【UNCHAIN SKILL act.1】スローモデル餌木の実力を徹底検証《前編》
スローモデルのメリット
[spacer]ロングタイム・フォール
ゆっくりと沈むことはシャローで大きな武器となるが、これはストラクチャー回り、ウィードパッチやエッジ、限られたレンジの勝負どころでより長い滞空時間のフォールや漂うようなアプローチを実現できることに繋がる。通常はノーマルで3~3.5秒/㍍、シャローで5.5~6秒/㍍、スーパーシャローで8~10秒/㍍の沈下スピードが一般的だが、エギングのアプローチにおいて唯一のバイトチャンスが単純に2~3倍に増加することは大きなメリット。長い目で見るとその差は歴然だが、激アツのタイミングでチャンスが増大する長所は計り知れない。
また、根掛かりや藻掛かりはラインシステムの組みかえによるタイムロス、経済的損失、環境に与えるダメージ、ひいてはポイントを潰すことにも繋がる。その点、スローモデルなら誰もが攻めあぐねて躊躇するような、ヤエンの独壇場となるスポットを果敢に攻略することができる。さらにはヤエンでも攻められないロングディスタンスのバージンエリアの竿抜けを、エギングの手軽さや機動力を生かして高効率にラン&ガンすることも可能だ。
[spacer]ナチュラル・アプローチ
沈下スピードの速い餌木でも一定のレンジをキープすること、ゆっくりとフォールさせることは可能だが、沈下スピードに応じたラインテンションをかけ続けることが必須となる。これを逆に考えるとスローモデルの場合、同じ沈下スピードならよりテンションを抜いたナチュラルなアプローチが可能ということ。
ひと昔前に縦のシャクリや横のダートでアピールした後、フリーフォールで誘う「フリーフォール釣法」が提案され、今では定番のアプローチとなっている。これはフォール時に風やウネリ、アングラーの不用意な挙動によって生じる餌木の不安定な動きがアオリイカに警戒心を与えることを未然に防ぎ、タイトかつナチュラルなフォールで躊躇することなく餌木を抱かせるための戦術だ。速いフォールに反応がよい場面もあるが、スローフォールや漂うようなステイにしか反応しない場面も少なくない。限られたレンジでしか戦えない場面も含めると、いかに重要かが理解できるだろう。
移動距離の短いタイトなアプローチ
前項では沈下スピードの速い餌木でも相応のテンションをかけ続ければ同一レンジをトレースすることやスローフォールも可能と説明したが、テンションをかけるほど餌木は手前に寄ってくる。つまり、狙いのストラクチャーやバイトポイントからどんどん離れてしまってタイトな攻略ができなくなってしまう。それでも釣れるときは釣れるが、チェイスするほどアオリイカの活性が高くない場合も少なくない。
また、他のフィッシュイーター同様に、大型になるほど効率のよい待ち伏せ型の捕食傾向を示す場合や、産卵期の食性ではなく侵入者を威嚇、排除するための攻撃、人的プレッシャーや青物などの回遊によるセルフディフェンスエリアが構築されているケースなどは、やはり移動距離の短いタイトなアプローチが不可欠となる。ノーマルタイプの餌木でもテンションをかけずにフリーフォールさせればタイトな攻略が可能だが、スローかつ漂うようなアプローチはできないし、ボトムに置いておけるような底質でないと実現が困難である。
春のデカイカシーズンの大本命ポイントとなるホンダワラのジャングルではその性質上、縦に伸びたホンダワラが水面に達すると横にいくしかない。結果として表層はホンダワラがジャングルのように繁茂しているように見えるが、宙層以深はそれなりのスペースがあって十分に攻略できることが多い。そのようなときに本領を発揮するのがスロータイプの餌木を用いた移動距離の少ない漂うようなアプローチだ。縦、横方向への移動スピードの速い餌木では藻掛かりが頻発して釣りが成立しない。
なお、潮位が高い方が水面に繁茂する藻の量が少ないので釣りやすい。そのため、それぞれのスポットでアプローチ可能な潮位の幅を把握しておくといいだろう。
流れを意識した高感度の釣りを実現
「沈下スピードが2~3倍遅い=一定の距離(レンジ)を沈むのに2~3倍時間を要する=一定のレンジまで沈むのに2~3倍流される→結果として流れに対して高感度な釣りが実現できる」というのがスロータイプの餌木の強みだ。アオリイカにかかわらず釣りは潮を釣ることが王道といわれている。そういった意味でも潮の動き始めや強弱・減衰など、イカの活性が上がるタイミングや転機となるシグナル、ピンスポットなどをリアルタイムで把握でき、フレキシブルに適切な対応ができることは何ものにもかえがたい大きなメリットだ。
これは視覚を生かせるデイゲームのみならず、ナイトでも如実に情報を伝えてくれる。沖に出る潮ならシャクッた際に餌木を重く感じるし、手前に寄ってくる当て潮ならテンションが抜けて軽くなる。さらに横方向なら餌木との位置関係にズレが生じて正対できないことで大きな違和感を覚える。流される距離が増えることで情報をより明確に知らせてくれるのだ。感度といえばロッドばかりが注目されることも多いが、ラインテンションが不可欠で釣り方が限定される。餌木やライン、リールなどと合わせてトータルで考慮することが重要となる。
スポンサーリンク
※文章・写真・記事などのコンテンツの無断での転用は一切禁止です(詳細はサイトポリシーをご確認下さい)。