釣り道具としてのヘッドライトを徹底考察!! ヘッドライトの選び方|【UNCHAIN SKILL act.8】
「価格・防水性・照射面・フォーカス機能」について
④価格
価格も性能の1つですが、安易にそれを求めるとアイテム選びに失敗する恐れがあります。通販サイトなどを見渡すと高スペックのヘッドライトが吃驚するような安い価格で販売されているケースもあります。しかし、採用されている部材がひと昔前のものであったり、無名の信頼できないものだったり、届けばやたら大きかったり、スペック自体が怪しかったり、生産管理が適正ではなくすぐに壊れたり、到着時には動作不能だったり、最悪届かないということも想定しておきましょう。
アングラーにとってヘッドライトは安全を確保するための道具で、最悪の場合は命を預けることにもなります。そういったことから、割高かもしれませんが生産管理が行き届き、保証やアフターサービスも充実した信頼できる製品を選ぶべきだと考えます。現状はひと昔前のハイエンドクラスの性能が汎用レベルになり、安価になってきています。この流れが続きそうな機運なので個人的には納得しています。
⑤防水性
釣りは水辺のスポーツであり、自然が相手なので突然の雨もあれば、それが好条件を生み出すことも少なくありません。そういったことから、当然ヘッドライトにも高い防水性が要求されます。ただ、それを求めると堅牢性や構造のシンプル化も不可欠となり、結果として大型化やさまざまな機能が省略されます。そこで、私の場合はサブライトとして防水性の高いライトを携行し、万が一に備えるようにしています。
⑥照射面の広さ
注目されることは少ないですが、照射面の広さは重要な要素です。暗所から明るい場所に出た際に目が慣れることを明順応といい、これには30~60秒を要します。逆に明るい場所から暗所に出た際に目が慣れることを暗順応といい、こちらは40~60分が必要とされています。
つまり、ライトを点灯させてもしばらくすると慣れて見えるようになりますが、照射面に慣れてくるとその外側の暗い部分はまったく見えません。移動時に暗所から突然現れる人や動物、ヘビなどに肝を冷やすことも多いですが、それを回避するために左右に首を振って広範囲を照らしながら移動するのも疲労感が大きく、磯やテトラでの移動時に視界が広く確保されないのも怖いものです。特にバランスを崩した場合など、一歩踏み出す先がまったく見えないと適切な対処ができないことから、照射面の広さは必須だと考えています。
⑦照射面の狭さ
逆に照射面の狭さも重要です。同じルーメン数なら照射面が広ければ到達する距離は短いですが、照射面が狭ければより遠くを照らせます。移動時のルート検索、ファイト時のストラクチャー回避、釣り場での先行者の確認、後行者への存在告知など、必要な場面が多いことを覚えておいて下さい。
⑧スライド幅の広いフォーカス機能(ワイド↔︎スポット)(散光・集光)
⑥と⑦は説明した通りですが、それぞれの機能に特化したヘッドライトを複数用意することは装備の増大に繋がります。そして、広大で起伏の激しい山越えやサーフではルート検索のためによりスポットに特化し、到達距離に優れたフラッシュライトの必要性を痛感しますが、日常のお手軽釣り場への釣行についてはシンプルにまとめたいところです。
そこで求められるのが散光・集光を高いレベルで両立したスライド幅の広いフォーカス機能を搭載したヘッドライトです。
⑨照射面の均一性
明るさだけが見やすさではないことは前述した通りですが、最も重要なのは「配光にムラのない照射面の均一性」です。アジングなどのライトゲームにおける極細柄のラインシステムの組みかえやリグのセッティング、取り込み時のフッキング位置の確認、移動時における足もとの質や形状の微妙な変化など、配光にムラがあるといくら光量を上げても眩しいばかりで視認しにくいものです。
意外にも中心のみが明るいライトもありますが、これでは中心を適正な照度にしたときに周囲が見えません(=ワイドの意味がない)。特に移動時の事故は絶対に避けたいところ。足もとの質、微妙な段差や傾斜、濡れているか? 砂が乗っているか? 泥やコケは? これらを見極め、その変化点を把握して一歩を踏み出すことが重要となります。突然の変化に対してパニックに陥り、事故に繋がることも少なくないからです。また、磯やテトラを移動するときは乾いたところを歩くのが原則。滑りやすいだけではなく、ときおりやってくるドカ波にさらわれないようにするためです。
10年以上も前のことですが私自身、非常に怖い目に遭ったことがあります。リバーシーバスゲームで普段は水没する導流提をウェーディングスタイルで遡り、本流筋を狙った帰路のことでした(行きは水没・帰りは干出)。カーブに差しかかったところで足を踏み出したところ、何の抵抗もなく転倒し、後頭部を強打して失神。水の緩む場所で泥が堆積しているのに気づかなかったのが原因です。しばくして意識を取り戻しましたが、30分ほどは全身が痺れて体が動かず、迫りくる上げ潮に戦慄したできごとでした。
とにかく釣り場ではさまざまなアクシデントや事故に見舞われる可能性があります。そのことを念頭に置き、今回紹介したヘッドライトを含めた装備に万全を期したうえで慎重な行動を心がけて下さい。
総括・その2
①~⑤に関しては各パーツメーカーによるところも大きく、各社の差異も大きくありません。一方、⑥~⑨に関しては「明るさの質」であり、各メーカーの特徴や力量が問われる部分で私自身がヘッドライトに求める部分です。
なお、補足としてつけ加えると、ヘッドライトの明るさを示すルーメンという単位は光源の明るさ、つまり電球の明るさであって照射面の明るさではありません。実際には光源からの光を集光する際にロスが発生するので、同じルーメン数であっても集光技術しだいで実際の明るさは大きく異なります。
近距離を広く照射するのも同様で、拡散レンズを用いたヘッドライトも光量ロスが大きいものも少なくありません。遠くに光を届けるにも、スライド幅の広いフォーカス機能(スポット・ワイド)(近・遠距離)にも、配光にムラのない照射面の均一性にも優れた集光技術が不可欠となります。
最後に、ひと昔前は磯場やテトラ帯のナイトゲームは釣り場に精通したアングラーの密やかな楽しみでした。それが誰でも楽しめるようになったのは高性能のLEDヘッドライトの出現の賜物です(もちろん、十分な下見や装備、それなりの覚悟は必要ですが…)。私自身は現在のヘッドライトでほぼすべての釣りを網羅し、ストレスのない釣りを実現してくれると確信していますが、まだまだ続く進化の過程の中で性能面のみならず、釣り道具としてのヘッドライトの進化も感じられて非常に意義深いと考えています。
私が愛用しているヘッドライト
「明るさの質」という点においても私が信頼して使用しているのがレッドレンザーのアイテムです。社名が表すようにレンズとリフレクターを組み合わせた集光システムに優れたメーカーです。今回は新製品6アイテムのうち3アイテムをリリース前に試す機会があったので紹介しましょう。
MH3、MH5はコンパクトで軽量な本体・電源一体式。頭部への装着はもちろん、本体脱着式でクリップが搭載されており、ベストやバッグのベルト・ポケットなどに加工なしで装着可能な自由度の高いモデル。操作もシンプルで、専用充電池か単3電池1本で最大200/400ルーメンの高性能を誇ります。安全・近場・短時間のお手軽釣行のみならず、ハードな遠距離移動や長時間の釣りにも対応可能(予備電池は不可欠)。幅広い場面で活躍するストレスフリーなヘッドライトです。
また些細な部分ですが、既存のヘッドライトのほとんどは「ハイパワー→ローパワー→消灯」の順に設定されていますが、このモデルはローパワーから点灯し、消灯することが可能。これはフックにまとわりついたゴミを除去するなど釣り場で最小限の明るさを求める場合も、その都度ハイパワーの明かりでフィールドに無用なプレッシャーを与えることに不満があったアングラーに朗報といえるでしょう。
なお、MH3とMH5の価格差は性能のみではなく、専用充電池+充電器も含めた差となっています(MH5は付属)。
超拡散配光による圧倒的な照射範囲、対向者の眩しさを和らげるレンズ設計のヘッドライト。コンパクトで軽量性に優れた本体・電源別体モデルで頭部に装着した際の軽快感は抜群。アングラーのパフォーマンスを向上させてくれます。最大光束240ルーメン・IP57の防水性能は日常の手軽な釣りのみならず、荒天時や水により近いウェーディングにも最適。磯やテトラでの釣り、また磯泊まりのようなハードなパターンでの予備ライトとしても活躍してくれます。
【安田栄治・プロフィール】
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