海の行く末、3番めのパターンは…|【知っていたからって釣れるわけじゃないけれど… その2】

釣り 温暖化の影響1

昨年春先の異常低水温により田辺湾のサンゴがほぼ死滅。現在の海はどのような状況になっているのか? また、未来について釣り人の目線で考えると…

文:宇井晋介

サンゴの死滅

和歌山県田辺湾に生息していたサンゴがほぼ死滅したという。最近は沖縄辺野古の米軍基地埋め立てによるサンゴ礁の埋め立てが毎日のようにニュースで取り上げられていたが、こちらの原因は埋め立てでもなく海洋汚染でもない。原因は昨年春先の異常低水温である。場所によっては10度前後にもなった田辺・白浜あたりの水温は暖かい海を好むサンゴたちにとって決定的なダメージだったようだ。

サンゴが暖かい海の生きものだということは誰もが知っている。フィリピンやモルジブあたりに行くと、見渡す限りのサンゴ礁が海中に広がっている。一方、北海道や東北の海ではサンゴは見られない。紀伊半島の先端にある串本では約120種のサンゴが見られるが、これが沖縄に行くと350種、一方、日本海や東北地方なりに行くとわずか数種類となる。

サンゴは暖かい海で繁殖して黒潮などの北へ向かう海流に子孫を乗せて北の海に子孫を広げようと営々と努力している。もともと大規模なサンゴ群落の世界の最北は串本だといわれてきた。それがどうして田辺や白浜にたくさんあったのか。それは地球が暖かくなることによってサンゴの最前線(最北限)がしばらく北上していたからである。田辺や白浜の海は南から上がってくる暖かい流れと北から降りてくる、すなわち紀伊水道の方から降りてくる冷たい海流がぶつかるところ。ここのサンゴが増えてきていたということは、このあたりがここしばらくとても暖かい海になっていたからである。

田辺・白浜の海はあちこちよく潜ったが、20年ほど前はホンダワラのような大型海藻がワサワサ生えていたところが、いつの間にかサンゴの生い茂る岩場になっていた場所が少なくない。有名な白良浜の近くの岩場でも、海藻の間をアイゴやブダイが泳ぐという光景にかわり、サンゴの枝の間にチョウチョウウオやスズメダイなどのカラフルな魚たちが群泳するという光景が珍しくなかった。しかし、最近はカラフルな魚たちはすっかり少なくなった。これはサンゴを生活の場にする魚たちが、サンゴが死ぬことによって暮らしていける場所ではなくなったからである。

今後考えられるストーリーは3つ

では、これからこの海はどうなっていくのだろう。考えられるストーリーは3つ。1つは再び水温が上がり、沖縄などの南の国からサンゴの幼生たちが流れ着いてサンゴの繁る海に戻っていくというパターン。もう1つは水温があまり上がらず、もともとの海藻の海に戻っていくパターンである。そしてもう1つは水温が再び上昇するがサンゴも生えてこず、海藻も戻らないパターンである。

可能性としては前者の可能性が高いと個人的に思っているが、運がわるければ3番めのパターンもあり得るかもしれない。温暖化は誰が否定しようと今の世界ではもう当たり前の事実として受け止められている。北極海の氷が溶けてシロクマが困っているという話はよく聞くが、この日本でも温暖化にまつわる話は少なくない。先日テレビで北海道の食の番組をやっていた。それによると、近年は北海道の海でもサケが不漁で、かわって獲れているのがブリだという。以前は東北地方までしか獲れなかったブリが、海水温の上昇とともにその生息域を北に拡大しているのだ。

そうしたことからすると、サンゴの海は地球温暖化が終了しない限り、北へ北へと拡大する傾向は止まらないだろう。数十年先には大阪湾でもきれいなサンゴが見られるようになるかもしれない。そうなれば、大阪市内でも沖縄のようにサンゴ礁に棲む魚が釣れる可能性だって出てくる。

釣り人にとっては大いにそそられる未来であるが、一方で心配なこともある。世界の最北とされている串本でも、近年は台風のあとなど壊れたサンゴが再生しないということがよくある。本来サンゴは海さえ健全であれば壊れてもすぐに再生する生命力旺盛な生きものである。ところが近年はこの再生力がどこも衰えている。かといって海藻がそれにとってかわるわけでもない。陸上でいえば台風で森の木が倒れても木が再び生えてくるわけでもなく、草が生えてくるわけでもなく、裸の土地がずっと残るのである。海でいえば磯焼けという現象。この3番めのパターンがこの最前線に出現しても、ちっともおかしくないほど今の海の再生力は衰えている。

今の日本は世界に冠たる釣り王国であるが、それは南からくる暖流と北から来る寒流の接点にあるうえに、南北に2000㌔もの複雑な海岸線を持つ国だからである。さまざまな環境要因と複雑な地形が絶妙なバランスに保たれることによって、世界で最も多様な釣りが楽しめる国であり得ている。今、その絶妙なバランスが崩れそうになっていることに釣り人として危機感を抱かざるを得ない。

釣り 温暖化の影響2
釣りをしていても、異常気象による海の変化を感じることは少なくない。

フィッシングタウン串本通信

「フィッシングショーOSAKA2019」に『和歌山県熊野エリア フィッシングタウン串本』として出展しました。フィッシングタウン串本プロジェクトの「フィッシングショーOSAKA」への参加は今年で5回め。昨年は予算の関係で1ブース枠での出展。さすがに間口は狭く、人気のウミガメタッチングが始まるとぎゅうぎゅう詰めでしたが、今年は和歌山県と串本町が相乗りの形で参加いただき、なんと3コマの広々ブースになりました。

中央には昨年釣れた361㌔の日本記録のクロカジキの魚拓をどんと据え、いつも人気の串本海中公園提供のウミガメタッチング。また、シマノ・インストラクターの湯川マサヒロさんとサンラインのそらなさゆりさんを迎えてのトークショーも!! 何とどちらも串本出身なのです。さすがフィッシングタウン串本、連日の大賑わいでありました。ブースにお越しいただいたみなさま、ありがとうございました。


【宇井晋介・プロフィール】

幼いころから南紀の海と釣りに親しみ、北里大学水産学部水産増殖学科を卒業後、株式会社串本海中公園センターに入社。同公園の館長を務めた海と魚のエキスパート。現在は串本町観光協会の事務局長としてその手腕を振るっている。また、多くの激務をかかえながらもSWゲームのパイオニアとして「釣り竿という道具を使って自然に溶け込む」というスタンスで磯のヒラスズキ狙いやマイボートでのおかず釣りを楽しんでいる。

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