自己完結にこだわった3.9㌔のアオリイカとの死闘 |【奇跡のランディング③】

デカイカ ランディング1

最も忘れられないエギングといえば、3.9㌔のアカイカ系アオリイカを釣った夜だろう。“どんな大きなイカでも1人で取り込む”というポリシーを貫く私だが、さすがにあの夜はかすかな敗色も…

解説:菅原正史

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釣行時の状況

数年前の正月の初釣りでのこと。2日の夕方に串本の地磯に到着し、上物(グレ)釣り師と入れかわりでポイントに入ることができた。穏やかな海面を夕日がオレンジ色に染めており、気持ちよく釣りを開始した。

しばらくすると、少し離れた場所で竿を振っていた奥さんが「よっしゃ~、きた~‼」とヒットを告げる。それを皮切りに、1㌔台後半から2㌔弱程度のアオリイカの入れ乗りモードに突入した。ラッシュが止まってポイントを移動してからも飽きない程度に釣れ続く。そして、クーラーボックスが満タンとなったところで、明日に備えて車中にて仮眠を取った。

翌朝は期待に胸をふくらませてあたりが暗いうちからランガンするが昨日とは状況が違うのか、まったく釣れないまま夕方を迎えた。そこで、前夜の再現を夢見て同じポイントに入る。穏やかだった前夜とは異なり、ウネリが入ってサラシが広がっているうえに北西風がかなり強く吹いていた。

沖に突き出した地形のため先端は波を被っているが、それ以外は特に危険性はなく釣りができそうなので磯の中ほどでプチ移動を繰り返す。しかし、しばらく釣り歩くもののまったくアタリがなく、時間ばかりが過ぎていく。

すっかりあたりが暗くなったころ、ふと足もとの海面をライトで照らしてみるとトウゴロウイワシかキビナゴらしきベイトが無数に見られた。そこで、餌木を4号から3.5号にサイズダウンした。ちなみにPE0.8号、リーダーは2.5号であった。

想像を越えるパワーにロッドは「つ」の字に…

風の止み間を見計らってフルキャスト。ボトム付近までフォールさせ、大きく2回シャクリを入れてグルグルに移行した直後、押さえ込まれるような違和感を覚えた。これは大型のアオリイカ特有のアタリだと直感し、渾身の合わせを入れた…が、ズドンッと重い手応えのまま、まったく動かない⁉

ほんの数秒間のことなのだが、頭の中では「根掛かり? いや、イカに違いないはず…?」とさまざまな考えがグルグルとめぐる。そんなとき、とてつもないトルク感がロッドに伝わってきたと思う間もなく、バットまで一気に曲がった。アオリイカ独特のグィーン、グィーンといった断続的な引きにロッドが半端ではないほど締め込まれた次の瞬間、ファーストランが始まった。想像を越えるパワーにロッドは「つ」の字に曲がったまま。ドラグは悲鳴を上げ、ラインがどんどん引き出されていく。

死闘を制したファイト&ランディング

なんとかして止めなければ、と考えスプールに手を添えて少しずつテンションをかけていく。リトリーブに移行してからのヒットなので餌木の掛かり方はわるくないはずだが、ロッドは? ノット部分は? と、さまざまなことが頭の中をよぎる。それらを1つずつ、自分自身に大丈夫、大丈夫といい聞かせながら無理のないようにアオリイカにプレッシャーを与えていった。

しばらくするとファーストランが止まったものの、少し寄せたところで再びすさまじいジェット噴射を見せてラインを引き出していく。寄せては走られるといった場面が何度となく繰り返され、どうにか足もと近くのサラシ際まで距離を詰めたもののまだ相手は余力を残しているようで海面までは浮いてこない。ここで不用意に浮かせにかかり、ウネリを受けて高低差がかなりある波とのタイミングがズレるとラインブレイクの危険性が一気に高まる。適度な間合を取ってサラシの向こう側に見え隠れしているアオリイカは決して姿勢を寝かせることなく縦に向いたまま身構えており、しだいに緊迫した空気が濃くなってきた。

サポートに回った奥さんがイカの位置を確かめようとLEDライトの光を向けると、驚いてジェット噴射で潜る。そんなことを繰り返すうち、近くでヤエン釣りをしていたおっちゃんたちがギャラリーに加わった。「兄ちゃん、そのイカ相当デッカいぞぉ~‼ すくうたるぞぉ~‼」と、それぞれが手にギャフや玉網を持って次々と声をかけてくれる。しかし、親切にいって下さったことはありがたいのだが、ここはていねいにお断わりした。

私はエギングにおいて1つのポリシーを持っている。最後のギャフ入れまで自分で成功させてこそ、エギングが成立するのだと考えている。同時に、そのギャフ入れをいかにスムーズかつアーティスティックに行なうことができるか、という点についてこだわっている。なぜなら、それを実現するためには事前に立ち位置やポイントを選択する段階から見通せていなければならないわけで、アプローチからファイトといった一連のストーリーを自ら構築して完結させることに醍醐味があるからだ。

そんなわけで、ロッドを持つ手がだるくなってきた中、自分でギャフを入れられるチャンスを待つ。まだ余力たっぷりで「いつでもいったるぞ‼」といわんばかりのアオリイカは、サラシの向こう側の海面直下で縦の姿勢のままバフバフしている。それでも、大きなウネリが入ってくればさすがの大物でも一瞬は体が横向きになるはずだ。ラインブレイクのリスクも高まるが、そのタイミングに賭けるしかない。そう考えていると大きな波が立った。それに引き寄せられるようにサラシの中で相手の体勢がかわった。「今がチャンス‼」とギャフを手にして滑り込ませようとすると…あれっ、動かない? 磯に引っ掛かったのか? とあわてて振り返ると、なぜか奥さんがギャフのグリップエンドをしっかりと握りしめたまま立ち尽くしているではないか‼

「ギャフを放せ‼」と怒鳴った後、即座に海面に目を戻すとアオリイカは再びサラシの向こう側で縦になった状態でバフバフとしている。後ろで平謝りをしている奥さん。まだこの勝負は時間がかかりそうだ。

高い波に持ち上げられても外れないようにラインテンションをピンピンにかけ続けて次のチャンスを待つ。おそらくライン強度のギリギリの状態で、いつブレイクしてもおかしくない。そんな緊迫した状況の中、足もとの海面が一気に低くなり、沈み根が露出した。「これはくる‼」と思った次の瞬間、期待通りに大きなウネリが白波を立てた。それに引き寄せられてフワ~ッと横向きになったアオリイカの胴の先端をめがけてすかさずギャフを滑り込ませる。ウネリに逆らわず、ロッドでアオリイカの向きを調整して筒の上部にギャフを掛けることができた。その直後、背後の多数のギャラリーから拍手が起こって「お~、やったぁ‼」「で、でっかぁ~‼」と、次々に称賛していただいた。

大苦戦となったが、長いイカ釣り人生の中でも一番スリリングで記憶に残るランディングシーンだった。そして、自宅に持ち帰って計測したアカイカ系アオリイカは3.9㌔だった。

デカイカ ランディング2
極限のプレッシャーにさらされているときほど真の力がでるものだ。
デカイカ ランディング3

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