【UNCHAIN SKILL act.5】道具目線のエギングスタイル【後編】 | SWマガジンweb | 海のルアーマンのための総合情報メディア - Part 3

【UNCHAIN SKILL act.5】道具目線のエギングスタイル【後編】

餌木

「好きなエギンガーが推奨している」、「各エリアの爆釣アイテムで釣果実績がある」という理由で餌木を選択されている方も多いのではないだろうか。それはそれで間違いではないと思う。プロアングラーの動画を見て釣り場や状況に応じたアプローチをきっちりと把握して再現できれば問題ないだろうし、各地域別に釣果実績があるのは釣れる理由があるからだ。

しかし、私の中で餌木には大きく2つのカテゴリーが存在する。それは「お手軽釣り場系餌木」と「ハード釣り場系餌木」だ。それぞれ基本的な設計レベルで異なるにもかかわらず、数年前までは誰も意識していなかったことでもあり、二分化は副次的な偶然の賜物であったのかもしれない。エギング黎明期に従来の跳ね上げやズル引きのみならず、ダートする餌木が登場して釣りが大きく発展してきたが、ダートを構成する2つの要素にそれぞれ特化することで、二分化が進んだのではないかと考えている。そのような経緯を知る必要はないが、実際にはこれを理解していないと釣果に反映できない。

餌木のカテゴリー

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お手軽釣り場系餌木

誰もが容易かつ小さな力でダートを演出できるレスポンスのよい餌木。小さな力でチョコチョコと動かすこともでき、人的プレッシャーの高い漁港など、手軽な釣り場で追走距離の短い個体を攻略する。また、藻のポケットなどの限られたスペースで緻密なアプローチを実践することもできる。

その反面、ラインテンションの変化に機敏に反応して挙動をかえるため、ウネリや急潮流、強風などが絡むハードな釣り場では扱いにくい。それをクリアする方法はフリーフォールだ。残念ながらステイやカーブ、テンションフォールは条件が揃わないとできない。ともあれエギングブームを築いた餌木であり、今でもこのカテゴリーの餌木は多い。

ハード釣り場系餌木

キレのよい幅広ダートを実現するために開発された餌木。ロッドワークにより入力された力を1度踏ん張ってから大きく飛ばすように設計されているため、レスポンスはよいとはいえない。強いロッドや弱いロッドならバットでしっかりとシャクらなければ動かない。そのため、抜群の安定感を有して不用意に動くことがなく、ウネリや強風、急潮流にも強い。磯やボートなど、ハードなシチュエーションに強い餌木となる。

私はこれらの特徴を踏まえ、あえて手軽な激戦区に投入することにも注目している。アピールの部分では少し技量を要するが、乗せの部分では容易に安定感のあるナチュラルなステイやフォールが演出できるからだ。デカイカ狙い、産卵シーズン、急激な状況変化、厳寒期など、ナーバスな状況を打破する際に武器となるのではないだろうか。

サイズ

餌木のサイズについては一部のデカイカのみを追いかけるアングラー以外は3.5号しか使わないという方も多いのではないだろうか。そういった方に理由を尋ねると「必要性を感じない」という。

一概にはいえないが、同じように考えている方の中には単一的に捉えて餌木のサイズに応じた適切なアプローチができていない人もいるように思う。確かに3.5号は餌木に求められる要素をバランスよく備えているが、それだけではすべてのシチュエーションで最高のパフォーマンスを発揮することはできない。以降では3.5号の釣りを補完する上でも他号数の特性について考察したい。

4号、4.5号

4号や4.5号はサイズ的ボリュームによるアピール効果に優れた餌木だ。質量が大きいことから3.5号と同様のアクションを求めることはできない。3.5号のようにティップのみで操作をしても動かない。強いタックルを用いるか、バットでしっかり操作しなければならず、衝撃や体への負荷も大きいことから機敏な連続ジャークなどができない。

しかし、「質量が大きい=動かない」ということは安定性が高い。強風やウネリなどのラフコンディション、急潮流でのドリフトアプローチ、藻場のポケットやカケアガリのエッジなど、限られたスペースで抜群の安定感を誇る。

また、先行者のいない釣り場でのファーストアプローチや回遊待ち、局面の打開を図るためにラトルモデルを投入することが多かったが、流行してみんながやればアオリイカもスレて効果が望めない。このような場面でのデカ餌木投入も効果的である。

3号以下

3号以下の餌木は当然ながら質量が小さい。「質量が小さい=動きやすい餌木」ということになるが、各餌木に応じた適切なシャクリがあるため、3.5号と同様にシャクれば動き過ぎたり、場合によってはアクションが破綻してしまうことも少なくない。また、「動きやすい=安定性が低い」と繋がり、3.5号の感覚で操作すると餌木の挙動が不安定になってアオリイカに見切られていることも少なくないだろう。

その点についてはテンションを抜いたフリーの操作を心がけ、ラインテンションではなく餌木本来に設定された沈下速度をローテーションをすればいいだろう。「そこまでして飛距離も出ない小さな餌木を使うメリットはあるのか?」という意見も多いだろうが、私はあると考えている。

スイッチの入った活性の高いアオリイカは、自分より大きな餌木にも果敢にアタックしてくる。以前、イケスの中で1.5㌔クラスのアオリイカが4㌔ほどのシオの頭にかじりつく姿を見たこともある。しかし、活性の低い状況、特に人的プレッシャーの高い釣り場では小さな餌木でしかダマしきれない状況が存在する。近年では3.5号でも少し小さいサイズや3.25号などの中間サイズもリリースされており、3.5号により近い感覚で差別化できるようになった。

今後もゲーム性を求めて…

  近年は「エギングがおもしろくない」というネガティブな意見を聞くことも多い。これにはさまざまな要因があると思うが、以前のように容易にアオリイカが釣れなくなったし、顕著な進化(深化)もなく、旧態依然としたエギングに飽きる人が出てくるのも頷ける。手軽な釣りの1カテゴリーとして発展してきたエギングだが、ユートピアを求めてサーフや磯場、沖磯、遠征、離島へと活性の高いアオリイカを求めても、もはや手つかずのフィールドというのも存在しない。 ただ、既存の限られた条件の中でもやれることや楽しめることは多く、個人的にはシビアさが増すことでゲーム性も高まったと思っている。あくまでも私見ではあるが、そんな思いもあって今回の記事を執筆させていただいた。みなさんにもそれぞれのフィールドと視点でタックルの可能性にについて追求していただきたい。
エギングタックル ライン・リーダー・餌木5

シビアさが増した近年のエギングだからこその楽しみも出てきたと感じている。今回紹介したタックルの使い分けや追求などもその1つだ。

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【安田栄治・プロフィール】

エギングをはじめ、メバルゲームやアジング、磯や河口でのヒラスズキ狙いなど、多彩なジャンルに精通するオールラウンダー。独自の視点でターゲットやフィールドと向き合い、日々アングラーとしての資質の向上に努めている。

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