海の異変と生き物の超能力|知っていたからって釣れるわけじゃないけれど…《アーカイブ from 2012》
ナマズの動きと地震
昔から多いのが地震や津波に繋がる異変である。地震がくる前にナマズが騒ぐというのは昔からいい伝えられてきたことである。実際、ウナギ釣りに出たらナマズが騒いで釣りにならないので不審に思った。それで家財を持って逃げたら実際に地震が起こり、ことなきを得たという故事もあるようである。
ナマズと地震の関係については現在科学的な研究も行なわれているようだが、まだ確信を得るような研究はないようだ。研究の行程を見ているとナマズの行動と実際の地震発生の関係をある程度長期にわたって調べた記録があるが、地震の前にナマズが騒いだ確率は三割ちょっとらしい。これはそこそこ優秀なバッター並みの打率(確率⁉)だが、果たしてこれを高いと見るか低いと見るかは意見が分かれるところである。
ナマズは確かに他の魚に比べて電気に敏感なようであり、地震にともなって出る電気的な刺激によって騒ぐのだという。だが、研究によるとナマズよりもウナギの方が電気には敏感であるという説もある。いずれにせよ現在の科学では地震の発生をナマズ君の動きだけで予知するのは難しいことだけは確かなようだ。
深海魚が打ち上がるのは天変地異の前触れ?
地震に関する異変で多いのは何といっても深海魚の打ち上げ騒動である。海岸に見たこともない深海魚が打ち上がればそれだけでセンセーショナルだし、昔から「深海魚打ち上げ=地震」というイメージが強いのでマスコミも記事を書きやすい。定番ネタみたいなものである。ちなみに、海岸によく打ち上がる深海魚有名ベスト3はサケガシラ・リュウグウノツカイ・チョウチンアンコウだろうか。
サケガシラは私も何度か見たし食べたこともあるが、深海魚の打ち上げというニュースの多くがこのサケガシラである。姿形はタチウオであるが、体は格段に大きく2㍍以上になり、背中とお腹側はほとんどピンク色のヒレで覆われとても美しい。ただ、たくさん打ち上がるということは、実はたくさんいるということであり、このサケガシラ、深海釣りの外道としてもしばしば釣り上げられている。
リュウグウノツカイは深海魚の中では最大の種でときに10㍍以上にもなる。人魚のモデルとなったといわれるほど美しい魚で、サケガシラと同様に長い背ビレと尻ビレが体の上下に連なっている。腹ビレは赤くてとても長い。なるほど天衣を纏った天女を連想させる。
リュウグウノツカイはサケガシラに比べるとはるかに珍しい種で、滅多に見ることがない深海魚のスーパースターである。
チョウチンアンコウは名前こそ有名だが、これも案外レアな深海魚。種類はさまざまであるが、大型になるとバレーボール以上になる種もあり、姿形はまるで真っ黒のバレーボールにヒレをつけたよう。目はとんでもなく小さく、その目の上にハタキのような突起を持っている。このハタキは発光するのでチョウチンアンコウの名前はそこからついた。確かにこんな奇怪な魚が浜辺にごろんごろんと打ち上がっていれば、それはもう天変地異の前触れだということになっただろう。
生き物の超能力
数年前の春先に島根県の海岸に大量の深海魚が打ち上がった。キュウリエソという小型の深海魚で通常は数百㍍の深い海に住む。ところが、このときは数十万~数百万匹というキュウリエソが海岸にぎっしりと打ち上がった。おりしも原発問題が勃発している最中でもあり、マスコミは地震との関係を書き立てた。
確かにこれだけでも十分異変であり、真っ先に地震、津波のことが頭に浮かぶところだが、原因は大型魚に追われて浅瀬に打ち上がった可能性や水温の急変、潮流の変化などの他、漁で取った売れない魚を遺棄した可能性さえ指摘され、はっきりとした原因は分からなかった。
最近もっとよく見かけるのがクジラやイルカの打ち上げ。イルカやクジラは磁気の影響を受けやすく、地震にともなって地球の磁気が狂うと体内コンパスが狂って打ち上げられるという。また太陽の活動が活発になって地球に磁気嵐の影響が出て、それがクジラのコンパスを狂わせているという説等々、さまざまな憶測と科学と妄想がない交ぜになって伝えられている。
そもそも磁気嵐や地磁気など我々にとってあまりなじみのない言葉が出てくると、理解できないので妙に説得されてしまうことが多い。あるいは一部のこうしたことが理解できる人には、無知な輩がまた騒いでいるということなのかもしれない。
だが、私的には動物や植物など自然の中で生きている生き物にはそうした「超能力」が備わっていてもなんら不思議はないような気がする。それは単に私たちが本来持っていた「超能力」を文明の代償として失ってしまってそう思うからである。
【宇井晋介・プロフィール】
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