スキルアップを実現する名手のスタンス《PART3》
失敗の数は成功の大きさに比例する。各ジャンルのエキスパートが経験してきた飛躍へと至る過程には多くのヒントが…
[spacer]オフショアジギング
片道500㌔圏内への日帰り
釣行でウデを磨き続ける
永井誠一
決めつけや思い込みにとらわれての失敗はなかなか思い当たらないが、タックルのセッティングやラインの結び方、魚とのやり取りでの失敗なら山ほどあり、それは現在進行形で今でも釣行のたびに起こっている。魚釣りにおいてはトライ&エラーということが日常茶飯事であり、私自身は「なぜ? どうしたら?」と常々改善策を考えて方向修正をし、その中で新たな発見をしたり、技術のレベルアップを図ることが釣りの楽しみ方だと思っている。
以前にメーカーさんから従来の同号数よりも30㌫ほど強いというラインを受け取り、さっそく試そうとPRノットで締めつけると結束部分が折れてしまうということがあった。また、同様に最高の強度というスプリットリングを試したところ、ルアーのアイに通すと開いたまま元に戻らない。チューブを介してリーダーをスリーブ止めし、それで大型の魚を掛けたのだが、ファイト中にリーダーがスッポ抜けて終了(笑)。そうした些細?な失敗談なら数えきれないほどあるが、ここでは私の釣り人生における、失敗から得た学びについて話したい。
新天地への遠征が日常に…
私の中では30年ほど前が現代ジギングの創成期だと認識している。当時は明石や若狭へ取りつかれたように釣行し、三重のシイラゲームにも通った。ただ、仕事の関係で釣行するのは日曜・祭日に限定していた。
自宅のある京都からだと、それらのエリアなら片道130㌔ほどなので日帰りでの釣行が十分可能だ。いずれの海域でも現在ではルアー船が多くなり、遊漁のスタイルのひとつとして定着している。これには、当時からこまめに通った仲間たちの功績も大きいと思っている。
ただ、10年ほど前からは休日ともなれば有名なポイントは船団でごった返すようになり、技術もタックルも昔とは比べものにならないぐらい進化した。そのせいで「俺の爆釣日」が少なくなってきたのである。近畿圏でジギングの人気が高まったのは喜ぶべきことであり、盛り上げようと思ってやってきたことを失敗というつもりはないが、いちサンデーアングラーの立場で見るとこの状況は致命的?である。
そんな状況を打開するには新天地を見つけるしかない。もちろん、日帰り釣行が可能な範囲でだ。そこで、片道500㌔なら移動が7時間(往復14時間)、実釣8時間でどうにか24時間以内におさまると考えて捜すと、各地に好釣り場が結構あった。
[spacer]仲間と楽しい時間を共有
能登半島の輪島沖は意外と近くて350㌔ほど。出雲ならほぼすべて高速道路で350㌔。下関は500㌔。同じ1日でも、より夢のある釣り場で竿を出すことができる。さすがに関門海峡を渡って九州まで釣行すると、24時間以内に京都へ戻ることは無理だと何度も走るうちにわかってきた(笑)。
一般のアングラーにとっては日帰りで釣行する距離ではないらしいが、仲間内ではこれが普通になっていて、「今回は出雲ですか。近いですね」と真顔でいうメンバーもいる。少し遠出をすれば新天地は山ほどあるし、日帰りなら家族に迷惑をかけたり仕事を休むこともない。私にとってはまさに一石二鳥の釣行スタイルとなった。平成21年3月にスタートした土・日曜日の高速料金上限1000円の制度の恩恵を120㌫受けたのも懐かしい(国費で相当釣りに行かせてもらったわけだ)。もう一度この制度を導入してくれないものかと真剣に願っている。
そして、仲間たちは釣りの技術は別としても、「安全運転」、「翌日はしっかりと仕事をする」を基本としていて気配りができる。そうしたことを理解したうえで入門してくる若手も多く、最近は年寄りは運転をさせてもらえない(笑)。リヤシートで寝ていればいいだけとラクをさせてもらっている。昔は自分が釣ることがすべてだったが、今はそんな仲間たちと楽しく釣りをする時間を共有できることが貴重なのだと気がついた。仲間がトロフィー魚を釣ったことを、みんなで喜べるのは素晴らしいことだ。
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