ショア青物ゲーム・安全とマナーについて | SWマガジンweb | 海のルアーマンのための総合情報メディア - Part 3

ショア青物ゲーム・安全とマナーについて

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エゴな考えは不要。心に余裕を持って自他ともに気持ちよく釣りができる環境を目差して…

解説:宇井晋介

 

最近、釣り場で先を越されることが多くなった。

…といっても、別に歳を取って歩くのが遅くなったわけではない。駐車スペースでタックルをセットしていたりすると、後からきたアングラーが車からおりると声もかけずに一目散でポイントへ向かってしまうのである。

青物ゲームでは釣果が釣り場に左右されることが多いので、我先にポイントへ向かう気持ちはわからないでもない。でも、はやる気持ちを抑えることも大切である。むやみに先を急ぐ姿勢には、ときとして命の危険が潜んでいるからだ。

たとえば、先行者を追い越す際にひと声かけて、二言三言でも会話をしていれば、たとえ先に行かれても抜かれた方は納得できる。また、そこでの釣りの間中、先に行った者のことを気にかけているだろう。しかし、まったく無視では気にかけようという気すらしなくなる。そして、万が一のことがあったとき、誰かが気にかけてくれているのと、そうでないのとでは大きな違いとなる。すぐに助けがくるのと、こないのでは命の危険の度合だって違ってくる。

余裕のない心が判断力を鈍らせる‼

当日の隣人となるアングラーとの良好な関係性を築くことを考えるという以前に、磯のルアーマンにはマナーや安全への配慮が不足している人が少なくない。多いのは、波のある日に平気で磯際に近づくアングラーだ。それも波を見切ってやっているならまだしも、早く釣りたいがゆえにいきなり磯際に立ってキャストを始める。

特に周囲がまだ暗い時間のこうした行為は死に直結する(ここ数年の間にもこうしたルアーマンの死亡事故が起こっている)。波のある日には、夜が明けるまで波しぶきがかかっているような磯際には基本的に近づかないことだ。

波は息をするといわれる。波には必ず大きなものと小さなものがあり、数十回に1回は必ず大きなものがくる。また数百回に1回はさらに大きな波がくる。ほんの少し海を見ただけで磯際に立つのはとても危険な行為である。

波をかぶりながら釣るのがストイックでカッコイイ的な風潮があるが、とんでもない話だ。腰までくるような大波が押し寄せれば、人の命なんて簡単に吹き飛ぶ。たとえ命を落とさなくてもかなりのダメージを受けるのは確実で、大ケガでもしようものなら磯から戻ることすらできない。足を骨折した大人を険しい磯場から運び出す作業の困難さをイメージしてほしい。2人や3人の力ではどうにもならない。最終的にレスキュー隊やヘリのお世話にでもなるしかない。想像するだけで震え上がる事態だろう。

釣り場へ入るのに競争するような形になると、人より前で、人より先にという気持ちが先行しがちで冷静な判断が下せなくなり、それが結果的に事故へと繋がる。真っ当なアングラーを自認するのであれば「お先にどうぞ‼」ぐらいの心の余裕がほしい。

迷惑行為は被害者の立場を想像して…

最近は釣り場周辺でのマナーもわるくなっている傾向がある。たとえば、夜に釣り場付近の人家近くに駐車して仮眠する際に、寒いからとエンジンを切らず、時間がくれば大きな声で話しながらタックルをセット…。そんな光景があちこちで見られる。自分の家でそんな騒音を聞かされたら腹を立てるくせに、よそに出かけると物音に気を使うことをすっかり忘れてしまう人が多いらしい。

先日もこんなことがあった。睡眠中、ふと大きな声で目が覚めた。外で何人かが大声で叫んでいる。まだ外は薄暗い。何か道路で事故でもあったのか。寒い中、眠い目をこすりながら外に出てみると、合宿でもしているのか体育会系の連中が大きなかけ声を発しながらランニング中…。自分たちのことに一生懸命で、そこに日常の暮らしがあることが頭からすっぽりと抜け落ちているのだろう。同じようなことがあちこちの釣り場で起きている。

ゴミのことでも釣り師の評判はわるい。釣り場の近くにゴミ箱があれば、たとえ中身があふれていても容赦なくそこにゴミを置いていく。ゴミは風で飛んで道路に散乱する、海に落ちる…。しかし、当人たちはちゃんとゴミ箱に入れたという認識なので始末がわるい。

およそ釣り場にあるゴミ箱の多くは自治体が設置しているが、その場所柄のため管理は十分でないことが多く、ゴミはあふれて散在するばかりである。自分が出したゴミは基本的に自宅まで持って帰るべきである。当然ながら釣り場にゴミを放置するのは論外だ。磯でルアーのパッケージなど見ると嫌になる。だいたい釣り場にきて初めてパッケージを開けるなんて恥ずかしいことはやめよう。それだけで腕がわかってしまう。

釣り場では釣り人同士のトラブルも目につく。多いのは餌釣り師の道具にルアーを引っ掛けてしまうケースである。私も昔はやったことがあるので強くはいえないが、餌釣りの仕掛けは思いもよらないところへ流れていることがあるから注意したい。

また、近くの磯にいる釣り師の方向にルアーを投げたり、沖合にいる船の方に向かってルアーを投げるのも厳禁だ。ジグのように重いルアーをキャストする場合など、トラブルでラインが切れたりすれば死亡事故さえ引き起こしかねない危険な行為である。これは実際に投げられる方の立場になってみれば、メチャクチャ怖いことなのがよくわかる…。

大漁よりも節度ある安全な釣りを‼

釣果に対する執着も見苦しい結果を引き起こす。以前、かなり歩かねばならない磯の先端でメジロが釣れていたときのこと。あるアングラーがその日に限って爆釣した。ルアーを投げれば入れ掛かり状態で、我を忘れて釣り続けた。そして、ふと気がついてみると足もとにはメジロの山。一心不乱で十数匹も上げていたのだ。

すでに日はすっかり高くなって夏の日差しが容赦なく降り注ぐ。納竿のタイミングだ。しかし、1匹4㌔もあるメジロだから一度に持てるのはせいぜい5匹。すべてを持ち帰るにはそれなりに危険のある長い道程を何往復もしなければならない…。

結局、全身汗みどろになりながら運び終えた彼のメジロだったが、魚の身が暑さで焼けてしまってほとんど食べられなかったそうだ。

餌の入った壺に手を突っ込んだサルが、餌をつかみ過ぎて手が抜けなくなったところを人間につかまるという話がある。釣果に執着し過ぎたアングラーは愚かなサルを笑えない。魚釣りたさ、魚ほしさで無理をして、さまざまな危険に身をさらすことほどナンセンスなことはないだろう。

我々アマチュア釣り師は魚を取ることでご飯を食べている漁師ではないのだから、常に節度ある行動を心がけたい。それが最終的に自分の命を、そして明日のための魚資源を守ることにも繋がる。

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