタリを合わせることを意識すればOKです。その際、前述した糸フケを巻き取ってから合わせることが大切です。糸フケを取らずに合わせると、その力がハリへ伝わらずにフッキングしないこともあるので注意して下さい。

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力強く合わせるのが紀州釣りの基本です。

うまくチヌが掛かればあわてずにやり取りすればOKです。引き応えを楽しみながら浮かせて玉網ですくって取り込みましょう。

紀州釣りで頭に入れておくべきことは?

時合について

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基本的に反応がでるまで時間がかかる釣りです。アタリがないからといって諦めずに打ち返すことが大切です。

紀州釣りには時合というものは特にありませんが、他の釣り方と同じように上げ7分や下げ3分といった潮時、朝夕のまづめどきにチヌの食い気が高まりやすいのは確かです。ただし、ダンゴを用いて集魚をするという特性上、釣り始めから2時間程度は本命のアタリは少ないという傾向があります。毎日のように誰かが紀州釣りをしているポイントでは1投めから釣れることもありますが、基本的にはアタリがでるまでに時間がかかります。そのぶん、釣れたときには自分で作ったポイントで釣ったという充実感を得られます。

潮の流れの緩い釣り場や、釣り人があまり入っていない釣り場では魚が寄るまでに半日かかることもあります。初めのうちは実績場に目をつけ、他の紀州釣り師と並んで釣るのが賢明だといえます。

チヌがヒットする予兆について

チヌがヒットする予兆はいろいろとありますが、その最たるものが刺し餌の残り方です。それまで餌取りに取られていた刺し餌が無傷で残っていれば大チャンスです。餌取りを蹴散らすようにチヌが寄っていると考えられるので次投は集中して投入しましょう。

風について

向かい風は紀州釣りにとっては悪条件となります。暑い盛夏は風がないとつらいですが、強風の場合は釣り座を変更することを考えましょう。