【UNCHAIN SKILL act.5】道具目線のエギングスタイル【後編】 | SWマガジンweb | 海のルアーマンのための総合情報メディア

【UNCHAIN SKILL act.5】道具目線のエギングスタイル【後編】

エギングタックル ライン・リーダー・餌木1

前編に続き後編ではエギングで使用するライン、リーダー、餌木について考察。さまざまな選択肢がある中で細かい部分に目を向け、状況に応じた使い分けを実践すれば新たな可能性も見えてくるから…

Text & Photo 安田栄治

メインライン

エギングで使用するメインラインはほぼPEラインの一択だが、比重や加工方法、組数、号数について論じられることは少ない。それだけに誤った認識がなかば常識化している可能性もある。そこで、PEラインについて私なりの考えを述べたい。

比重

PEラインのタイプを大きく分けるとフローティング、サスペンド、シンキングとなり、当然それぞれに特徴がある。

フローティング(比重=0.97)

一般的なPEといえばフローティングだが、ナイロンやフロロと比較して圧倒的に伸びが少ないこと、ラインに浮力があるのでシャクりやすく、餌木の縦の跳ね上がりが大きくなることなど、フローティングPEがあったからこそ現代エギングが成立したといえる。今後もしばらくはエギングのベーシックラインであり続けるだろうから、このタイプをベースとして考えるのがいいだろう。なお、比重が軽いため、風や潮流の影響を受けやすい。

サスペンド(比重=1.05)

私自身は他のエギンガーとの差別化を意識してサスペンドPEを取り入れた。シリコンなどのコーティングや異素材を加えてハイブリッド化することで比重が調節されている。フローティングPEとの比重差は0.08とわずかだが、使用感は大きく異なる。特に8本や6本組のハイブリットPEなら断面がより真円に近くなることもあって風や潮流の影響がより少なくなり、キャストや操作のみならず感度も向上する。

ただし、すべてではないが水中に入るラインの量が多いので餌木の操作においてダイレクト感が強くなる。とはいえ、シャクりにくくて縦、横の動きは小さくなる。この点について個人的には「移動距離の増大=位置やレンジの把握精度が狂う」と考えていることから大きく動かなくてもいいし、厳寒期や産卵期、ハイプレッシャー時は特にその思いが強い。

なお、強風やウネリなどが入る悪天候時、急潮流エリアやディープ、視覚情報が得られないナイトゲームにおいて緻密な釣りを展開できることから大きな武器となっている。

シンキング(比重=各メーカーでバラバラ)

サスペンドと同様の製法で、コーティングや異素材の比率をかえることで任意に比重を設定できる。メーカーによって異なるが、おおむね1.14(ナイロン)~1.38(エステル)の比重に設定されているようだ。ただ、フローティング、サスペンドの延長線上の使用感ながら個人的には未だショアのエギングにおいてメリットを見い出せていない。

風や潮流には強いが、飛距離は落ちる。ボートやディープでは沈めやすく、浮き上がりにくいので一定レンジをトレースする巻き系の釣りには適しているが、ラインが沈むのでシャクりにくく餌木のアクションもスポイルされる。残念ながら自分にとってベストな比重を模索できるほど成熟していない。

エギングタックル ライン・リーダー・餌木2

組数

PEラインは単線、2本組、3本組、4本組、6本組、8本組、12本組が広く出回っているが、各々に特徴やメリット・デメリットが存在する。そこで、代表的な4本組と8本組を軸に比較検討したい。

8本組

4本組と比較した場合の8本組の特徴は「原糸が細い」「編み込みが密に成る」「隙き間が小さく糸潰れが少ない」「断面がより真円に近くなる」といったこと。これにより次のメリットがあげられる。

①糸滑りがよく飛距離も伸びる。
②糸鳴りが少なく、アオリイカにプレッシャーを与えにくい。
③風や潮流の影響を受けにくい。
④風や潮流の中では感度が上がる。
⑤水切れがよくなることも加え、フォール性や操作性が向上する。
⑥滑りがよいので結束強度も上がる。
⑦密に編まれているのでズレが少なく直線強度も高い?

4本組

8本組のメリットを考えると4本組には負のイメージが沸くが、必ずしもそうではない。確かに原糸が太くて編み込みが密ではなく、糸潰れが発生して断面が真円に近くなることはない。しかし、糸滑りや糸鳴り、水切れに関しては、ラインコート剤によって高性能といえる。

風や潮流の影響を受けやすいのは確かだが、そのような状況ばかりではない。遊泳力に劣るイカは潮流が速過ぎるポイントに定位できない。そのため、ポケットなどの潮が緩む場所を選ぶことが多い。また、強風下では緻密な釣りが成立しにくく、ともすればフィールドやイカの活性に左右されることが多いので私の流儀ではない。私はプロではなくレクリエーションアングラーなのでおもしろくないことはやらないし、強風時は風裏へ逃げる。どうしても逃げられない状況ならより風や潮流に強い高比重のPEラインを選択する。

また、いくら風や潮流に強くても比重が軽いPEは浮力が発生する。そのため、フォール主体のエギングにおいてはラインがまっすぐになることはなく、感度的なメリットは体感できない。そして、4本組には低伸度による感度的なメリットもある。強度に関しては原糸が太いことから耐摩耗性は4本組の方が強い。結束強度や直線強度は8本組の方が優れているようだが、アオリイカは根に走ることがないため、ライン強度の限界ファイトを強いられることもない。また、ラインは使うほど強度低下が進む。そういった意味では、実際のフィールドでは釣行ごとにラインの巻きかえができる人以外は8本組の結束強度や直線強度の優位性を享受できない。

むしろ一般のアングラーは耐摩耗性に優れた4本組の残存強度による結束強度や直線強度の方が体感しやすいだろう。それを感じられないのは「8本組の破断伸度=伸びの大きさ」による錯覚だと考えている。加えて低伸度によるリニアでダイレクトな操作性も私が4本組をメインに選択する理由である。生産工程における編み込みなどの技術的な手間が少ないことから価格設定が抑えられていることも大きなメリットだ。

以上、いささか偏った意見だが、現在の私の真摯な感想だ。より組数の多いラインは8本組のさらに先、より組数の少ないラインは4本組のさらに進んだ特徴を持っているように思う。ただし、3本組と2本組は真円からほど遠くなり、歪んできし麺のようになるものもあるのでウィークポイントがより明確になる。単線は真円・低伸度と、8本組と4本組のよい部分のより進んだ特徴を持っているが、編み込まれていないので耐久性の問題がある。さらに、それを補うために厚いコーティングが施されているので糸質が硬くなり、エギングには適しているとは思えない。

また、最近では6本組のラインナップも増えてきており、こちらは4本組と8本組の中間的な存在であることから注目している。また、8本組や12本組の登場により細い原糸が発売され、これまでになかった0.7号や0.5号、0.3号などの中間的なラインナップに釣りの幅が広がった。

エギングタックル ライン・リーダー・餌木3

太さ・号柄

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0.6~0.8号

厳寒期の南紀や春のデカイカシーズンにメインで使用している号柄。ターゲットのことだけを考えると根にも走らないし、ドラグをきっちりと設定すれば0.4号でも十分だが、藻場やストラクチャーを攻める機会も多く、安心マージンをとった上での選択である。

餌木のロストは経済的な損失のみならず、釣り場を潰すことにもなるし、意図せぬラインシステムの組み直しによる機会損失、釣りのリズムの乱れ、ゲーム中断による集中力低下を招く。これらを予防するためのセッティングだ。それでも0.6号か0.8号かというのは悩ましいところだったが、0.7号の登場により選択が随分ラクになった。

0.5号以下

メインラインが細いほど抵抗が少なく、風や潮流の影響を受けにくい。そういったことから飛距離が出て餌木を沈めやすく、操作性も上がる。加えてボトム覚知が容易でアタリも明確にでて扱いやすいなど、誰もが高いレベルのエギングを実現させることができるラインだ。一方で当然ながら根掛かり時の回収率が極端に下がるため、私は宙~表層メインの釣り、エントリー時に活性の高いアオリイカを捜すとき、秋エギング、深場やサーフ狙いなどで使用している。

ちなみに2010年、SWマガジンの秋イカ取材で周囲が沈黙する中、ただ1人渋いながらもコンスタントに釣果を出し続けたことがあった。それは地元ながらほとんど行ったことのない釣り場であった(というか当時、秋エギングはほとんどしていなかった)。しかし、取材として受けるなら既存の手軽で安全かつイージーで楽しい秋エギングではなく、手軽&安全の先にあるテクニカルでゲーム性の高い秋エギングをを提案したいと考え、戦略やタックルを練り上げて取材に挑んだ。偶然釣り場で出会った南紀のエキスパートが私のメバル狙いのような繊細なタックルを見て「ズルいですねぇ~」と褒めてくれたが、そのときラインはサンラインのスモールゲーム用プロト0.2号を使用していた。

1号以上

メインラインが太いほど抵抗が増え、風や潮流の影響を受けやすい。そのため、飛距離が出ない、餌木を沈めにくい、操作性がわるい、ボトム覚知が困難、アタリも不明瞭といった具合に扱いにくい。南紀などでデカイカを追い求める一部のエギンガー以外はあまり使用することがないのが太いラインだ。おそらく対アオリイカや対フィールドではなく、激しいジャークによるシャクリ切れを防ぐ選択であろう。

しかし、抜群のライン強度による根掛かりの回収率とそれにより実現できるアグレッシブなストラクチャー攻略、それと餌木をスローにフォールさせて限られたレンジや藻のポケットを攻める滞空時間の長さは見逃せない。シャローの根掛かり地獄やヤエン師でさえ回避するような藻場のジャングルなど、手つかずの楽園はまだまだ存在する。それを攻略するのに欠かせないのが太ラインといえるだろう。

とある釣り場にシーズン中は連日通う常連さんがいる。かつてその釣り場は釣行のたびに複数の餌木を失う難所であった(近年は藻の減少や砂による瀬の埋没もあるが…)。そこでコンスタントに釣果を伸ばすその常連さんのラインはPE2号でリーダーがフロロ10号。餌木を遠投するシステムを伝えてからはこのスタイルだけでそれなりの釣果を得られている。ちなみに、年間にロストする餌木の数は1~2個とのことである。

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