【UNCHAIN SKILL act.1】スローモデル餌木の実力を徹底検証《前編》
まとめ
以上のように、沈下速度の遅い餌木をシャロー専用モデルと捉えるのではなく、スローモデルと捉えて工夫することでバリエーションに富んだ緻密な釣りが実現できる。これまでのエギングシーンではダートや跳ね上げなど、アピールの部分にのみ注目されることが多かった。アオリイカのみならずすべての対象魚にいえることだが、目先のアピールをかえることでスレが進行したターゲットの捕食スイッチを入れる。これは非常に効果的だが、そのアクションに対してもやがてスレが進行するのは自明の理。結局、活性が高くてイージーに釣れるアオリイカを捜してフィールドを右往左往するしかないので資質の向上には繋がりにくい。また、エギング人口の増加によりラン&ガンさえままならないのも現実だ。パラダイスを求めて離島などに遠征しても以前のように甘くはない。このように堂々巡りの閉塞した状況を打破するアプローチの1つが今回紹介した沈下速度の遅い餌木を用いた緻密なアプローチだと考えている。
スローモデルの餌木について「沈むのが遅いのでストレスが溜まる」という意見もよく聞く。確かにキャストして最初のフォールでは任意のレンジへ送り込むのに手間を感じるが、以降はそれほどストレスも感じないし、局面を打開する一手として取り込むだけでも大きく進歩する。潮流の速い場所では使いにくいが、サイドのポケットなど、流れが緩んで餌木が沈む場所もあり、そのようなところほどイカが溜まっていることも少なくないし、そこを起点に任意のレンジまで沈めて流し込むことも可能だ。また、その多くが感覚的な要素を持って成立するエギングにおいて、より難易度の高い沈下速度の遅い餌木を使うことによってスキルアップを図れることも多い。
最近はスローモデルの規格統一化もあり沈下速度も同じ設定になりつつあるが、アクションや安定性、レスポンス、沈下角度、姿勢などの設定が異なる。沈下姿勢や角度が異なるのでフォール時のラインテンションの抜けにも差異があり、実際のフィールドでは沈下速度も異なる。結果として差別化を図ることが可能だ。
余談になるが10年ほど前にとある釣り場でローカルエギンガーに出会った。彼はキャリア2カ月ながら絶好調の釣り場に連日通うことで約300パイの釣果を得ており、それなりの経験を積んでおられた。そして、彼は「結局100円の餌木が最も釣れる」といっていた。稚拙さはあるもののフィールドから得られた答えには強烈なリアリティーがあった。
その釣り場は沖に藻場があり、干潮時には水面まで藻が届いてしまうようなシャローで根掛かり地獄のポイントだった。当時はいわゆるシャロータイプのラインナップが少なく一般的ではなかったこともあり、ほぼ全員がノーマル餌木に強いテンションをかけて横移動させるか、玉砕覚悟で藻場をタイトに攻めていた。結果として高性能な餌木よりもレスポンスのわるい安価な餌木の方が挙動が安定して釣果に結びついていたのだ。私が隣で解説しながら実演し、リアルな正解はシャロータイプであることを伝えると彼は驚いていた。しかし、最近では私よりもよく釣るのでシャロータイプの餌木の有効性について教えたことを少し後悔している(笑)。
(《後編》に続きます)
【安田栄治・プロフィール】
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