温故知新でさらに楽しい釣りを!! ~釣りの進化について~|知っていたからって釣れるわけじゃないけれど…《アーカイブ from 2013》

釣りエッセイ・釣りの進化1

釣りが進化・深化していくのは決してわるいことではなく、むしろ喜ばしい。それがなければ今ほどたくさんの、そして多くの種類の魚に巡り会うこともなかったろうから…

文:宇井晋介

※このエッセイはSWマガジン2013年11月号に掲載されたものです。

電話機の進化

今は誠にせわしい時代で、あらゆるものが100年前に比べて何十倍ものスピードで目まぐるしく変化している。たとえば電話機。私が就職したころの電話機といえば黒電話ばかりとはいわないが、固定電話が当たり前であった。携帯電話というのを初めてこの目で見たのは、串本ビルフィッシュトーナメントの第1回大会が開かれたころ。逆算すると1984年ごろということになる。

それは当時、大会開催に奔走していた私と一緒に活動していた大阪の社長さんの車に据えつけられていた車載電話だった。これがとんでもないシロモノで、車の真ん中にデンと据えつけられた真っ黒な大きな箱に受話器がついているもの。およそ今の携帯電話とは結びつかないものだった。

しかし、車の中で電話ができるという「夢のような話」に当時はただただ驚いたのを覚えている。それから数年で今度は肩から下げるショルダーフォンなるものが登場した。こちらもある社長のものを見せてもらったことがあるが、ショルダーバッグの中に重さが3㌔もある機械が入っている。なるほど車から取り出して歩けるところはすごいなと思わせたが、さすがに3㌔は持ち歩くには重過ぎる気がした。それでもどこでも電話ができるという便利さは、釣り大会には最高の便利ツールだった。

私が携帯電話といえるものを初めて手に入れたのが1990年代の半ば。それ以降の爆発的な普及と変化はみなさんの知る通りである。今ではその後に苦労して手に入れた高価なデスクトップコンピューターの何百倍も高性能なコンピューターが、手のひらに入ってしまうような小さく薄い電話機の中に詰め込まれている。なにせ、今はパソコン数台で巨大なロケットが打ち上げられる時代である。

重心移動システムの登場

懐古趣味はないと自分では思っているが、釣りの世界もまたここ30年ほどで劇的にかわってきた。特に海のルアー釣りは劇的にかわった。携帯電話が車載電話だったころ、一般の人に「ルアー釣り」といえばたいていの人は「ルアー? バス釣り?」という反応が多く、海のルアーはやっと普及を始めたころだった。SWマガジン誌がこのときに産ぶ声を上げたのは時代が求めていたからであり、また先見の明があったからに他ならない。

それ以降、PEラインの登場にともなうジギングの普及や重心移動システムの普及によるミノー系ルアーの劇的な進化の他、ショアジギング、エギング、メバリング、アジングなど、さまざまなものが流行って今に至っている。

ルアーの変化で忘れてはならない1つが、重心移動システムだ。これはかの二宮正樹氏による革命的システムで、これによりミノー系ルアーによる釣りが劇的に変化した。それまでのミノー系ルアーはバルサ製が多く、またプラスチックルアーも出現していたが、いかんせん飛距離が出ない。ヒラアジを狙うようなトップウォーター系のペンシルルアーやポッパー系ルアーだと、泳ぎはさほど気にしなくてよいので重量を重くし、かつ先端に重心がくるように設計すればそれなりに飛距離が出る。だが、シーバス用のように泳ぎに力点を置くと重くすれば泳がなくなり、飛ぶが泳がないルアーとなってシーバス用ルアーとしては用をなさなくなる。

そこを改良したのが二宮氏のルアーだったのだ。それまではこうした軽量のミノーは飛距離を得るためにオモリをつけて飛ばすということが行なわれており、ウキにオモリを組み込んだ卵ウキという道具が用いられていた。当然仕掛けの途中に卵ウキを使えばルアーまでの間は一定の長さのラインが必要となり、仕掛け全体が長くなる。そうなるとシーバスロッドのような短い竿でのキャストは極めて難しくなり、また仕掛けも重くなるので長くて丈夫な投げ竿のようなロッドが必要となってくる。

シーバス相手にそんなロッドを使ってはちっともおもしろくない。それでこれまたキャスト時にストレスを抱えながらも軽いミノーをどうしたら遠くへ投げられるかを私も含め日々考えていたものだった。

目から鱗が落ちるという表現があるが、重心移動システムのK-TENを初めて使ったときには、まさにそんな思いだった。あの小さなボディーの中に小さな金属ボールを入れ込み、またそれがキャスト時とリトリーブ時で移動してかつ固定されるというシステムは、凡人の私などには逆立ちしても思いつくものではなかった。アングラーにとってはまさに革命、逆に魚たちにとっては恐るべき最終兵器の出現であったといえる。

釣りエッセイ・釣りの進化2
釣りエッセイ・釣りの進化3
まさに画期的であった重心移動システムの登場。これにより海のルアー釣りが大きく進化した。


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