【気軽に狙えるアマゴ・ヤマメ】渓流・テンカラ入門ガイダンス

テンカラガイダンス1

水温が上昇するにしたがって活発化する川虫の羽化(ハッチ)が見られると、渓流のテンカラがおもしろくなる。シンプルな道具立てで気軽にチャレンジできるシステムだけに、今シーズンはそのおもしろさに触れて渓流釣りの奥深い魅力を楽しんでいただきたい

(文:石原 清)

テンカラという言葉を聞いて、難しそうだとか、餌釣りで十分釣れるのに今さらテンカラなんてヤル気は起こらんという食わず嫌い派と、おもしろそうだから機会があればチャレンジしたいという2通りのタイプの人があろう。この論稿は特に後者に対して「求めよ、さらば与えられん」と勇気づける一助になれば筆者としては望外の喜びである

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テンカラ釣りの魅力

テンカラガイダンス8

餌をつける必要がないぶん手返しよく狙えるのがテンカラの利点。それを生かして手際よくポイントをたたいていく。

テンカラは毛バリを使ってイワナやアマゴ・ヤマメを釣る技法である。元は職漁師による秘伝の釣りだったが、故・山本素石氏(初代ノータリンクラブ会長)がその著作を通じて一般の渓流釣り師に流布した経緯がある。今やアメリカをはじめ、イタリアその他の諸外国においても徐々に愛好者が増えつつある。これもネット社会の進化の賜物であろう。

毛バリを使う他の釣技法としてイギリス発祥のフライフィッシングがあるが、テンカラが大きく異なるのはリールを使わないことである。すなわちテンカラで必要なのは竿、ライン、毛バリのみ。オモリや目印は不要である。Simple is best!! それがテンカラの真髄である。

餌釣りは餌がなくなると釣りを諦めねばならない。川虫を取るにしても時間が必要となる。よしんば苦労して川虫を取ってもときすでに遅しで魚の食いが止まっていたのでは努力が報われない。その点、餌の心配がないテンカラはタイムロスがない。

また、釣った魚をはずした後の過程において餌釣りは餌をつける必要があるが、テンカラは即キャストできる。そのぶん手返しが早いわけで、実質的に釣る時間が増えるから釣果向上が期待できる。

さらに、テンカラは装備品が少ないのがいい。仕掛けや予備の毛バリなどの必要なものはベストに収納できるから身軽である。

そして、個人的に「餌なしで釣るのがカッコいい!!」と思っている。「餌釣りは真面目過ぎて遊びの要素が少ない」と素石氏は指摘したが、それは筆者も同感である。餌の作りもので魚を釣るのは遊び心がより刺激される。

職漁師は別として、魚を釣ることを生業としない釣り師はいかに多くの魚を釣るかよりも、いかにおもしろく魚を釣るかという釣る過程を重視するのが、天然の魚が少なくなった現代の渓流事情においては大事なことと考える。素石氏がいった「少なく釣って多く楽しむ」(Catch few fish but have much fun!!)に最も相応しい技法がテンカラだと思う。

テンカラは慣れるにしたがって魚が毛バリに反応する頻度が高くなるが、思うように釣果に繋がらない。合わせが難しいからだ。魚が水面から身を乗り出すと興奮して焦り、往々にして合わせ損ねてしまう。だが、水面で食わせるだけに釣れなくてもフィッシュ・ウオッチングが楽しめる。それが素晴らしい!! 餌釣りでは決して味わえないおもしろさである。

テンカラ入門の手引き

シーズン

寒い日が多く、水温が低い解禁当初は、餌となる虫の動きが不活発であるうえに魚の活性がイマイチ高まらないことからテンカラは適さない。ただ、ポカポカ陽気の日だと10時過ぎごろからしだいに魚の活性が高まり、毛バリに反応することもある。また、南紀や四国の川は他の地域と比べて魚の活性の上がりが早いため解禁当初から毛バリに反応が見られる。

一般的にはサクラが咲き終わり、フジの花が咲くころがシーズンインといわれる。そして、テンカラは盛夏にも渓魚を狙える。そのころには夕まづめが狙い目となる。

タックル考察

テンカラガイダンス4

餌釣り用の渓流竿でも可能だが、釣りやすさでは専用竿が勝っている。

竿はテンカラ専用モデルが各メーカーから出ている。初心者は合わせが遅れ気味(魚が毛バリに出たことに気づくのが遅れがち)であるためやや硬調子(7:3)がよい。慣れるにしたがい、おもしろさを重視して少しやわらかい調子(6:4)を選ぶのもよいだろう。

長さは川の規模によって使いわける。標準は3.6㍍。大きい川だと3.9㍍、場所によっては4㍍を越える長竿が有用になる。逆に、枝谷では3.2㍍などの短い竿ほど使い勝手がよい。

そして、餌釣りと比べて振る回数が多いため持ち重りのしない軽い竿がよい。

なお、テンカラ専用竿を使うのが一般的だが、餌釣りの竿でも代用できる。

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ラインはレベルラインとテーパーラインの2通りがある。そのうちのレベルラインは単糸である。それを使うテンカラ師のほとんどがフロロカーボンの3号、または4号を必要な長さに切って使っている。糸を撚る手間が不要であり、なおかつ経済的というメリットがある。

素材に関してはフロロカーボンがベスト。ナイロンは軽くて扱いがすこぶる難しいが、それよりも比重が重いフロロカーボンであれば比較的簡単に毛バリを飛ばすことができる。

テーパーラインは毛バリをより遠くに飛ばすために何本かの糸をヨリ合わせたものだ。具体的な撚り方は図を参照してほしい。

ラインが重いと飛ぶには飛ぶが、そのぶん戻りも大きくなる。逆にラインが軽いと飛ばしにくいが、戻りは小さい。その兼ね合いを考慮して作製したい。

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ハリスは人によって異なるが、おおむね0.8~1.5号が標準。筆者は1.2号を使う。餌釣りに比べて太いのは、テンカラでは魚を釣ったときのショックが大きくてハリスが切れやすいからである。

毛バリは多種多様の市販品があるが、1人前のテンカラ師を志すなら自製することをすすめる。器用な人はハリを固定するバイスを使わずに巻くが、不器用な筆者はそれが欠かせない。バイスは1セット数千円ほどでフライショップで購入できる。

筆者は不細工な毛バリしか巻けないが、それでも釣果を得た実績がある。毛バリは精巧なほどよく釣れると思われがちだが、実際には美しさはそれほど重要ではない。したがって〝毛バリ信仰〟の気持ちは捨てるべきだ。極論をいえば、魚の活性がよければどんな毛バリでも釣れるものである。

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自作の毛バリで釣るのもテンカラの楽しさの1つ。美しさにこだわらず、まずは気軽に作っていただきたい。

玉網は渓流釣り専用品がよい。柄と網を分解できるものなど多くの市販品がある。足場がよい場合なら不要だが、立ち込む場合は慎重を期して持参するのが無難である。

ウェーダーは餌釣りと同じで必須アイテム。解禁当初の水温が低いシーズンはネオプレーン性の厚手のもの、盛夏は薄手の素材といった具合にシーズンごとに使いわけたい。夏場はアユタイツに渓流タビという組み合わせでもよい。