【磯のヒラスズキゲーム】低水温期の楽しみ方を徹底研究
房総半島がホームフィールドである私のターゲットはヒラマサをはじめとする青物とヒラスズキ&マルスズキ。中でも青物狙いを主体としているが、特に低水温期はヒラスズキを狙う機会も多いから…
解説:大野 祐
低水温期のヒラスズキ
低水温期のヒラスズキゲームは間違いなく難しいが、その理由は大きく分けて2つある。ターゲットとなるヒラスズキのコンディションと、アングラーのメンタル面だ。
コンディションについては、当然ながら低水温によって活性は低い。私はサーフィンも趣味にしており、水温を肌で直に感じているので、温暖化の影響なのか近年は冬場の水温が高めで推移する傾向にあるのは確かだといえる。それでも、厳寒期にはヒラスズキの適水温を下回る15度以下となる日も多く、そうした状況では好期のようにサラシの中に魚体が確認できたり、ときにはジャンプしたりといった活発な捕食行動が見られることは皆無である。ポイントをタイトに攻めないとなかなか反応が得られないうえ、アタッてもショートバイトが多いのは、そのように活発に泳ぎ回って餌を追うことがないからであろう。
また、冬~春はヒラスズキの産卵期だが、個人的な印象としては他魚よりもそれが長いと感じている。マルスズキは産卵のピークが比較的明確で、プリスポーンとアフターがはっきりとしているが、ヒラスズキは個体差が大きいのか、あるいは大規模な集団行動を取らないのか、ダラダラと産卵が続くような感じだ。産卵に絡むヒラスズキは当然ながら餌を追わず、魚影も薄くなるように思う。
ただ、例外的に産卵前の群れとベイトの接岸が重なった場合にはバイトが多発し、低水温期とは思えない爆釣を味わえることもある。
メンタル面については、アングラーがモチベーションを維持しづらいということがあげられる。当然ながらこの時期は人間にとっても寒く、どんな釣りであれフィールドに立つのは辛い。ましてや、磯のヒラスズキゲームでは寒風吹きすさぶ中でウェットスーツを着込み、波に濡れることもたびたびあるのだから、考えるだけで気持ちが萎えるだろう。なんとかヤル気を奮い立たせてフィールドに立っても、濡れてかじかんだ手ではなかなかキャストも決まらず、思い通りにゲームを展開できず苦戦することが多い。
ヒラスズキを手にするために…
この時期は難しいことを承知のうえで釣行することになるが、少しでもコンディションのよいエリアと魚を見つけることで釣果に近づけるはずだ。
活性が低いとはいえヒラスズキにとってサラシは捕食のために必須といえるほどの条件であるから風向きは当然のこと、波やウネリの向きも十分に考慮してエリアを選ぶ。その中で潮位やベイトの存在なども加味し、考えられるベターなポイントを選択。また、個人での判断には限界があるので、風や波などはインターネットなどの情報も最大限に活用して分析し、釣行日の状況を予測する。
現場では鳥山の存在にも注意したい。通常、鳥山の下にはベイトがおり、それを狙う捕食者もいるはずだ。だが、この時期は海中の捕食者が魚ではなくウなどの海鳥であることが多い。また、青物やマルスズキが捕食者となっていても、それらがフィーバーしている状況だと警戒心の強いヒラスズキはかえって口を使いにくい。マルスズキが入れ食い状態でもヒラスズキはほとんど釣れない、ヒラスズキが連発していても鳥山が近づくとパッタリ、といったケースもある。もっとも、そんな場面に遭遇したら素直に青物やマルスズキ狙いにかえるのも手だ。
有効なアプローチとラインワーク
アプローチについてはタイト、スロー、ていねい、そしてしつこく攻めることを心がける。好期には魚がついているであろうピンポイントからルアーが1~2㍍離れていてもバイトを得られるが、この時期はなるべく狙い目から1㍍以内をトレースする。風でラインをうまくはらませることでトレースコースを狙い目に近づけたり、ライナーキャストの後、強制的にサミングして着水させ、ラインを直線状にするなど、風の影響をうまくコントロールできるようにいろいろなキャスト法を試すことだ。また、よりよいトレースコースとなるまで何度も撃ち直してみる(タイトに攻めることでルアーのロストも多くなりがちなのがツラいところだが)。ルアー操作もヒラスズキが口を使いやすいよう、なるべくスローなリトリーブやドリフトを多用する。
メンタル面の対策については自身で気持ちを切りかえることが大切だ。アングラーであれば誰しも釣りたいという思いで釣行するだろうが、私は釣果は二の次という程度に考えるようにしている。釣れない時期に修行をしにきている、気の合う仲間と辛さを分かち合うために足を運ぶ、ボウズで帰るときに冷えた心と体を温めてくれるラーメンが楽しみ、というように少しでも前向きな釣行理由を自身に課して気持ちを盛り上げて楽しむようにしている。
もちろん、そんなシビアな釣況下で手にした1匹の価値は非常に大きい。それがまさに磯のヒラスズキゲームの醍醐味ではないだろうか。
情報の取り扱いに要注意
磯のヒラスズキゲームに限らず、情報はあくまで情報として、アテにし過ぎてはいけない。特に釣果情報は要注意だ。現在はSNSなどインターネットを通じていろいろな情報を得ることができるが玉石混合といえ、ずいぶん前の釣果が昨日のことのように書かれていたり、伝わる間に話が大きくなったりということも散見される。信用できる筋からの正確な情報でない限り、鵜呑みにしないことだ。
また、釣果よりも潮の流れや波、風、ベイトなど、あくまでフィールドコンディションを予測するために情報を活用したい。その点ではダイビングショップや渡船の船宿などが出す情報は誇張がなく、リアルタイムで更新されていることも多いので役立つはずだ。
※上記のリンク先にある「磯のヒラスズキゲーム・安全とマナーについて」を必ず読んでいただき、ルールやマナーを守り、安全対策をしっかりと講じたうえで事故やトラブルのない釣りをお楽しみ下さい。
スポンサーリンク
※文章・写真・記事などのコンテンツの無断での転用は一切禁止です(詳細はサイトポリシーをご確認下さい)。