伝馬船ってご存じ? 美味魚が狙える楽しい釣りを紹介します|マルチ派Kのデータ釣行指南!vol.3 | 関西のつりweb | 釣りの総合情報メディアMeME

伝馬船ってご存じ? 美味魚が狙える楽しい釣りを紹介します|マルチ派Kのデータ釣行指南!vol.3

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伝馬船の釣りをご存じでしょうか? 伝馬船とは、ポイントとなる沖合まで自身が乗った小舟を親船で曳航してもらうスタイルのことです。そのスタイルの釣りを楽しませてくれる渡船店はいくつかありますが、今年の水温推移状況と似ている2018年の釣果データを参考にして選んだのは印南の高井丸です。スマガツオやメイチダイなど、食べるととてもおいしい魚が期待できるなど大きな魅力のある釣り場とスタイルを紹介しましょう

(カメラ/文 黒野忠則)

みなさん、こんにちわ。前回のvol.2から1カ月半もたってしまいました。投稿が遅くなって申しわけございません。何度か釣りに行きたいと思っていたのですが、行ける日に限って天候不良だったり、仕事が急に入ったりと運に見放されていました。

さて、今回は和歌山県印南町にある高井丸が提供して下さる西ノ地沖での伝馬船(「てんません」と読みます)の釣りにチャレンジしました。

「伝馬船っていったい何?」と疑問に思う方もたくさんおられることでしょう。簡単にいうと、自身が乗った小舟をロープを介した親船で曳航してもらい、ポイントに着いたところでロープを切り離すとともにアンカーを打って沖合の定点で釣りをするというものです。

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参考:和歌山県水産試験場・定線観測情報

そんな伝馬船の釣りにチャレンジしようと思ったのは、今年の水温の推移状況と類似した2018年の下半期における高井丸さんの釣況がよい具合(それ以前の年よりも主体となるイサギ・スマガツオともに安定感があります)だったからです(過去2度の記事でお伝えした通り、水温の推移状況が似ている年は釣果状況も似る傾向があるというのが私の考え方です)。

多彩なターゲットが期待できるウキカゴ釣りでチャレンジ

釣行日は7月7日(日)。前々日の予報では天候は雨でしたが、願いが通じたのか当日は晴れときどき曇りへとかわりました。梅雨時期の天候の判断は本当に難しいものがあります。週の半ばまで雨という予報でも週の後半には晴れへとかわることもよくあるため釣行の準備をしておくのが得策だといえます。

2018年の釣果から判断して釣れる可能性が高いのはイサギ、可能性があるのはスマガツオ(ソマ・ヒラソウダ)・サバ・マルアジ・マダイ・メイチダイ・グレ、釣れたらうれしい魚としてヤイトガツオ(スマ)あたりでしょうか。このうちイサギは2号のハリスでも十分に取れますが、スマガツオの45㌢オーバーだと3号だと心許なくなります。

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そこで、今回は4号のハリスをメインに使用したウキカゴ釣りを行なおうと考えました。ウキカゴ釣りとはいえvol.2で使用したタックルのハリスを4号2ヒロにかえるだけです(前回はシマアジ狙いとあってハリスは短くしましたが、今回は大潮後の中潮であるうえに沖合とあって速い潮流が想定されることから長めとしました)。

高井丸での1日の流れ

高井丸の1日の釣りの流れは以下の通りです。

①釣行日を決めたら電話で予約をします。その際、自身の名前と釣行する人数を伝えます。また、釣れている魚を確認しておきましょう。
②前日に連絡をして出船の可否を確認します。
③当日は駐車場(写真の場所か、写真にある水門の中)に車をとめます。用意を済ませた道具を持って門をくぐり、船のところまで行って船長がくるのを待ちます。

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駐車場です。
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駐車場の向かいにある水門の先が乗船場(こちらにも駐車可能)です。

④船頭がきたら挨拶をして指示に従って下さい。
⑤釣りを思う存分楽しんで下さい。
⑥帰りに料金を支払います。

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船にはイケスがついています。
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玉網も用意されています。
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釣った魚の血抜きなどで利用できるバケツなども用意されています。

ファーストヒットはなぜかマルソウダ!?

早朝、私が乗船する伝馬船を含めた3隻で出船。やがて沖合に着くと、ウキカゴ釣りをする私が地方寄り、その沖に天秤ズボ釣りをされる方、最も沖にダンゴ釣りをされる方という順に親船から切り離されました。

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このように親船に曳航されてポイントへ向かいます。

1投め、4ヒロのウキ下で狙うとさっそくウキが沈みました。リールを巻くと、間もなくチャリコが姿を見せました。もちろん、コイツはリリースです。

その後、3投連続でチャリコが続いたことからウキ下を3ヒロほどまで浅くしてみます。しかし、それだと餌が残ります。潮が動いていないのも影響しているのでしょう。

それならと、沖に見える潮目を狙って少し遠投してみます。すると、すぐに反応がでました。こちらへ向かってきたり、沖へ行ったりと縦横無尽に走ることからカツオ系に違いありません。「スマガツオかな?」と思って慎重に寄せたところ、海面に姿を見せたのは目当てのスマガツオではなくて食味の点で劣るメジカガツオ(マルソウダ)です…。釣れているという情報がなかったのにどうして? 「スマガツオが嫌がらせをしているのでは?」と疑心暗鬼になりますが、アレコレといっても仕方ありません。

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ファーストヒットはなぜかメジカガツオでした…。

どうもポイントが合っていないようなので高井船頭が見回りにきてくれたタイミングで移動をお願いし、他の2隻が釣っているところよりも大きく離れた印南方面へ連れていってもらいました。

おいしいスマガツオが連発!!

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こちらのポイントは潮がかなり速く、わずかな時間しか仕掛けを流すことができません。そこで、足もとから流すという伝馬船の釣りにおけるセオリーではなく、できるだけ長く流せるように潮かみへフルキャストする作戦に切りかえます。

2投めにさっそく答が出ます。さっきのメジカガツオとは比較にならないぐらいいい引きを見せる魚がヒット!! これぐらいの引きであれば4号のハリスが切れる心配はないため、竿のしなりを生かして寄せてきます。間もなく無事にランディングしたのは目測で45㌢はあるスマガツオです。とりあえず1匹釣れてひと安心です(爆風に加えて船が大きく揺れることから自撮りができませんでした。すみません)。

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本命の1つ、食味抜群のスマガツオです。

メジカガツオかスマガツオかどうかはエラの上方にある黒点の形状で判断できます。先ほど釣れたメジカガツオは背中の黒い部分と繋がっているのに対し、今釣れたスマガツオは離れています。また、体型でも判断できます。メジカガツオがスラリとしているのに対し、スマガツオは丸々としています。

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その方法にて判断したスマガツオをサバ折りにしてから血抜きをします。その間に仕掛けを投入し、なじむまでに急いで内臓とエラを出します(このとき内臓とエラは海に捨てないようにして下さい。サメが寄って釣りにならない可能性があるからです)。そうして下処理をしてから潮氷を作ったクーラーボックスへ入れるのがスマガツオをおいしく食べるための保存方法となります。

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ソウダガツオが釣れているときは潮氷(氷を入れた海水)が必須です。

そうこうしている間にも同じようなサイズのスマガツオが4匹ヒット。また、スマガツオと同じタナで30㌢のイサギもヒットしました。「さあ、さらなる釣果を!!」と気合を入れましたが、その後は風が勢いを増したことで船が大きく揺れ始めたので納竿することにしました。

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食味抜群のスマガツオがこれだけ釣れればよしでしょう。

釣れる可能性が最も高いと考えていたイサギの反応はわるかったですが、かわりにスマガツオが反応してくれたのでよかったです。ダンゴ釣りの方の釣果は確認できませんでしたが、天秤ズボ釣りの方はイサギをたくさん釣ったそうです(スマガツオは釣れなかったようです)。イサギは天秤ズボ、スマガツオはウキカゴという具合に釣果がはっきりとわかれたのは興味深いですね。天秤ズボは船の下がメインポイントとなるのに対し、ウキカゴは少し沖に見られる潮目も探れるという釣り方の違いがそのような結果として表われたのでしょうか? みなさんがウキカゴでチャレンジされるときには、足もとがダメなら少し沖を探るという具合に魚が食うポイントを探ってみて下さい。

なお、持ち帰ったスマガツオは刺し身とタタキ、竜田揚げにしていただきました。中でもおいしかったのがタタキです。本ガツオがかすむほど乗っていた脂はとてもおいしく、南紀出雲の谷口渡船の船頭が「本カツオよりソマの方がうまいで〜」といっている理由がよくわかりました。

2度めの釣行では高級魚、メイチダイをキャッチ!!

時間が取れたことから7月15日(月)にも高井丸に行きました。

今回のターゲットは前回釣れなかったメイチダイです。メイチダイは底付近におり、餌を求めてあまり浮上することがない魚です。そのため底に仕掛けを這わせるイメージで釣るのが有効です(水深が18~20㍍ほどなのでウキ下は10ヒロ前後を基準とします)。

底付近を狙っていると何度かウキが沈むものの、上がってくるのは25㌢級のカワハギばかりです。それでも5匹めのカワハギを追加した直後、今までとは違う明確なアタリがでました。突っ込みをいなしながら浮かせると、30㌢のメイチダイが姿を現わしました。

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うれしいメイチダイをゲットです!!

メイチダイは群れで行動することがあまりなく、狙って釣るのは難しい魚です。それを狙って釣れたことから印南のこの一帯のポテンシャルの高さを再認識することができました。

その後、30㌢までのイサギを少し追加したところで同船していた弟が船酔いで再起不能になったので早上がりとしました。

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おいしい魚がいろいろと釣れるのが伝馬船での釣りの魅力です。

このように狙うタナをかえるだけで釣れる魚種がかわるのも伝馬船での釣りの魅力です。今夏は伝馬船にフィーチャーし、高井丸以外にもチャレンジして報告したいと思います。

ちなみに、たいていの伝馬船では人数が多くなるほど1人あたりの料金が安くなります。複数人で行かれるとお得ですが、1人でも十分に楽しめるので気兼ねなく釣行してみて下さい。

伝馬船を利用するときの注意点

伝馬船(カセ)に乗る際は、酔いやすさにかかわらず酔い止め薬を必ず持参しましょう。私は車では酔いませんが、船にはめっぽう弱いため伝馬船で釣るときには出船の30分前に酔い止め薬を服用します。これによって船が大きく揺れた1度めの釣行でも酔わずに釣ることができました。

服用に際して重要なのは出船の30分前に飲むことです。その時間が遅れると、酔う可能性が高まります。実際、出船の15分前に飲んだ弟は途中から釣りになりませんでした。

みなさんも楽しい時間を棒に振ることのないように、酔い止め薬の早めの服用を心がけて下さい。

それでは、Bon congé!!(よい休日を!!)

釣行メモ

高井丸
HP http://www.andalpha.com/takaimaru/
電話番号 090-3031-6331
住所 和歌山県日高郡印南町西ノ地311-1
料金(伝馬船1隻あたり) 1名の場合7,000円、2名の場合8,000円、3名の場合12,000円
アクセス 阪和道・印南ICをおりて田辺・御坊方面へ右折して直進。印南港交差点を田辺方面へ左折してR42を約3分進むと右手に乗船場がある。

【黒野忠則プロフィール】

食べておいしい魚を求めて、波止や磯のカゴ釣りをはじめ、フカセ釣り、エギング、チョイ投げ、ヌカ切りなど、さまざまなジャンルの釣りを行なうマルチアングラー。年間20回程度の限られた釣行回数の中でも、あらゆるデータを駆使したスタイルを実践して安定した釣果を上げている。釣り歴は20年。AURAフィールドアドバイザー。