【釣りの本質を追求するために…】私を創った釣りの格言《PART2》
やったらできる‼
大阪の下町のいわゆる「ごんたくれ」が見事に集まった中学時代の柔道部。初めての公式戦の結果は惨憺たる内容で、一同激しく落ち込んだ。それもそのはず、柔道経験が1カ月しかない私たちに対して、大会には小学時代から柔道に打ち込んできた選手が多数参加していたからだ。
落ち込む私たちに恩師はやさしく「相手の何倍もやったらええんや」と教えて下さった。おかげで、半年で市内、1年で地域、そして2年生の秋には大阪でナンバーワンのチームに成長した。ところが、直後に開催された西日本大会の準々決勝で再び完膚なきまでに打ちのめされた。それも大型の有力選手を集めた私学ではなく、公立校の軽量チームに…。聞くと、小学時代に全国優勝を達成したチームで、高校生や大学生を相手に稽古をしているとのこと。
それを機に恩師は、これまでの他校の何倍もの稽古量のまま、府内の有力高校、大学、社会人、機動隊との効率のよい稽古に切り替え、足し算ではなく掛け算の指導を行なうと宣言し、「(う○こチビるまで)やったら、できる‼」と教えて下さった。
柔道競技ではないが、前人未到の大記録を打ち立てたアスリートの栄光の陰には、人知れず失神、痙攣、脱糞に至る毎日の想像を絶する稽古があったという。柔道は先天的な素質を努力が上回る競技である。一部の競技において競争原理によってたまたま背の高い選手が残っている(その競技に打ち込んだぶんだけ背が伸びるわけではない)ということとは対照的である。いかに自分を追い込めるかにかかっているといっても過言ではない。
では、釣りはどうだろうか? 対象魚の濃いエリアのローカルアングラー、時間に余裕がある人、情報収集やネットワーク構築に長けている人、お金持ち、身体能力が高い人、というように、有利に釣りを展開することのできる要素はいろいろとある。言葉はわるいが、お金と時間さえあればいいガイドを雇って釣れる場所にいいタイミングで釣行することでより多くの釣果が得られる。経験値でさえお金で買えるのである。
しかしながら、それらの要素が決定打にならないのが釣りの奥深さである。私のようなすべてを持たないLOOSERが、長年にわたり細々ながら媒体で活動できていることがその証でもあるだろう。
ちなみに柔道では、何かが足りなかったのか、あるいは多かったのか? 輝ける経歴を残すことはできなかったが、古傷が気圧の変化を教えてくれるし、醜く曲がった小指はそれを見るだけで1杯飲める肴になった。
スポンサーリンク
※文章・写真・記事などのコンテンツの無断での転用は一切禁止です(詳細はサイトポリシーをご確認下さい)。