温故知新でさらに楽しい釣りを!! ~釣りの進化について~|知っていたからって釣れるわけじゃないけれど…《アーカイブ from 2013》 | SWマガジンweb | 海のルアーマンのための総合情報メディア - Part 2

温故知新でさらに楽しい釣りを!! ~釣りの進化について~|知っていたからって釣れるわけじゃないけれど…《アーカイブ from 2013》

PEラインの登場

ジギングもPEラインの使用という革命によって劇的に進化した。それまでPEラインのような「縒り糸」は一般に底物釣りに使われるかたくてゴワゴワした太い糸が主体であり、小型リールに巻いて使えるような代物ではなかった。印象としては漁師が手釣りに使うイメージだ。私が子供のころ、父親の船でクエの夜釣りによく連れて行ってもらったが、そのときの仕掛けは手釣りでごつい木枠に巻かれた太い縒り糸であった。伸びがなくてアタリがとりやすく、また手繰るときに適度に指に摩擦がある。このためツルツルしたナイロンよりも手繰りやすい。ただ、その縒り糸が技術の進歩により細くてしなやかな糸に進化し、ジギングの世界をかえた。

それまでのジギングは伸びるナイロン糸で一生懸命にシャクッても、ちっともジグが動かなかった。必然的にそれを動かそうとすればリーチの長いロッドが必要であり、狭い船の上では操作が大変であった。ところが伸びないPEが出現して、短いシャクリでもルアーが動くようになると結果的にロッドは短くて済む。キャスティングの重心移動システムと同様、PEラインの出現もまたアングラーにとっては願ってもなかったウエポンとなったが、魚たちにとってはこれまた脅威の出現となったわけだ。

道具の進化にともなって、たとえばジグのシャクり方などテクニックも毎年新しいバージョンが出現し、めまぐるしく流行廃りを繰り返している。世の中のスピード化に合わせ、釣りの流行のサイクルもずいぶんと早くなってきたように思うのは私だけではないだろう。

たとえば、センターバランスタイプジグを使ったスローピッチ。ルアーが木の葉のようにヒラヒラと落ちていくアピール効果を狙った釣り方は画期的で、確かによく釣れる。釣れるからアングラーが真似する。そして、さらに釣れるという「正のスパイラル」によって大流行している。以前、佐藤統洋氏のスパイラルジャークが登場したときにはその理論に合致したルアーが登場し、これまたよく釣れてびっくりさせられたものだ。まさに時代とともにタックルも釣技も進化し続けている。

昔の仕掛けでも魚は釣れる。でも…

ところで、ちょっと考えてみるとおもしろいと思うのは、最新流行の釣り方を少し離れ、少し前に流行った釣り方で釣ったらどうだろうということだ。たとえばロングロッドにナイロンライン、ラインはルアー直結、ルアーはただの棒状の鉛ジグでジギングをやってみる、てな具合だ。

ご想像通り、この仕掛けでもちゃんと魚は釣れる。なぜなら魚の世界には流行廃りはないからである。魚にとっては最新のジグの動き、色、形も、昔のジグの動き、色、形もそれが「小魚に見えさえすれば」さほど関係ない。最新のテクニックやルアーでないと釣れないと思っているのはアングラーだけで、それはもう釣りマスコミやメーカーの「魅惑的なルアー」に引っ掛かっているに過ぎない(笑)。

ただ、そうしたことも含めて、釣りがどんどん進化・深化していくのは決してわるいことではなく、むしろ喜ばしい。それがなければ私たちアングラーは今でも重くて扱いにくいタックルで釣りをしなければならなかっただろうし、今ほどたくさんの、そして多くの種類の魚に巡り会うこともなかったろう。そう思うと私のように流行の釣りがすぐにしたくなる節操のないアングラーの存在価値も大いにありというものだ。

釣りエッセイ・釣りの進化4
創生期に比べるとターゲットが飛躍的に広がった海のルアー釣り。魚の世界には流行廃りはないが、アングラーとして発展の歴史を知り、自身の興味に従って掘り下げていけば楽しみが広がる部分もあるはず。

【宇井晋介・プロフィール】

幼いころから南紀の海と釣りに親しみ、北里大学水産学部水産増殖学科を卒業後、株式会社串本海中公園センターに入社。同公園の館長を務めた海と魚のエキスパート。現在は串本町観光協会の事務局長としてその手腕を振るっている。また、多くの激務をかかえながらもSWゲームのパイオニアとして「釣り竿という道具を使って自然に溶け込む」というスタンスで磯のヒラスズキ狙いやマイボートでのおかず釣りを楽しんでいる。

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