【UNCHAIN SKILL act.3】「同一釣り場・定位置における定点観測的釣行」のススメ
実践方法2(中級編)
ベーシックなスキルを身につけた中級者にとって、定点観測スタイルはルーティンワーク的で退屈な釣行となるかもしれない。確かに安易に釣果情報に頼るのではなく、シーズナルパターンや諸条件を見極めた上で活性の高いイカを捜すラン&ガンスタイルは王道であるが、それ相応のスキルを有していないと単に活性の高いイカをイージーに釣っているに過ぎず、エギングの楽しみの一部しか味わえない。
それに対して定点観測スタイルは活性の高いアオリイカを釣ることのみならず、状況に応じて「既存の低活性なアオリイカをいかに釣るか?」という部分に特化したスタイルだ。状況に即したベストなアプローチを意識せずとも選択して実行できるのが本物のエキスパートであり、そこに至るには膨大な経験値を要する。それを効率よく得られるのが定点観測だと考えている。
エギングは感覚的要素の高い釣りだ。だからこそ1つのタックル、1つの餌木をとことん使い込んで感覚的要素を自分の中に取り込み、すべてのシチュエーションに反映させることがセオリーとされてきた。私自身もそれは正解だと思うが、それだけでは不十分だとも感じている。ベテランエギンガーなら理解できると思うが、黎明期は道具の選択肢もなかった。エギングロッドもなく、トラウトやシーバスロッド、磯竿を流用していた。餌木も種類が少なく、ラインも細号柄のPEは非常に高価で店頭で見かけることも少なかった。太号柄のPEやフロロ・ナイロンラインなどを使用していた。
そういったことを踏まえた上でいえるのは、技術的な進化はあっても釣獲能力に大きな差はないということ。それぞれに特化した一長一短があるからだ。近年はエギング関連の道具が増えて選択の幅が広がったことにより、フィールドや状況、アプローチスタイルなどにより特化したセレクトが可能となった。この流れを取り込まない手はない。当然だが選択肢は増えても感覚的な要素を取り込む過程は必須。より複雑になるので、条件の幅を狭めるための定点観測はここでも有効だ。
縦と横の比較
近年、スポーツの世界ではアスリートが競技後のインタビューで勝っても負けても「楽しめました!!」といっているシーンをよく見にする。古いスポーツ選手からすれば「甘い、ヌルい」と感じるかもしれない。しかし、彼らはすべてを犠牲にして長い時間を費やした競技人生の集大成として、勝利するために「美しい〇〇・究極の〇〇・至高の〇〇(〇〇は競技名)を目指す!!」という。対戦者との結果がすべての競技スポーツでありながら、他競技者との比較をする横型の思考ではなく、自身の理想とする姿と比較する縦型の思考へ転換したのだ。
従来の横型の思考では、自身の能力に不足を感じると著しい集中力の低下を招く。最高のパフォーマンスを発揮するためには、極限の集中状態であるゾーンに入ることが必須であり、そのための進化である。趣味性が強い釣りではあるが、これと同様のことがいえるのではないだろうか?
今回紹介した定点観測スタイルは他釣場や他者との横型の比較ではなく、同一釣り場における時系列や状況の変化、自身の釣りを模索する縦型の比較スタイルでもある。目先の釣果のみを求めるだけのではなく、各々の状況を楽しむスタイルであり、釣果が得られなくてもモチベーションが低下しにくい。結果としてゾーンへの入り口となる、高い集中力が発揮されるフロー状態への近道となる。
以上、自身の釣りに刺激を与えてさらなる高みを目指すためにも、今回紹介した定点観測スタイルをぜひ実践していただきたい。
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