【エキスパート対談 新名啓一郎×高井主馬】釣りを末長く楽しんでいくために…《後編》 | SWマガジンweb | 海のルアーマンのための総合情報メディア - Part 3

【エキスパート対談 新名啓一郎×高井主馬】釣りを末長く楽しんでいくために…《後編》

釣り・魚・モノづくりに対する価値観

新名啓一郎×高井主馬 対談17

大塚 今回の対談を行なうにあたり、お互いに釣りや魚に対する価値観が似ているとおっしゃっていましたよね。改めてそれはどういった部分だと感じていますか?

高井 やはり魚との向き合い方というか、魚に対してやさしいという部分ですね。それと、もちろん魚に出会いたくて釣りをしているわけですが、釣果主義だけではなくプロセスや目的を大切にするという点です。

新名 そういったところで話が合うんですよ。

高井 大きいのが釣れたら素直にうれしいですし、釣り人だからそれを目差して行くわけですけど、釣れなくても一概に悔しいとは思わないし、そのときに自分が設定した目標が達成できたら十分な満足感が得られますね。僕は超がつくほどの大型がなかなか釣れなくて、釣り切る前に自分の目標が終わってしまうんですよね。以前、新名さんが僕の取材に同行したことがあるんですが、そのときも最初にいい魚が1匹釣れて僕的にはその時点で終了でいいかなと思いました(笑)。

新名 実際にそういってましたもんね(笑)。 

高井 取材なので絵的にもう1匹ぐらい釣った方がいいのはわかっているんですが、この状況ならこれで十分だなと思って勝手に自分で締めくくろうとして…。

新名 でも、僕が見ていてもあれがクライマックスでしたね。

高井 その翌日、「同じことをしてもしょうがないよね」ってことで風景のきれいな別のポイントに行ったら見事にボウズを食らっちゃいました。そのときはインレッドの回りで水の冷たいところを叩いていけば魚が出るのはわかっていましたが、同じ結果になってもねぇ。普通なら「もう1匹デカい魚を!!」ってタイミングを計ってよりそのポイントに執着するのかもしれないけれど、もう結果がわかっているんです。釣れるって。だから、ダメかもしれないけど違う切り口でワクワクしたいんです(笑)。

新名啓一郎×高井主馬 対談18
新名啓一郎×高井主馬 対談19
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新名 そう、少しずつでいいんですよね。

高井 こっちの答えはわかったから次はこれをやってみようっていう感じで。で、答え合わせをしていく中で「この答えがあるんだったらその延長線上にこれもあるんじゃないか!?」っていう別の釣り方をやっていったら自分の中で幅が広がると思うんですよ。それでテクニック的にも引き出しが増えて、タフコンディションのときにもその経験が生きたりしてると思うんですよね。ストロング(鉄板)な釣りばかりしていると、ハズしたときに次の手が出てこないことにもなりかねないですから。僕はダメなときほど「何でだ!!」って感じで燃えますね(笑)。

新名 僕もそうです。ダメなときほど燃えちゃいますねぇ。何でだろう?

高井 人が釣れないという場所には釣りに行きたくなっちゃいますから(笑)。

新名 逆に釣れるって聞いたら行きたくなくなるんですよね(笑)。

高井 そうそう、「今釣れるよ」って聞いたらもう行かなくていいと思うんですよ。

新名 2人とも天邪鬼なんですよ。

新名啓一郎×高井主馬 対談20
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大塚 でも、スタンスは一貫していて自身の理想とするところや楽しさを追い求めているんだなと感じますよ。釣りを存分に楽しんでいく上ではやはり先ほど新名さんがおっしゃっていた「少しずつ」というのが大事だと思います。

新名 ワンシーズンで釣りが飛躍的に上達するということもマレだし、本当にちょっとずつしかうまくなっていかないですよね。

高井 そうですね。同じ条件で釣りができることもないし、たまたまいい年に当たって釣りが上達したように思えても、次の年はまったく釣れなくなったりしますから。でも、そのときが逆に勝負だったりして、そこで踏ん張れば自分だけのものが確立できるかもしれないですから。まあ、自分は楽しんでやっていますが、それが正解かどうかというとわからないですからね。

新名 僕もそうです。

高井 商売にしても他のルアーの見せ方で「それはエレガントじゃないなぁ」っていったりしたこともありますが、儲けようと思えばおそらく僕のいうことの逆をやればいいかもしれないですね(笑)。僕の場合、ルアー作りもペースがどうしてもゆっくりになっちゃって、思いついたら進めるって感じなので「がんばってるか?」って聞かれると「もう少しがんばれるかもしれない」と思いますけど(笑)。

新名 (笑)。でも、追い込み過ぎると嫌になるんですよね。

高井 そう、嫌になるしルアーの表情とかにももそれが出るんですよ。そうやって嫌々作ったものを人に薦めることはできないですからね。

新名 確かにそこもありますね。自分自身がすごく気に入って「これはいいのができたよ」というものじゃないと人前に出したくないですね。それでも思い込みが強くなってるから気に入ったものを人前に出すときでも反応が気になって「こういうのを作ってみたんだけど…」って控えめになりますけどね。

高井 僕は完成したものを「これ格好いいでしょ!!」って友だちに見せたりするから、嫁に「自分で作ったものをよくそれだけ自慢できるね」って怒られます(笑)。まあ、それでも素直に薦められるものを作っていきたいですけどね。

新名啓一郎×高井主馬 対談21
新名啓一郎×高井主馬 対談22
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新名 そうじゃないと魚とアングラーをないがしろにしていることになりますから。釣り具屋さんに聞いたことがあるんですが、特にショアアングラーのみなさんはルアーを1つずつ吟味して最終的に決めた1個を抱きしめるようにレジへ持ってくるっていってました。これはすごいありがたいことだと思いますね。自分もかつてそうでしたから。

高井 目の位置が0.5㍉でも違うと本当に表情がかわりますからね。

大塚 なるほど。そこまで考えているのなら、僕らもルアーをしっかりと吟味することが礼儀だと改めて思いますし、逆に厳しい目で見ることにより釣り具店でルアーを買う楽しみも広がるように思えてきました。
今回は楽しく貴重なお話をありがとうございました。お2人の今後の動向や釣りの楽しみ方はSWマガジンwebでも追いかけて行きたいと思いますし、前人未到のチャレンジにも期待しています。

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