ルアーは何を模しているのか? 〜ルアーの持ち味と可能性を考察〜|知っていたからって釣れるわけじゃないけれど…《アーカイブ from 2014》 | SWマガジンweb | 海のルアーマンのための総合情報メディア - Part 2

ルアーは何を模しているのか? 〜ルアーの持ち味と可能性を考察〜|知っていたからって釣れるわけじゃないけれど…《アーカイブ from 2014》

ルアーの種類と特性(その2)

バスのルアーではもっと訳の分からないものがある。それはスピナーベイトである。スピナーベイトは二又に分かれた針金のそれぞれの先に金属のブレードとスカートと呼ばれるヒラヒラしたゴムやプラスチック、そしてハリがついたもの。どうしてこんなもので釣れるの? と思わずバスに聞きたくなってしまうほど奇抜なものであるが、これでボコボコ釣れるのがおもしろいところだ。

では、何を模しているのか。全体をトータルで見ればいかなる生き物にも似ていない。だが、基本パーツをバラバラに見ると、フックの部分はヘッド部分が小魚に似せてあったりするものが多く、やはりこれは小魚をイミテートした道具のようである。あるいはヒラヒラしたゴムやプラスチックは昆虫をイメージさせるものかもしれない。いずれにしてもこれはバスという好奇心旺盛でかつ雑食・大食漢の魚ゆえのタックルである。

あと、SWフィッシングのルアーの中で興味深いのはタイラバ。タイラバの形は丸い頭とゴムやプラスチックのスカートの組み合わせ。水底に落としてただ巻き上げるだけの簡単な釣り方で釣れるので人気だが、水中を引き上げられてくるときの形状はやはり「タコ」のイメージが強い。丸い頭と細長くのびた脚。タコは茹でダコになってしまったものしか普通の人はイメージできないし、通常海底にいるときのタコは確かに茹でダコのイメージだ。しかし、泳ぐときのタコはあの細長い口(正しくはものを食べる口ではなく漏斗と呼ばれる器官)から水を噴射して逃げるので頭と体は一直線となり、リトリーブしたときのラバージグとよく似る。

タイラバではノーアクションが基本となっている。知らないうちはジグのようにアクションを加えたくなるが、実際のタコをイミテートしているということであれば、このノーアクションは的を射ている。泳ぐときのタコは魚のようにヒレで水をかいて進むわけではない。水ジェット推進なので滑るように水中を進む。だからまったくのノーアクションが正しい泳ぎ方なのだ。逆にアクションをつけてしまうとそれはタコの泳ぎではなくなってしまう。

もっとも、タイに限らずハマチ~メジロなども胴突き仕掛けの上にビニールのヒラヒラをつけるだけの仕掛けで釣れる。このためネクタイなどのヒラヒラした部分を小魚、あるいはゴカイなどとして認識している可能性もある。また魚の本能として水中でヒラヒラしたり、ユラユラしたりするものはとりあえず餌かも? という感覚で口に入れることはよくあることである。

釣りエッセイ・ルアー(疑似餌)3
実際に自らそのルアーで魚を釣るという結果を得ることができれば、そこからいろいろとイメージを膨らませることもできるが…。

よく似たルアーであるインチクも同様だ。インチクもただ引くだけのこちらも基本はまったくのノーアクションだが、見た目にはイカに似ている。イカもタコと同様で泳ぐ際にはアクションをあまりしない。だからこれがイカを模しているということであれば、アクションはつけない方が正解ということになる。ただ、インチクの場合はヘッドも含めてシルエットは何となく小魚に似ているので魚を模している、あるいはフィッシュイーターたちは魚として認識している可能性がある。が、もともときびきび動かせる仕組みになっておらず、これはやはりアクションなしでゆっくりと巻き上げるのが理想的な釣り方といえるだろう。

インチクの場合は硬いヘッドの部分と柔らかいスカート部分が別々の動きをする。また、ソフト部分がタコを模したタコベイトになっているので全体としてのシルエットよりもきらきら光るヘッドで魚を引きつけ、タコベイトに食わせるという2つのパーツの共同作業と考える方がよいかもしれない。

ルアーの中でも餌木は果たして…

数あるルアーの中でも気になるのが餌木だ。餌木のカラーリングはおおむねエビを模しているものが多いが、魚のカラーが使われているものも多い。

では、アクションはどうか。ダート系の餌木はこれまたエビか魚か分からない動きをする。ただ、多くのアオリイカがバイトするのは、高い位置から海底に向かって斜めにフォールするタイミング、または海底にステイするタイミングである。この部分だけを取り出し、それを生き物にたとえてみると、その動きは限りなくエビに似ている。だからいろいろと異論はあろうが、個人的には餌木はエビを真似たものと理解している。ただ、アオリイカの胃の中を見るとエビよりも魚が入っていることが多い。小魚はアオリイカの主食であるからである。

ならば一時期あったようなミノールアーにイカのハリがついたようなタイプでもっと釣れてもよいだろうし、これだけルアーマンがいるのだからプラグへのヒットももっと多くてよいはずである。しかし、ルアー型ミノーはずいぶん前に販売されたものの売れ行きはあまり芳しくなかったようだし、誤って(‼)ミノーでイカを釣ってしまうアングラーもそう多くない。イカはあのブルブルするようなミノーアクションを好まないのだろうか。

釣りエッセイ・ルアー(疑似餌)4
イカといえば餌木だが、ルアーとしての強さはいったいどこからきているのか…?

本当のところはイカにしか分からないだろうが、水中でアオリイカの捕食を見ていると、獲物が速く動いているときにはなかなか手を出さず、ゆっくりと泳ぐときや止まったとき、あるいは海底に着いた瞬間に襲うことが多い。アオリイカは魚と違い、遊泳中の魚を瞬間的に捕えるほどの遊泳スピードがない。ミノー型餌木をあまり食わないのは、どうやらそのアクションではなく、なかなか捕食のタイミングが取れないからではなかろうか。よく釣れるルアー型餌木の開発にはこのあたりがヒントになりそうだ。


【宇井晋介・プロフィール】

幼いころから南紀の海と釣りに親しみ、北里大学水産学部水産増殖学科を卒業後、株式会社串本海中公園センターに入社。同公園の館長を務めた海と魚のエキスパート。現在は串本町観光協会の事務局長としてその手腕を振るっている。また、多くの激務をかかえながらもSWゲームのパイオニアとして「釣り竿という道具を使って自然に溶け込む」というスタンスで磯のヒラスズキ狙いやマイボートでのおかず釣りを楽しんでいる。

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