【エキスパート対談 新名啓一郎×高井主馬】釣りを末長く楽しんでいくために…《前編》 | SWマガジンweb | 海のルアーマンのための総合情報メディア

【エキスパート対談  新名啓一郎×高井主馬】釣りを末長く楽しんでいくために…《前編》

新名啓一郎×高井主馬 対談1

ロックショアビッグゲームやSUPフィッシングという新たなSWゲームフィッシングの世界を切り拓く新名啓一郎さんと、さまざまな釣りを愛するライギョ釣り人・高井主馬さん。ひょんなことから知り合った2人のアングラーはお互いの釣りや魚に対する価値観が似ているということで意気投合。今回は「釣りを末長く楽しんでいく」ということをテーマに、お2人の価値観やスタンス、考え方についていろいろと伺いました

インタビュアー:大塚孝昭


新名啓一郎・プロフィール

新名啓一郎×高井主馬 対談2

ロックショアにおけるベイトキャスティングスタイルをはじめ、SUPフィッシングなどネイチャリングスポーツとしての釣りを追求。持ち前の好奇心と行動力で独自の世界観を広げ、それを昇華して新たな釣りの楽しさを発信し続けている。海や川のアルピニストたちへ向けた各種ジグ・プラグなどを製作するメーカー、UZUの代表。


高井主馬・プロフィール

新名啓一郎×高井主馬 対談3

淡水、海水を問わず、さまざまな釣りを愛するライギョ釣り人。もっと力を抜いて楽しむべきだと「FUN & RELAX」を提唱し、常に楽しくワクワクする釣りを心がけている。独創性溢れるフロッグやライギョロッドをリリースするメーカー、ラッティーツイスター代表


「末長く」楽しむ釣りについて

大塚 今回はたまたまお2人が大阪にこられるタイミングで対談が実現したわけですが、それぞれお住まいは鹿児島と三重でかなり離れています。それがどのようなきっかけで交流を持たれるようになったのですか?

高井 僕の嫁の祖母が鹿児島に住んでいて現地に遊びに行くことになったんですよ。で、知人に「鹿児島へ遊びに行くので釣りをしたいんだけど…」って相談したら、「現地に新名さんというおもしろい人がいるから行ってみなよ」といわれて。で、実際に行って話をしたら、魚の扱い方に対する考え方などが僕とよく似ていて意気投合しました。

新名 何年ぐらいになりますかね?

高井 8年くらい前だと思いますが、その間に徐々に親交を深めて現在に至るって感じです。

大塚 一緒に釣りも行ったりするんですか? 

高井 鹿児島へ行ったとき、たまに海釣りに連れて行ってもらったり、いろいろな魚を捜しに行ったりしますよ。

大塚 新名さんもライギョ釣りをされるんですか? 

新名 そうですね。以前、福岡に住んでいたときにかじった程度ですが…。ただ、それと並行するようにフィールドが荒廃していき、正直行きたくなくなった時期もありましたね。その後、鹿児島に戻って磯を開拓するようになるんですが、こちらも情報が氾濫して人が集まり、ポイントが潰れたりして「ライギョのときと一緒だな。高井さんもこんな気持ちになったのかな…」と考えたりしましたね。

高井 みんながSNSで情報を発信するようになってそれがより加速して「つまらない」といってライギョ釣りをやめちゃう人も出てきましたよね。そんな中、僕自身はフィールドを開拓して回っているんですが全然ないんですよ。やはりライギョの個体数が少ないところはそっとしておく必要があるかなと感じています。
それと、僕はマス釣りも楽しむのですが、渓流へアマゴを捜しに行ってもそうですね。あえて放流のない場所をチェックする時もあるのですが、昔の子孫がちょこっと残っている程度で。おそらくこれだけしかいないんだろうなと。釣りを楽しみたい気持ちはみんな一緒だと思いますが、それを「今」ではなく「末長く」という風にとらえると、そっとしておこうと。釣りを末永く楽しみ続けるのにはどうしていったらいいんだろうかということを常に考えています。

新名啓一郎×高井主馬 対談4
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大塚 そこはやはり個々でしっかりと考える必要がありますよね。

高井 同じ10匹でも1個所で釣るのと10個所を回って各フィールド1匹ずつ釣っての計10匹とでは釣り場に与えるダメージがまったく違いますからね。それを理解しておくことが大切だと思います。よく「去年まではデカいのが釣れたけどね」という話を聞くじゃないですか。それを聞いて僕なんかは「それは死んだんだよ」といういい方をするんですけどね。スレたとかテクニカルな向きにしようとするフシがあるので、あえてそういう酷ないい方をしています。魚の扱いがわるい人がいたから死んでしまったという風に仮定して、アングラー全員が魚と上手につき合っていくということを意識を強く持った方がいいんじゃないかなと思います。

大塚 海の場合は持ち帰って食べることが当然という価値観もありますし、僕も自分が釣った魚を持ち帰って食べると決めたときはおいしくいただきたいという思いが強いですね。

高井 もちろん、僕も海で釣った魚をキープして食べることもありますが、やはり釣った魚は最大限においしく食べてあげないと申しわけないという気持ちがあります。魚をたくさん並べている写真を見ると「こんなに食べられるの?」と感じますし、夏場の磯に横たわった魚の写真なんかは「刺し身で食べられないじゃん」と思ってしまいますね。

大塚 高井さんは海釣りもされるんですか?

高井 あまりやらなくなりましたね。以前は磯ヒラスズキ釣りに没頭していた時期もあったのですが、人がどんどん増えてきて、殺伐とした余裕のない雰囲気が苦手なので今は足が遠のいていますね。ポイントに向かっているところへ後からきた人に追い抜かれて「あそこのポイントで竿を出してもいいですか?」と聞かれたことがあるんですよ。でも、狙うポイントが1つしかないのに、後から走ってきた人に「お先にどうぞ」とはなかなかいえませんよね。「僕があそこを狙いに行くのはわかりますよね?」というのが本音ですが、トラブルになるのも嫌だし、いい方が難しい。結局、そのときは「せっかくここまできたんだから一緒に行きましょうよ」ということになりました。

新名 「一緒に行って僕の釣りを見ててもいいですよ」というのはどうですか?(笑)。 

高井 もちろんマナーのよい方もたくさんいらっしゃいますが、海は特に分母と分子の関係で考えるとそのあたりが難しいですね。ただ、磯のヒラスズキはやっていて楽しいし、サラシを狙っていると何投でもできるという感じで気持ちのいいサイクルに入っていきますよね。

新名 そうですね。今度はこんな流し方をしてみようといった具合に。

大塚 釣りのマナーに関しては他にどのようなことを問題視されていますか?

高井 淡水の釣りでいうとやはり駐車場所ですね。後はゴミの放置や地元の方とのコミュニケーション、ポイントのバッティングといったところですね。よく雑誌などにも「自分のゴミは持ち帰ろう」とか「人と会ったら挨拶をしよう」と書かれていますが、よくよく考えると、それって人として当たり前のことですよね。「他人の迷惑になる場所に車を停めない」なんかも子どもに教えるレベルのことだと思うんですよ。

新名 「民家の回りで騒がない」とかも含めて一般常識の範疇ですよね。

高井 そう、釣り場に行くと旅行気分じゃないけど、気持ちが高揚してマナーを守れなくなるようなフシもありますね。

大塚 釣りのマナーに関するさまざまな問題に対して一概に「これが正しい」といい切るのは難しいことですよね。そこで釣りのジャンルを問わずに何か基準になるものがあればいいなと思うのですが…。

高井 やはり先ほどもいったように、みんなが「これからもずっと釣りを楽しんでいくために…」ということを念頭に置いてフィールドや魚と接すればといいなと思います。魚を食べることに関しても最高においしくいただこうと思えば、キープする量や扱い方もかわってきます。そういうことをスマートにいい続けることで「この人たちのスタイルはいいなぁ」と思ってくれる人たちが出てきてくれたらいいんですけどね。

新名啓一郎×高井主馬 対談5
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新名 正直、自分たちも昔は魚を雑に扱っていました。それで嫌な思いをして勉強してきたので同じことを繰り返さないでほしいという感じですね。 

高井 そうですね。自分たちが失敗してきたことで「そんなことをしたら結局あとで自分に降りかかってくるよ」ということを伝えていきたいですね。

新名 釣った魚をたくさん並べた写真をウェブにアップして、それを見た人が「これでいいんだ」と受け取ってしまい、それが正義という価値観が定着することは非常に怖いですね。 

高井 そこなんですよ。僕らが「それは正義ではない」ということをいい続けていかないと1枚のインパクトのある写真に負けてしまいますから。悲しいかなパンチ力は写真の方が強いですからね(笑)。

新名 今はSNSで「スゴいですね」、「スゴいですね」という風に価値観が拡散していけば太刀打ちできなくなりますから。

高井 実際、その人がスゴいんじゃなくて、魚とそれを育んだフィールドがスゴいということですからね。やはりそこに魚がいるということが大事になってくるわけで…。

新名 特にライギョ釣りはそういった部分と向き合う要素が強いですよね。

高井 いい方はわるいですが、池がまな板のような存在でそこに魚が乗っている。それを自分たちがどう料理するかという感じですね。殺してしまうのか、あるいは少し触らせてもらってから再びまな板に戻すのかっていう…。

新名 こっちの角度の方が格好いいなって向きをかえて置き直したり…(笑)。

高井 そんな感じですね(笑)。

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