自然界では大きなデメリットを背負うアルビノは魚にも…|知っていたからって釣れるわけじゃないけれど…《アーカイブ from 2012》
アルビノと呼ばれる白い生き物。自然の中では極めて数が少なく、生存競争が激しい海中で生き抜いていくのははなはだ難しく…
文:宇井晋介
※このエッセイはSWマガジン2012年1月号に掲載されたものです。
アルビノと呼ばれる生き物
「さよなら三角 またきて四角 四角は豆腐…」という歌がある。この歌、続いて「豆腐は白い 白いはウサギ ウサギははねる」となるのだが、今回のテーマは「白」である。
この歌でウサギは白いとなっているが、ご存知のようにウサギは白いものばかりではない。アマミノクロウサギのように名前からして白くないことを主張しているものもいるし、ピーターラビットに出てくるウサギだってほとんど白くない。実際には野生のウサギ、すなわち野ウサギはちっとも白くないのだ。
では、白いウサギはどうしてできたのか。実はこの白いウサギ、世界中どこにでもいるのかと思いきやそうでもないらしい。冬の遊びに雪ウサギというのがあり、白い雪をかためて2枚のナンテンの葉を耳にし、さらに赤いナンテンの実を目としてつける飾りがある。
白い毛に赤い目というのが日本人の抱くウサギのイメージであり、はじめの歌もそこから出てきたものなのかどうかは分からないが、世界を見回すとウサギはちっとも白くない。ものの本によると、日本中にいるこの白い毛に赤目というウサギは日本で作り出された品種で「ジャパニーズホワイト」とい名前まであるらしい。「ウサギは白い」という認識を持っているのは、どうやら日本人だけらしいのだ。
こうした白い生き物はアルビノと呼ばれる。私たちが日光を浴びると皮膚のメラニン色素が増えて日焼けするが、この色素が生まれつき欠けているものがアルビノである。アルビノは動物にも植物にもあるが、動物では体の色が白いのと同時に、目が赤いことが多い。それは目の中に黒い色素がないことから奥の血管が透けて見えるからである。白いウサギの目が赤いのはアルビノだからなのである。
遺伝子のいたずら
白い動物はウサギだけでなくさまざまある。中でも有名なのがホワイトライオン(歯磨きじゃありませんよ)。あの有名なライオン‼
ジャングル大帝は親子揃って真っ白だった。しかし、よくよく思い出せばレオの目は赤くなかった。ということはかの巨匠、手塚治虫大先生も筆の誤りか? 残念ながらそうではない。実物を見た方はわかっていると思うが、ホワイトライオンの目は黒。ホワイトライオンは毛は白いが、アルビノではないのである。彼らは(ただの)毛の白いライオンなのである。
話はそれていくが、このホワイトライオンの白色は、ある学説によると大昔の氷河期のころにいた白いライオンの形質だという。北極に住んでいるホッキョクグマは白いクマであるが、これは白い雪と氷の世界で目立たずに敵から身を守ったり狩りをするためである。ところが、ホッキョクグマのルーツであるヒグマは黒い。それが環境への適応によって白くなったのである。今でもホッキョクギツネやキタキツネ、ライチョウなどは冬になると夏毛から白い冬毛にかわる。
これと同じように氷河期に環境に適応して出現した白いライオンが、アフリカのサバンナを舞台に生きるようになった現在においても、遺伝子のいたずらで先祖返りのように白いライオンを生み出すのではないかといわれているのだ。氷河の中を歩くライオンがいたとは想像すらしにくいが、自然は不可思議である。
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