磯のヒラスズキゲーム・安全とマナーについて
携帯電話、呼び子は必需品。海に落ちたら救助を待つ
解説:松本真吾
荒磯の暴れん坊と異名を持つほど荒れ模様の条件を好むヒラスズキが相手のゲームとはいえ、私たちヒラアングラーにとって波は大敵です。波が高ければ高いほど危険度が高まります。
私はヒラを狙うようになって25年ほどになりますが、その間に釣り場で「ヒヤリ」を経験したケースは数知れません。海に流されて死ぬかと思ったり、病院で治療を受けるはめになったこともあります。
結局、ヒラが釣りたい一心で回りの状況がまったく見えていなかった。それらの失敗の原因はすべてがそれにつきます。今はそんな事故の体験を後進のアングラーに伝えていくのが使命だと考え、みなさんへアドバイスさせていただきます。
不安があればあきらめるが、それでも落水はあるから…
荒磯のポイントで最初にすべきことは、十分に状況を観察し、打ち寄せる波の中でセット(最も大きな波)を基準に安全な足場の位置取りをすること。同時にヒラがヒットすればどこへどう誘導してランディングするかも考えておき、安全でゆとりのあるファイトができるように努めます。
ただし、低気圧が接近してきたり、さらに強風になる予報が出ている状況ではセットの規模に定まりがなくて危険度は高まる一方です。安全な釣りがシミュレートできない条件なら即座にあきらめて撤退します。
前線の通過後など波がおさまる要素があれば割と安全な状況といえますが、それでも本当の意味でヒラスズキと長く付き合っていくのなら、いくら他に好条件が揃っていても、どこかに不安や危険が感じられるのであれば潔くあきらめる勇気を持って下さい。釣りで命の危機を招くようなことは絶対にあってはならないのです。
また、慎重に行動していても落水するケースがあります。そんなときはあわてずに波打ち際から離れ、少し沖めから安全な場所を確認し、そちらに泳いで水から上がります。落ちた場所に留まろうとすると、波で磯にたたきつけられる恐れがあります。その場で何とかしようとしないことです。
釣り場では防水の携帯電話を必ず身につけておき、上がれないときに救助を要請できるようにすることも大切です。また、周囲に仲間や他の釣り師がいれば応援を頼む方がいいでしょう。そのために急を伝えられる呼び子(笛)をベストにつけておくことです。
誰かのアシストが期待できるならライフベストを信じて救助を待った方がいいでしょう。そのときにウェダーを着用していると空気が溜まって下半身が浮くような状態になることがあります。その場合はナイフでウエダーを破って空気を抜きましょう。私は泳ぎに自信がありましたが、磯場の波の中ではどうにもなりません。まして足の自由がきかないと…。
いうまでもないことですが、ライフベストは常に着用しておくのがアングラーの義務です。帽子、グローブも体を保護するために必要です。
釣り場でのマナーについて
釣り人口が増えればアングラー間のトラブルの可能性も高まりますが、それはちょっとしたマナーに関する知識で改善できます。
たとえば、ポイントと駐車スペースが隣接するところがあります。そこへ夜間に進入する際は車のライトをスモールまたは消灯とするのが基本。そして駐車場には徐行で進入します。こんな心がけ1つで先行者は好印象を持ってくれ、その後のポイントへの進入時、こちらからひと声かければ気持ちよく話ができると思います。
また、並んでキャストするのなら自分の入りたい側を言葉にして伝え「こちらでキャストしても構いませんか?」と、了解を得てから釣るようにします。
夜のポイントではランディング以外で海面にライトを向けないのもマナーです。ルアー交換などは後ろ向きでポイントから少し離れて行ないます。
…と、万事においてそういった心配りができるアングラーばかりならトラブルなど起こりません。それぞれに楽しみ方のスタイルに違いはあるでしょうが、フィールドで他人に迷惑をかける性質のわがまま、気ままは許されません。もちろん釣り場にゴミを放置するなどは論外です。いつも楽しく安全に釣れるよう、考えて海辺に立ちたいものです。
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