釣りを一生の遊びにするために…|【ほぼ月刊 武田 栄!vol.8】 | SWマガジンweb | 海のルアーマンのための総合情報メディア - Part 2

釣りを一生の遊びにするために…|【ほぼ月刊  武田  栄!vol.8】

海のルアー釣りの現状

釣り具屋さんや、メーカーさんと話をしていると、「今はとにかく食べておいしい魚が人気ですから!!」と話してくださいます。これが海のルアー市場の現状。もちろん、釣りはよく釣れた方が楽しいし、釣った魚をおいしくいただく方がいいに決まっている、という考え方もよく分かります。僕自身、海のルアー釣りを始めて数年は釣った魚をキープして持ち帰ることも多かったのですが、そもそもの性格と経験を重ねる中で、ここ二十数年ほどは魚を持ち帰るための釣りはしていません。

ただ、当然釣れた方が楽しいので僕(ルアーマン・武田 栄)の釣りの中にも二面性があります。「めちゃくちゃ釣りまくってしまいがちな釣り」「1匹釣れるかどうか分からない釣り」という、価値観の違う両者が共存しているのです。

たとえば、アジングはその日のパターンが分かって納得するのに、同じポイント、同じ釣り方で10匹釣ったらパターン成立!!  すべてリリースし、僕の中ではもう爆釣です(もしかしたら格好よく聞こえるかもしれないけれど、アジにせよ、メバルにせよ、ブームになる前は50匹とか100匹とか釣りまくっていたという事実もあります。だから「今はこうなってます!!」というのが正しいですね)。

一方「今日は1匹釣れるかな?」という釣りは、冬のマルスズキ釣りであったり、厳寒期の磯のヒラスズキ釣りであったりします。これがまた、いくら経験を重ねても釣れればうれしいし、釣れなかったらツラい…(笑)。

その中で「今のスタイルは?」と聞かれれば、「とりあえず、今日出会う魚の顔を見に行く(一期一会!!…笑)ということになるでしょうか。なので釣りはその日の状況を確認できればOK。そんな思考だから、僕にとって釣果の多寡は、気持ちよさとはそれほど比例しないのです。

そして大人気のアジはまさに「釣り過ぎ注意」のターゲットです。それぞれの事情があるのでたくさん持ち帰ることに対して何ら意見はありませんが、宣伝絡みの釣果自慢、大量釣果話やその画像を見るとちょっと泣けてきます。ビギナーのみなさんがたくさん釣れてうれしいと思う気持ちは大いに分かるのでOK。でも、そのスタイルをずっと続けるのはうれしさも半減するだろうし、いかがなものかと心配になってしまいます(笑)。

武田栄 シーバス・アジング4
人気のアジングですが、自分の中でのルールや目的をしっかりと設けて気持ちのよい釣りを楽しんで下さい。

スズキ釣りを例にあげると、今や10人にシーバスゲームについて聞くと、それぞれの釣り方やスタイルもあり、スズキ(シーバス)釣りそのものに対する考え方が違います。ちなみに僕の場合、デイゲームはあまりしません。港湾部の釣りも主に夜で、春と秋~冬の雨後にユルユルと少しやるだけ(ここにきてそのパターンがまたおもしろくなっています!!)。僕にとってのスズキ釣りはしっかりとした装備と道具立てで挑み、夏の増水時や夜の河川、冬の荒れるサーフなどでの釣りがメインとなります。もちろん、僕は自称・正統派スズキ釣り師です!!  

そして、ヒラスズキはほぼ日中の磯でのゲームのみ。よほどのよい条件に恵まれるか、友人に誘われたとき以外は川や夜のヒラスズキはあまり狙いません。そんなわけで僕の釣り以外のパターンをメインに楽しまれている方とは、必然的に話せることも少なくなってしまいます。

これはよい、わるいの話ではありません。拠点とするエリアの問題が大きく、あとは長年に渡って培ってきた好みであるから仕方のないこと。こちらもそれぞれのスタイルに対して特に意見はないのですが、ひとつ残念なことは「シーバス釣りってこうですよね?」と簡単に終わらせてしまっている人も多いということ(ヒラスズキも同じ)。これは少し悲しく思います。だって僕は35年ほどかわらずにスズキ釣りに夢中なので…(笑)。

ことスズキ釣りについては「初めて買ってすぐに飽きてしまう外車」のようではいけません。もっと本質に迫ることを願います。仮に10年ほど続けていても、僕からすると本質に気づいていなさそうな人もたくさんいるように見えます。「スズキ釣りは一度好きになるとやめることなんてないのになぁ…」と思うのです。

そんなわけで、思い込みのシーバス釣りや常に危険と隣り合わせという状況下のヒラスズキ釣りだけを見て判断するのは危険だと感じています。安全に正しく、趣味よく自分の釣りを楽しむ…。こんな時代であっても穏やかに、本当によく釣るエキスパートは僕の回りにもたくさん実在します。

武田栄 シーバス・アジング5
偏ったものの見方をすると、可能性や楽しみの幅も狭めてしまいます。本質を見極めようとする姿勢が釣りをさらにおもしろくするから…。

今だからこそプロショップが必要?

仕事柄、僕は釣り具屋さんの店内にいることも多く、みなさんのお買い物のお手伝いをさせていただくこともあれば、店内の様子をよく観察させていただいたりもします。人気の釣り具店さんはとにかく売り場面積が広く、品揃えも豊富なので買い物には時間がかかるもの。ましてや、なにぶん供給過多なアイテムがこれでもかと並んでいるのでその中から選ぶとなると、これまた時間がかかります。

もちろん、買い物に時間をかけるのはわるいことではありませんが、意味のある時間でなければいけません。そこに意味がなければそれこそ時間の無駄。で、ビギナーと思しき大半のお客さんの手には必ずといってよいほど画面が開いた状態のスマホが。これが今どきの「釣り具屋さんあるある」です。

信頼できるのは自分が信じたインターネットの情報と、自分よりもちょっとだけ釣りのことを知っている友人・知人の意見だけ?  初心者にとってこれしか方法がないことは、この時代にあってどうしようもないことだとも思えてしまいますが…。今や釣りのジャンルも多く、ある意味で仕方がないとも思うけれど、もう少しスムーズにというか、うまく順を追って楽しむ方法はないものかと考えてしまいます。

一方で釣りをしない釣り具店のスタッフさんやメーカー担当者さんが多いことも事実。ただ、とりあえず釣りをかじっていたり、知識があるからよいというわけではなく、「中途半端な知識」こそが最もヤバいこともあります。だから一概にはいえませんが、それでもできることならその地域に根差した時期の釣りぐらいは詳しく知っておいてほしいと願うのですが…。

もちろん、僕の周囲にも「いい釣り具店スタッフさん」はたくさんいます。そんなスタッフさんと知り合うことが実はとても重要だったりもするのです。

とにかく釣りについて相談できる人や場所は絶対に必要。僕はGo-Phish(ゴーフィッシュ)という多少マニアックなブランドを展開していますが、一部の熱心なビギナーの方を含む人たちは実店舗でないにもかかわらず、僕がいるかいないかも分からない事務所へ直接質問にきてくれたりします。また、その後も足繁く通ってくれます。そして、僕の事務所にきてくれる人に限らず、このような姿勢で釣りを楽しむ人たちが、その後の自分の釣りをおもしろくできているのだと感じています。

武田栄 シーバス・アジング6
事務所に足を運んでくれるみなさん。釣りについて相談できる人や場所を積極的に捜すその姿勢から、僕自身も大いに刺激を受けさせてもらっています。

ここで本当のことをいっておきます!! 釣りは厳しいものです。釣る人と釣れない人がいること、いつでもどこでも誰でも買えるものは、そうたいしたものではないということ。そして、他人から聞いた情報などは自分にとってほぼほぼあてにはならないということ。結局、苦労しながら培ったマイパターンと、本当に信頼できる仲間うちの情報がすべてなのです。そんなわけで初心者のみなさんはくれぐれも安易な情報などに振り回されないようご注意下さい(笑)。

  • 信頼できる仲間の存在が釣りをさらにおもしろくしてくれるのは確かです。


人から直接聞いたり、教えてもらうことは初心者ほど大切です。結果、無駄な買い物になってしまうこともよい経験なのでOK(笑)。だからこそ一見便利な時代に思えて、そうでもない部分もある現在、足繁く釣り具店に通ったり、小さな釣りの集まりやイベントなどに参加することがとても重要だと考えています。釣りたければ真実を知ることです。そういった意味でも「往年のプロショップ」的な役割は今も必要ですし、できることなら釣り具屋さんでそのような人間関係を構築したいものです。それが叶わないなら、いろんな意見交換をできたり、しっかりとしたエキスパート(自称・エキスパートではいけません!!)の話を聞ける場が必要かと思います。

今や関西では釣りのプロショップが限りなく少なくなってしまいました(もともと少なかったけど…笑)。その昔、プロショップは釣り具販売店としてだけでなく、釣り人にとってよい社交場であったことは間違いありません。さまざまな釣り人と出会い、そこで学んで知り、そしてマイスタイルを構築していく…。みなさんにとって釣りがぜひ一生の遊びとなってくれることを願います!!

1日だけの「プロショップ日ノ岬」オープン!!

武田栄 シーバス・アジング7
2019年10月19~20日、釣り人同士のふれあい会&ゴミ拾いイベント『プロショップ・日ノ岬』を開催する予定です。興味のある方はぜひご参加下さい。僕自身も新たな出会いを楽しみにしています!!

【武田 栄・プロフィール】

先鋭のフィッシングギヤブランド、Go-Phish(ゴーフィッシュ)主宰。釣り研究家。メバルやアジ狙いのライトゲームからチヌ・シーバス・磯のヒラスズキまでさまざまな釣りに精通。「おもしろくなければ意味がない!!」をモットーに「タケダ式」と名づけた独創的かつ効率的な釣り方の研究に情熱を燃やしている。

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