ショア青物ゲーム・安全とマナーについて
地磯では先行者がいればポイント移動が基本。釣り座は入念な安全確認のうえで決定
解説:大橋究未
私は20年以上前から潮岬などの地磯でルアーフィッシングにハマッていった。あのころと比べて魚の釣れ具合は多少見劣りするようになったかもしれないが、通ってきた釣り場は今でも豊かな環境を保ち続けていると思う。
SWゲームの世界では釣り方も日進月歩。PEラインの使用は今や定番だが、昔はナイロンが主流だった。ルアーの進化に関してはすごいのひとこと。また、20年前との決定的な違いといえば、情報の量や入手のしやすさの変化ではないだろうか?
昔は朝イチの釣りを終えると、自然とみんなが集まって情報をやり取りしていた。そのため先輩(ベテラン)アングラーとの交流も多く、貴重な情報も得られた。同時にモラルやマナーなどについても教えられた。それらが守れないと、みんなが気持ちよく釣りができないと考えていたからだ。この釣りをしていたアングラーはそれぞれに志とプライドを持ち合わせていたのだと思う。
もちろん、現在のアングラーもそのほとんどがきちんとした人物だろう。しかし、中には少し気をつけた方がよいと思われる人が存在するのも事実だ。
事故の防止策、他者への配慮が不可欠
地磯の釣りではポイントまでのアプローチが大変で、しかも高確率に魚を手中にできる立ち位置が限られるケースも多い。そのため、誰よりも先に釣り場へ入りたい一心で深夜から駐車スペースに陣取ることがあったりするわけだが、そういうときは周辺住民の方々に迷惑がかからないようにしなくてはならない。
そして、磯場に向かって歩きだすときにも守るべきことがある。先行者がいた場合や、先に用意を始めたアングラーには必ず挨拶をかわすべきで、大切なのは先行者を追い越さないように配慮することだろう。
磯のヒラスズキや青物釣りでは絶対に先行者を追い越さない。はやる気持ちを抑えて釣り場でのマナーを大切にしてほしい。もし、先行者がいて自分の釣るところがないようならポイントの移動を考えたい。有名ポイントに入れないときの秘密?ポイントの1つや2つは知っておこう。
特に問題なくポイントに到着したとしても、あわてて竿を振ってはいけない。まずは自分の立ち位置が安全かどうか確認することから始める。目安としては、そこが乾いているか、それに近いかどうか。妙にきれいな潮溜まりが不自然にあるのは危険なパターンだ。それは突然の大きな波がその場所を洗っている可能性が高いというサインとなる。
経験がないと理解しにくいかもしれないが、波には想像以上のパワーがあり、バシャーンと波を前から浴びた場合や、膝まで波がきたときはいとも簡単に倒されてしまう。したがって波に洗われる恐れのある場所を釣り座とするのは厳禁だ。
ライフジャケットと滑らないシューズの着用は当然である。ライフジャケットがあれば、転倒時のケガの危険性を少なくすることもできる。磯で背中や胸など直接強打した場合は呼吸することすらままならないほどのダメージを受ける。その動けないときに大波がくればどうなるか…。簡単に想像がつくはずだ。
また、磯歩きではできるだけ飛ばないことも大切だ。特に石が丸くて黒いコケ、ノリがついている場所では要注意。いつも以上に慎重に行動しよう。
釣り座の安全が確認できたらいよいよキャストを始めるわけだが、その際は回りに人がいないか気をつけなくてはいけない。釣りをしているアングラーに近づく場合も声をかけよう。特に危ないのが目の前でボイルが発生したとき。人間も魚もエキサイトして回りが見えていないことも多いので細心の注意が必要だ。
待望のヒットに持ち込んでからも、魚とのやり取りだけに集中するのは禁物。ときおり打ち寄せてくる大波の存在を忘れてはいけない。ランディングしやすいからといって磯の下まで降りるのも控えたい。そして、魚が浮いてきてからが最も危険なタイミングだ。ランディングはあらかじめ確認しておいた安全な場所で行なうようにしたい。
昔、同行者が掛けた大型のヒラスズキを取り込もうとしたとき、ランディング場所の安全確認不足で大波にさらわれたことがあった。ライフジャケットは着用していたが、荒れ気味の磯際で泳ぐのは難しく、自分が大きなウキになったような気がした。
そのときは幸いにも上がりやすい場所に打ち寄せられ、這い上がることができたが、気がつけば顔面から出血が…。結局、その1つのミスでせっかくの遠征も寒さとケガで台なしになってしまった。同行者もいい思いはしなかっただろう。
また、昨年には大切な友人が落水で亡くなってしまった。落水時、本人に意識があったのかどうかはわからないが、苦しさと絶望の中で命を落としたのだとしたら…。それを想像すると何ともいえない気持ちになる。
事故が起これば回りの人がどれだけ捜すことだろうか? 同行者は自分を責めたりすることになるし、もちろん家族や親兄弟、恋人、友人とすべての人が悲しみに暮れる。絶対に無理は禁物。常に落ち着いて行動してほしい。
どうしてもバラしたくないような大物がヒットした場合も、安全が確保できなければ無理をしてはいけない。同行者にランディングしてもらう場合も無理をさせてはいけないし、取り込みが失敗に終わっても絶対に仲間を責めてはいけない。そんなことをしていると、お互いに無理をするようになってしまうからだ。
そして、磯を立ち去るときは絶対に自分のゴミは持ち帰ること。釣り場にゴミを放置していくアングラーは最低だ。そんな人に釣りをする資格はないと思っている。また、自分の車の回りにゴミを放置していく人も意外といるが、そんな光景を見ると本当に残念でならない。
最後に、これからこの釣りをされる方はアングラー同士のあいさつ、気配りを特に心がけていただきたい。どうかマナーやモラル、安全な釣りを優先する品格のあるアングラーであってほしいと願うばかりだ。そんなアングラーの回りには同じく品格のある人が集まる。そういった人は魚もよく釣るものだ。
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