釣り人にとって身近な海鳥について|知っていたからって釣れるわけじゃないけれど…《アーカイブ from 2012》

海鳥・釣り・ナブラ1

釣り場では海鳥を目にする機会が多く、その動きをヒントにターゲットを攻略することも。そのように釣り人にとって身近な存在である海鳥だが、改めてその種類や習性などについて考察してみると…

文:宇井晋介

※このエッセイはSWマガジン2012年7月号に掲載されたものです。

一気に地球半周ほどの距離を飛ぶ海鳥

釣りの合間に沖を飛び交うカモメを見ていると心が癒される。強風の中でも自由に飛び交う彼らは鳥の中でも特に飛翔能力の高い種族である。潮岬あたりで釣りをしていると、ときにこの海鳥の群れが左右の視界一杯に右から左に飛び続けている光景に出合うことがある。それも1時間どころか数時間、あるいは半日もまるで同じ画像を繰り返し見ているように鳥たちが右から左に飛び続けているのだ。

いったいどれくらいの数がいるのか想像もつかない。遠目にはややグレーがかったカモメのようなスマートな体。これはハシボソミズナギドリという海鳥の群れである。この潮岬の沖を右から左に通過しているのは、渡りの最中なのである。何と彼らの渡りはオーストラリアのタスマニア周辺から北極に近いアラスカの近辺まで実に15000㌔を6週間かけて飛ぶといわれる。ほとんど地球を半周するほどの距離を一気に飛ぶのである。いやはや本能とはいえ野生動物というのはすごいものである。

もっとも、そうした長旅がいつもうまくいくわけではない。以前このあたりの海岸にこのミズナギドリの死体が大量に打ち上がったことがある。ヒラスズキ釣りの最中に遭遇したのだが、中にはまだ生きているものもあった。

この打ち上げは紀伊半島だけでなく全国あちこちで起こったものだから、マスコミでは鳥インフルエンザだとか、さまざまな憶測が流れて騒ぎとなった。しかし、どうやらこの打ち上げは天候の悪化や海流の変化など自然現象から引き起こされたことが分かり沈静化した。この渡り途中の斃死は大昔から続いている自然現象のようだ。こうした旅の途中の死亡も考慮に入れて、彼らには天文学的な数のヒナが生まれ出るのだろう。

海鳥・釣り・ナブラ2
釣りをしているとさまざまな海鳥が目に飛び込んでくる。改めてそんな鳥たちに目を向けると…。

海鳥は釣り人に海中の情報を教えてくれるから…

ところで、釣り人にとってこれら海鳥は海の中の状態を教えてくれる大事な生き物である。オフショアでボートゲームをやるときなどは、この海鳥がいる場所を捜す。海鳥は空の上から餌を捜しているので小魚の群れがいるとたちまち発見して集まってくる。ここ串本あたりでもトップウォーターゲームが大流行で、メジロがくると大小のボートが群れを追ってあっちへこっちへ走り回っている。彼らの目印はメジロが小魚を追って水面に躍り出るナブラであるが、うまい人になるとナブラにつられてあちこち走り回らずに海鳥の動きだけを見ている。

海鳥は高い空の上から海面を見ている。それでメジロが水面に躍り出る前に餌の小魚の群れがどこに移動しているかを見ている。だから次にどこにメジロが出てくるかが分かるのだ。メジロは水中から水面に向かって小魚を追い詰めるので空からだと海中から小魚が浮き上がってくる瞬間が見えるのだろう。

鳥の飛び方を見ていればその小魚の動きが掴める。水面付近に小魚がいるときには、海鳥はすぐにでも飛び込めるように水面近くで空中停止、すなわちホバリングする。小魚が沈んでいるときはもっと高いところで大きくクルクルと回る。あちこち飛び回っているときには餌がいないか見えないかである。


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