スキルアップを実現する名手のスタンス《PART3》 | SWマガジンweb | 海のルアーマンのための総合情報メディア - Part 2

スキルアップを実現する名手のスタンス《PART3》

エギング

セオリーに対して自分なりの
疑問を持つことで壁を越えられる

増田将輝

「イカの大きさに合わせて餌木のサイズをかえる」というのは、エギングを始めた当初からよく耳にした言葉です。体の小さな秋イカは小さい餌を捕食し、大型の春イカはその体に見合った大きな餌を取る、といった考え方が元になっているわけですが、実際にそれぞれのシーズンのイカの大きさを見れば納得がいくものでした。初心者だったボクはそれを鵜呑みにして秋は2.5~3号、春は3.5~4号の餌木を使用するという、正統派?エギンガーになっていました。

ところが、シーズン2年めの秋のこと。当時すでにエギングが大人気となっていて、週末ともなるとどこもかしこも釣り人だらけのためにイカはスレまくり、たまに釣れるのは超小型といった状況でした。それに嫌気が差したボクは、何となく3.5号の餌木をつけてキャストの練習を始めました。ぎこちないロッドワークでハイピッチのでき損ないのようなシャクリを繰り返していると、いきなりひったくるようなアタリがあって初秋にしては大型といえる500㌘ほどのアオリイカがヒット。これに気をよくして練習ではなく本気でシャクると、100~200㌘ほどの食べごろサイズがポロポロと連続で釣れました。

さらに、調子に乗って4号の餌木をキャストしたところやはりポロポロと釣れ、2.5号に乗ってくるものよりもひと回り以上サイズがいいという結果が得られました。

ひとしきり釣った後で冷静に状況を分析し、混雑したポイントのため手前にはスレたイカしかいないという状況の中、3.5号の飛距離とアピール力が奏功し、沖にいるコンディションのよい良型の目を引くことができたのではないか? と結論づけました。

一説によるとアオリイカは1日に2割程度も体重が増加する可能性があり、初秋であってもやや大きな個体も存在します。そして、そうした大型ほど水深のある沖のブレイクなどにつく傾向があるため、飛距離の面で優位性のある3.5号や4号の餌木に軍配が上がったというわけです。加えて、生存競争の激しい時期なので、より効率よく餌を取ろうとして大きな餌木を抱きにきたのでは? と、そのときは単純に考えていました。

エギング ステップアップ1

フィールドで抱く疑問こそがステップアップのきっかけになると感じています。

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デカイカとの出会い

その後、年が明けて日本海にも春がくるころ、後のエギング人生を大きく左右するできごとがありました。そのころは自己記録といっても800㌘程度で、それよりもはるかに大きい春イカの存在すら知りませんでした。ところが、その年に入手した「アオリナビKANSAI」によると、故郷でもある但馬エリアで1㌔、2㌔といった鮮魚店で見るイカの何倍もある夢のようなサイズが釣れるとのこと。これはもう行くしかない‼ってことでとりあえずゴールデンウィークに釣行したものの、まだ時期が早くて水温が低かったらしくスポーニングのための接岸は始まっていませんでした。釣り人もほとんどいなかったことから「これはガセか?」と、それまでの期待は半信半疑に…。

それでも、夢のサイズを諦めきれなかったので2週間後に出直してみると、GWには人影のなかったテトラ帯にはエギンガーと思しき釣り人の姿があり、何より目の前の海中のそこかしこにはそれまでに見たこともないようなサイズのアオリイカが乱舞していて度肝を抜かれました。

目の前でペアリングしているイカはさすがに釣れませんでしたが、沖のブレイクを回遊しつつときおりベイトを捜してシャローに入ってくる気まぐれな個体を偶然にもヒットさせることができ、それをきっかけに毎週のように但馬詣でを繰り返しました。当然、そのときに使用していたのはイカの大きさに合わせた3.5~4号の餌木です。

ターゲットの目線で状況を判断

あるとき、足もとまで追いかけてきた推定1.5㌔のアオリイカが餌木の動きに違和感を覚えたらしく、バイト直前にフリーズ‼ 秋の新子相手なら足もとで餌木をシャクり上げて食わせようと試みるところですが、目の前でそんなサイズがホバリングしていたら平常心を保てる初心者はいません(笑)。案の定、そのイカには逃げられたのですが、このときにイカではなくボクが覚えた違和感が、ベイトと餌木の大きさのミスマッチでした。具体的には、漁港で見かけた小魚のサイズに対して餌木がやや大きかったのです。

ここで改めて、イカの大きさに餌木のサイズを合わせるということに疑問を持ちました。考えてみれば、アオリイカに限らずフィッシュイーターは効率よく餌を取るために、そのときに最も多いベイトを選んでいるはずです。他のものには見向きもせずに偏食することも珍しくありません。つまり、そのとき、その場にいるベイトこそがフィッシュイーターを釣るうえで最も重要な要素だったというわけです。マッチ・ザ・ベイトという言葉にはなじみがなかったボクですが、その内容に運よく気づくことができたのです。

そう思うやいなや車にダッシュし、持参していた2.5号の餌木をつけて再度チャレンジすると、それまでは手を出すことのなかったイカたちが猛然と抱きにきてプチラッシュに突入しました。当時は小型の餌木で親イカを釣るということは特異なスタイルでした。

それから10年余り、紆余曲折を経て餌木のサイズだけでなくフォールスピードなどの重要性もわかってきました。生き物を相手にした遊びだけにまだまだ奥は深く、これからも試行錯誤を楽しみながらエギングライフを送っていきます。

エギング ステップアップ2

「食べやすそうなサイズ」ではなく「食べているサイズ」に餌木を合わせることこそが大事なのだと身をもって実感しました。

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