魚が釣れない理由とされる「潮がわるい」とは?|知っていたからって釣れるわけじゃないけれど…《アーカイブ from 2013》 | SWマガジンweb | 海のルアーマンのための総合情報メディア - Part 2

魚が釣れない理由とされる「潮がわるい」とは?|知っていたからって釣れるわけじゃないけれど…《アーカイブ from 2013》

「潮」とは渾然一体となった環境すべて

ここまでお話しすればもうお分かりだと思うが、最後にあげた潮の中身、すなわち潮の濁りだとか水温だとか塩分濃度だとかは、人為的なものを除いてその多くは海水の流れの有無や強弱が生み出すものである。たとえば水の動きによって海底がかき混ぜられて濁ったり、逆に沖合からきれいな水が流れ込んできて潮が澄んだりする。冷たい空気で冷やされた沿岸流がくれば水温は低下し、暖かい黒潮が差し込んでくれば水温は上昇する。暖かい潮と冷たい潮が接すればそこにプランクトンが発生してそこにこれを食べる小魚が集まり、それが大きな魚を呼ぶ。

そうしたことをいろいろと考えると「潮」とは流れや物理的性質など、海の中の渾然一体となった環境すべてを差す言葉である。また「潮」とは魚の住環境そのものなのだということが分かる。住環境がわるければ魚は餌を食べるどころではなく、当然釣れる確率は落ちる。このためアングラーが釣れない理由を潮のせいにするのは実に的を射た表現であるといえる。

釣りエッセイ・潮流・海流5
潮とは魚の住環境そのもの。それがわるければ魚は餌を食べるどころではなくなるから…。

ところで、海水の動きということでいえば、今、地球上の海で大変な変化が起こっている。それは海には海流よりもさらに大きな流れがあり、それが近年変化してきているということが最近の研究で分かってきたからである。

世界の海を巡るコンベヤーベルトと呼ばれる巨大な深層海流がある。その動きは私たちがいわゆる「潮」として理解しているような速い流れではない。速さは1秒間に10㌢で、地球を1周するのに2000年もかかる計算である。この巨大な流れが北極から赤道、南極を股にかけて深海から表層まで地球の熱循環を行なっている。

ところが、このコンベヤーベルトが地球温暖化で止まりつつあるというのである。これがもし止まると地球全体の熱が循環しなくなり、やがては地球に氷河期がくるといわれる。「潮がわるい」ではどうやら済まないお話である。


【宇井晋介・プロフィール】

幼いころから南紀の海と釣りに親しみ、北里大学水産学部水産増殖学科を卒業後、株式会社串本海中公園センターに入社。同公園の館長を務めた海と魚のエキスパート。現在は串本町観光協会の事務局長としてその手腕を振るっている。また、多くの激務をかかえながらもSWゲームのパイオニアとして「釣り竿という道具を使って自然に溶け込む」というスタンスで磯のヒラスズキ狙いやマイボートでのおかず釣りを楽しんでいる。

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