大型との距離が縮まる厳寒のヒラスズキゲーム|【Experienced Plugger vol.2】
スポーニングを控えたタイミングのヒラスズキ は餌を欲する本能に支配される。普段はお目にかかれないビッグワンも例外ではなく、溢れる本能が狡猾な経験値を狂わせるから…
Text & Photo 池田一郎
スポーニングを控えたヒラスズキ
冬本番を迎え、私のホームである九州北部の玄界灘沿岸部は時化る日が多くなっている。冷たい季節風が吹き荒れる海上は沖からウネリが入って波となり、外洋の荒磯を乳白色に染める。濃い青から輝く白へのグラデーションは玄界灘の冬景色として日常化している。
そんな中、スポーニングを迎えた磯のヒラスズキだが、ヒラスズキにとっての産卵行動はエネルギーの消耗が激しく、体力面の負担は我々の想像の域を越えている。ヒラスズキはこの行動をなし遂げるべく、ベイト(栄養)を欲する本能に支配され、必死になって餌を追い求める。その証しといえようか、例年この時期にキャッチしたヒラスズキは実に7割強が抱卵した雌の個体であり、これには生命存続への強い意欲の現れを感じざるを得ない。
本来なら警戒心が強く、そう簡単には目にできない狡猾なビッグワンとてこの時期は溢れる欲望が経験値を狂わし、一瞬のつけ入る隙をチラつかせる。この季節はそんなランカーとの距離が縮まるという点も大きな魅力だ。
ヒラスズキ狙いにおける天候の見極め
そんな期待を抱きながら釣行のチャンスをうかがっていたところ、年末休暇と時期を同じくして日本列島を広く覆う寒波が到来。全国的に北西風が強まり、帰省の足をも乱したその気象状況は2018年12月27日午後の時点で西高東低の気圧配置となった。さらに、低気圧は28~29日にかけて発達を続け、寒気の流れ込みがピークを迎えた28日午後には私の地元である福岡市内でも初雪を観測。これは例年より2週間ほど遅れており、この冬の暖冬傾向を物語っていた。
両日の気象予報はともに「北西の風、波高3㍍」 だったが、海上では風速10㍍前後の強風が吹いており、外洋に面した磯では時化過ぎで危険な状況にあると推測された。したがってこの2日間の釣行は見送った。そして、翌30日は低気圧の勢力がようやく緩み始める傾向が天気図から予想されたため、メンバーと相談してヒラスズキ狙いの釣行を決めた。
釣行当日となった30日の気象予報は「北西の風、波高2.5㍍。海上では北西の風がやや強く」というもの。磯のヒラスズキ狙いでは当日の天候もさることながら、数日前の気象状況も重要となる。この前々日からの荒れた天候を考えると当日は予報以上の波高が継続していることが想像でき、1つの不安要素を残す形となった。
そこで、状況に応じて東西南北へポイント移動が可能であることを考慮し、玄界灘に浮ぶ離島「筑前大島」へ向かうことに。前回(【磯のヒラスズキ・シーズン序盤を制する戦略的釣行】)も紹介したが、このフィールドは入島手段が車載フェリーとなるため、瀬渡しとは違って多少の波は気にすることなく現地入りが可能。シケがベースの磯のヒラスズキ狙いにとっては計画を実行しやすい地といえよう。
早々にチャンスが到来
そして迎えた当日、まずは波風の状況を確認するべく北側の海岸線から様子をうかがうことに。しかし、そこでは予想以上の強風が吹いており、波高も2.5㍍を上回っていた。釣りが成立するか否か微妙な状況にあったため、風を正面から受けない北東エリアのポイントにエントリーすることにした。
さっそくタックルの準備に取りかかるがその最中にも突風が吹き、突然氷が叩きつける悪天候に見舞われた。不安要素に拍車をかけるスタートである。
北東に面したこのエリアはシャローに根が点在する島内屈指の荒い地形のポイント。ここでのポジション移動は海に浸かりながら浅瀬を進む必要があり、濡れたウエットスーツに強風が吹きつけると体温が奪われて堪える。
どんよりと暗い空模様の下、横風が強いものの波高自体は何とかヒラスズキの可能性を感じられる海況であった。
実績ポイントへはメンバーに先行してもらい、私は後ろから見守る形でムービーを回していた。ヒラスズキがいたら即バイトしてくるポイントだけに、緊張と期待が入り混じる。そして3投め、磯際側近の沈み根を通過したルアーに飛沫を上げてヒラスズキがバイトしてきた!!
青物兼用のヒラスズキロッドをしならせるファイトに良型を期待したが、魚の方が1枚上手で荒根に潜られあえなくフックアウト。メンバー曰く「ドラグが緩過ぎた」とのこと。久しぶりのヒラスズキにファイトの感覚が鈍っていたようだ。
とはいえ、早々にヒラスズキからのコンタクトが得られ、期待が高まる状況である。しかし、気を取り直して再開するもなぜかあとが続かない…。その後はランガンで一帯を攻め尽くしたが反応が得られず、いったん磯上がりして暖を取ることにした。
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