エギングの新たなアプローチ「強波動アピール」|【UNCHAIN SKILL act.9】
強波動アピールとは?
実のところ、強波動アピールはすでに多くのエギンガーが体験しているはずだ。近代的なエギング創世記において餌木は誰もが容易にダートさせられる方向で進化してきた。そんな中、他とは異なる餌木が登場した。シマノのアオリズムやヤマシタのエギ王Qだ。餌木をより大きくをダートさせるために、入力に対して水を掴んでいったん堪えてから大きくダートする。結果として、ロングダートによる視覚的アピールと水押しの強い強波動アピールを両立したインパクトの強いアプローチが可能となった。
これは大場所や活性の高い回遊パターンのみならず、抜群の安定性により強風やウネリなどのラフコンディション下での強さを発揮。さらに低活性時や気難しい大型個体にも威力を発揮して一躍餌木の1つの潮流となった。ガンクラフトの餌木邪やカルティバのドロー4など、現在も綿々と続く人気のカテゴリーとなっている。
しかし、強波動はダートに付随する副次的な部分であり、あまり注目されてこなかった。また、ダートを伴った強波動であり、ダートがNGアクションになっているようなネガティブな状況では効果がなかった。
私が強波動を意識するきっかけになったのは10年以上前、6月の春イカ最盛期に台風がきたときのことであった。木曽三川、伊勢湾を有する志摩エリアは全般にシャローが多いこともあり、荒れにも水潮にも弱い。日を追うごとに増す水潮とやがては赤潮になることを想定し、最後の春を楽しむために台風一過後すぐに釣行した。
外海のシャローは壊滅的で、港内の船道のディープのボトムに活路を見い出した。ところが、横風が強くて釣りにくい状況であった。風かみにキャストするも、跳ね上げやショートジャークではラインが風に取られ、ラインメンディングさえおぼつかない。そこでディープタイプの餌木に変更し、激スロー~ドリフトでボトムを攻めたが反応は得られなかった。
そんなとき、本当にたまたま強烈なラインメンディングから糸フケを叩きつけた直後、餌木がひったくられた。そして、周囲が沈黙する中で怒涛の7連発。この日は所用のために16時に納竿したが、夕まづめまでやっていたらいったいどうなっていたのか? それほど効果絶大だったのだが、何が何やら根拠は分からなかった。
後日、検証のために釣行。先日と同様に激しいシャクリを入れると同時に、ラインを海面に激しく叩きつけた。視覚的には餌木が幾分首を振るだけで動かない。入力に対して水を掴んで堪えて踏ん張り、ダートに転じようとした瞬間にテンションが抜けるので当然だ。
ところが、ベイトは広範囲に逃げ惑った。このことから水中における振動や波動の伝達性の高さがうかがい知れた。さらに検証を続けることで前回の跳ね上げやダートでは制御不能で、タダ巻きではアピール不足の状況を切り拓く有効なアピールの1つであるとの確信に至った。
この事実を世の中に問う意味もあり、当時SWマガジン誌に執筆を試みたが、反応はイマイチであった。当時は「エギングはダートしてナンボ」という時代だったし、今では常識となっているラトル内臓の餌木も存在しなかったので、仕方のないことだろう。
イカに側線がないのは確かだが、側線相似器官を持っていることから、強波動は有効なアピールの1つであると確信している。また、ほとんど知られていないアプローチなのでスレも進行しにくい。そんなわけでこれまでシークレットアプローチとして1人で楽しんできた。ただ、近年はヤマシタからエギ王Kがリリースされた。これはダート性能をスポイルしてまで安定性を求めた餌木だが、より純粋に強い波動を抽出しやすくなっている。また、昨秋リリースされたダイワ・エメラルダス ステイ(ネーミングも秀逸!!)は、より波動を意識した設計となっており、波動元年ともいえる機運に改めて世に問いたいという思いで今回このテーマを取り上げたしだいである。
強波動アピールの実践方法
強波動アプローチは大きく分けて「①ショート」「②ロング」の2つに強弱などのアレンジを加え、フィールドや状況に即したアプローチを行なう。イメージとしては①が青物のポッパーゲームにおける移動距離の少ない首振りアクションでカポカポッと水飛沫を上げるショートポッピング。②は激しいスプラッシュと全身に泡をまとうロングポッピング。これらを水中で行なってアピールするのがエギングの強波動アプローチだ。
①ショート
ラインがやや弛んだ状態で、リールのハンドルを持つ手でロッドのバットエンドを持って押し出し、リールシートを持つ手をテコの応用で引いて餌木を引き寄せて鋭くシャクる。そして、ラインが張って入力された力が餌木に伝わった瞬間に剣道の小手の要領で素早く振りおろす。
このとき、餌木は入力された力を堪えて跳ね上げやダートなどに移行する瞬間にテンションが抜けるので大きく動くことはなく、純粋に水押しが強くて短い波動を引き出すことができる。前述した横からの強風下における跳ね上げやダートではラインの制御が困難で、タダ巻きではアピール不足の場面や表層~ボトムのオープンエリアはもちろん、藻場のエッジやストラクチャー回りで低活性の個体や気難しいビッグワンに移動距離の少ないアプローチは有効だ。
また、移動距離が大きいと藻掛かりが連発するということを踏まえると、ホンダワラのジャングル攻略にも必須のアプローチである。状況に応じて単発または複数回、強弱を工夫するなど、アレンジを加えるようにしたい。
②ロング
ラインが緩んだ状態でリールのハンドルを叩き、ロッドのバットエンドに手を添えてラインが張ったらバットエンドを持つ手を押し出す。そして、リールシートを持つ手をテコの応用で引いて餌木を引き寄せる。このとき、テンションを張った状態で餌木を引き寄せるのでダートせず、大きく跳ね上がることもない。強い波動を発しながら手前に移動する。
表~宙層、オープンエリアのボトムが主戦場になるが、ダートや跳ね上げアクションにスレているアオリイカに対して有効で、手前に移動するので見逃すことも少ない。スピードの変化やストップを織り交ぜてヒットに持ち込みたい。
③フォロー
今回紹介した①ショートと②ロングの2つの波動アプローチは、アオリイカに対するアピールの部分、つまり餌木の存在を知らせ、興味を持たせて捕食スイッチを入れることが目的となる。したがって従来と同様にフォローとして食わせの間が不可欠であり、状況に応じてステイや平行移動、各種フォール、ドリフト、ボトムステイでバイトに持ち込む。
最強アプローチとまではいわないものの目新しいアピールであり、これまで攻めあぐねることの多かった横風やストラクチャー回り、低活性の個体を攻略できるアプローチとなる。諦めて移動する前にぜひ試していただきたい。
【安田栄治・プロフィール】
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