磯のヒラスズキゲーム・安全とマナーについて
取り込みまでのストーリーを思い描くことが大切
解説:加地武郎
私の地元、徳島県南部では磯場、ゴロタ場、サーフといったさまざまなフィールドでヒラスズキを狙うことができる。そして、最近のシーバスブーム、そしてエギングやメバルゲームの人気もあってかヒラスズキにもチャレンジするアングラーが増えているように思う。それはいいのだが、ヒラスズキの釣りを安易に考えているような人が目につくのが…。
一般的に荒れた海況がよいとされるヒラスズキ狙いでは自然に対する知識のなさが命取りとなる。十分に予備知識を蓄えてから釣行したい。そのうえで単独釣行はもちろん控え、できれば経験者と同行するようにしたい。
また、マナー面でも問題のあるアングラーが多いのも困る。たとえば、狙いのポイントに到着して車内で夜明けを待っていると、後からきたアングラーが何の挨拶もなくさっさと現場に入ってしまったり…。こんなことをすればトラブルはまぬがれない。
先行者がいれば必ずひと声かけるべきだ。もし自分が待機している立場だったらどうだろう? 釣りたい気持ちはわかるが、まずはアングラーである前に人間として節度を持って釣りをしたい。
ランディングが最も危険。取れない場所では投げない
次に安全面であるが、波が重要なファクターとなる釣りとはいえ、それは安全に釣れる範囲での話である。現場を見て判断を誤ったと思ったら、勇気ある決断を持って釣りを断念してほしい。無理は禁物だ。
どれぐらいの波で、どれぐらいの風、どれぐらいの潮位なら、どのポイントがよいのか? そういったことは通わないとわからないことも多いもの。慣れないうちは狙いの場所で竿を出せずに帰ることも覚悟しておくことである。
場所にもよるので一概にはいえないが、私が通うエリアのサーフ回りのナイトゲームならベタナギから1.5㍍までの波高がベストだ。サーフでも沖に根などのストラクチャーがあるポイントでは少々荒れた方がよいが、フラットで変化に乏しいところでの一番のヒットポイントは足もとのカケアガリである。荒れてしまうとカケアガリ付近は底荒れし、砂や石などが波に舞うので悪条件となってしまう。
磯場やゴロタ場では2~3㍍ぐらいの波がベスト。それ以上に波があった方がよいポイントもあるが、全体的に好条件といえるのは3㍍までだろう。そんな波で断続的にサラシができるのが理想的だ。特に深いレンジまで乳白色のサラシが入っているところが狙い目になる。もちろん切れてしまうようなサラシでも魚は出るが、払い出しや潮の流れがきいていることが条件となる。
いずれにせよ、ポイントを見定めたらしばらく状況を観察する。どこまで波がきているのか? どこでランディングするのが安全か? など、完結までのストーリーを現場で思い描いてみることが安全につながるし、ヒットさせた魚をあわてずにランディングするためのコツといえる。
特にランディング時は非常に危険だ。決して無理をしてはいけない。私は友人を磯で亡くしている。彼はエキスパートクラスの磯ヒラ師だったし、慎重な人間だった。それだけにランディングで無理をしてしまったのが事故の原因ではないかと考えている。
ヒラスズキを目の当たりにすると、どうしても取りたいという気持ちになるのは仕方ないが、絶対にランディングで無理をしてはいけない。理想は仲間にアシストしてもらうことである。それが無理ならあきらめる勇気を持っていただきたい。また、そんな悔しい目にあわないためにも事前に状況を見てランディングまでの組み立てを考えておくことが重要なのだ。
逆にいえば、掛けても取り込めないと思ったらルアーを投げないこと。そんな場所で釣るのが最も危ない。
足もとはウェーディングシューズで…
装備に関しては、サーフ回りならブーツフットタイプのウェダーでいいと思うが、磯場やゴロタ場では極力ストッキングタイプのウエダーを着用し、スパイクの入ったウェーディングシューズで足もとをかためてほしい。磯では想像以上に足もとが滑りやすいことがあるし、移動中にも何かと危険がともなう。足もとがしっかりと固定されるストッキングウェダーにスパイクつきのウェーディングシューズの機動力が大きなアドバンテージとなるはずだ。
なお、ライフジャケットに関しては必ずフローティングベストを着用すべきである。自動膨張式の救命具は荒れた海では機能しない恐れがあるし、磯場での転倒時に体を守ってくれない。いろいろな角度から安全に留意し、なおかつ基本的なマナーを守り、いつまでもヒラスズキ釣りを楽しみたいものだ。
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