釣果を左右する風の影響について|知っていたからって釣れるわけじゃないけれど…《アーカイブ from 2014》
釣りを楽しむうえでも重要なファクターとなる風は、その恩恵を世界中にいき渡らしている。ここで改めて風の影響について考えてみると…
文:宇井晋介
※このエッセイはSWマガジン2014年3月号に掲載されたものです。
地球上から風がなくなれば波と水蒸気が…
「風が吹けば桶屋が儲かる」とは昔からのことわざ。風と桶屋はなんの繋がりもないけれど、世の中は巡り巡って繋がってるってことらしい。ただ、アングラーにとって風はあまりいいイメージがないシロモノである。特に寒い時期に釣り場で冷たい風が吹き始めると、思わず天を呪いたくなる。
船でも同様だ。ドテラ流しでゆっくりとジギングやティップランを楽しんでいたら、風が吹き出して諦めたという方も少なくないだろう。そんな釣り人の嫌われ者の風であるが、自然に不要なものはないといわれる。この嫌われ者の風もなければ大いに困るのである。
そもそもこの地球上から風がなくなれば海はどうなるか。一番大きい問題は波がなくなるということではなく、実は海からの水蒸気がなくなるということらしい。なぜ風が吹かなくなると蒸発しなくなるのか。それは洗濯物のことを考えれば分かる。
天気のわるい日に洗濯物を部屋干しにすることがある。すると洗濯物はいつまでも乾かない。これは部屋の中には風がないので洗濯物の表面周辺の空気の湿度が限りなく高くなり、蒸発が起こらなくなるからである。これに対して風が吹けば乾くのが早いのはみなさんご存知の通り。風が湿度の高い空気を入れかえるので次の蒸発が続いて起こり、洗濯物が乾くのである。
これと同じことが海でも起こっている。風が吹かなくなると海の表面付近で水蒸気が溜まり、それ以上の蒸発がなくなる。いや、正しくは蒸発がなくなるのではなく、極端に少なくなるのである。もしそうなれば蒸発した水が空にのぼって雲になることがなくなり、当然世界中に雨が降らなくなる。
雨が降らなくなれば水が不足する。水が不足するのでみんなは水を貯めるものを買いあさる。桶屋が儲かる。なるほど…いやいや話は桶屋ではなく、地球全体の話。つまり風が吹かなくなれば水不足になり、陸地にも人が住めなくなるということなのだ。海は世界の気候全体を支配しているもの、そして風はその恩恵を世界中にいき渡らしているものといえる。
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