ピンチかチャンスか?|【知っていたからって釣れるわけじゃないけれど… その1】

釣りエッセイ 漁業・遊漁1

漁業の衰退に危機感を抱いた政府が、漁業を漁業者だけに任せないで他の企業などにも開放する、というニュースが流れてきた。これは漁業者と企業だけの調整では済まない話で、我々釣り人にとっても大きな問題であるから…

文:宇井晋介

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初めのご挨拶

今の若者は本を読まなくなったという。そのおかげで出版業界は大不況。私が長らくお世話になっていた「SWゲームフィッシングマガジン」もそんな中で長い歴史に終わりを告げることになった。確かに現代の学生の読書時間は1日30分以下というからそれも仕方のないことだろう。「いやいや俺なんかそんなに読まないけど!!」とおっしゃるあなた、ご心配なく!! 調査によると学生全体の約半分がまったく読書をしないという結果が出ているからである。

「まったく嘆かわしい!!」というつもりはない。おそらくずっと昔から大人は子供に「最近の子供は本を読まなくなった」といい続けてきたに違いないからだ。ただ、現代っ子たちが昔の人間に比べて知識が浅いかといえば決してそうではないだろう。いや、それどころか知識の量は昔と今では桁違いに今の方が大きいに違いない。インターネットによって世界中のありとあらゆる知識が自宅で、しかもクリック1つで手に入る時代と、隣村の誰兵衛が誰かとなにしたという時代とをそもそも比較することすら無意味である。たとえ本を読まなくても、今の若者はあらゆる知識に長けていることは間違いない。

だとすれば、モノを書く方も、紙の上ではなくネットの上に書けばいいわけだということで、今回からネットの上にこの連載復活することになった。

海と川など水に関すること、魚に関すること、環境に関すること、その他、神羅万象から日々のニュースまで、思いつくまま気の向くまま書いてみようと思う。しばしのブランクがあるうえに、最近はモノ忘れもひどいので、なかなか元の勢いを取り戻すのは難しそうだが、そこはそれ年の功。初心に返ってのらりくらり(コラコラ)書いていきたいと思う。何卒よろしくお願いします。

ピンチかチャンスか?

地球の表面積は一般的に510,065,600㎢とされる。そのうち陸地面積は約29㌫で、これらの土地にはすべて国家も含め所有者がいる。一方、海の面積は残りの71㌫で、海に面した国にはそれぞれ領海というものがあり、海岸から12海里(約22㌔)は空や海底も含めその国のものとされている。

ただ、陸上と異なるのは、この領海には持ち主というものがいないことである。もちろん国はその領海の持ち主であり、他国に対しては所有を宣言しているが、自国の国民に対しては所有を宣言していない。だから海は誰のものでもなく、国民すべてのものというよく聞かれる主張は正しい。

しかし、海を使い放題にするとおそらく大変なことになるのは間違いないので、海の利用に対しては漁業権というものが設定されている。要するにこの海を優先的に利用できる権利のことだ。この国では現在漁業者の代表、すなわち漁業協同組合がその権利を与えられている。まあ、海で魚を捕って暮らしているのは漁業者なので、その当事者が優先的に海を使うことには異存はない。

ところがこの法律がなんと70年ぶりに変更されるらしいというニュースが先日流れてきた。そのニュースのあらすじはこうだ。今、日本の漁業は漁業資源の減少や漁業従事者の減少で年々漁獲高が減少している。確かに日本の漁村を歩くと、どこも港が衰退していて愕然とする。私の住んでいる海の町、串本でも漁業の衰退は眼を覆うばかりである。

たとえば、30年ほど前だと夕方になれば毎日沖合に多数の船が一直線に集結し、5時の合図とともにまるで競艇場さながらにボートレースを繰り広げていた。灯船(ひぶね)と呼ばれる巨大なエンジンと集魚灯を積んだ船で、その日魚が捕れそうな場所を先を争って独占するためである。夜になれば沖は集魚灯の明かりで、まるで海上に町ができたかのような賑わいであった。

今はどうだろう。沖を見渡しても、せいぜい1隻か2隻がポツポツと浮かんでいるだけである。それくらい漁業は衰退した。これに危機感を抱いた政府が、漁業を漁業者だけに任せないで他の企業などにも開放しようということになったわけだ。つまり、会社経営のノウハウを漁業にも取り入れたり、販路を開拓したり、大きな資本を投入して大規模な養殖場を増やすことで漁獲高を増やし、漁業所得を増やして漁業従事者を増やそうというのだ。

これについては話題が出た時点から、今のままでは日本の漁業はなくなるから法改正はいたし方ないという意見、漁業権が企業に奪われて漁業者は抹殺されるのではという意見、利益優先の企業経営が漁業という仕事になじむのかなどなど、さまざまな意見が入り乱れてまるでハチの巣を突いたような状態になっている。

政府の意見書では、今の漁業の衰退の一因は漁獲高の減少もあるが、その前に漁獲高の減少の大きな要因の1つに漁業者の無計画な乱獲があるから、さまざまな企業が入って漁獲枠の調整をし、資源を増やす下地を作るという思惑があるらしい。

その中心にある考えの1つが現在クロマグロやサンマ・サケなど、特定の魚にかけられている漁獲枠制度。この漁獲枠がある魚種をもっと増やし、さまざまな魚に漁獲枠を設けるべきという考えである。それだけ聞けばなるほど魚が増えるのは釣り人にとっても結構な話と思う。ただ、よく考えてみるとこれは漁業者と企業だけの調整では済まない話である。深く考えるまでもなく、私たち釣り人(遊漁者)にとってもこれは大きな問題なのである。将来、さまざまな企業が参入してきて漁獲枠調整を始めれば、確かに計画的な運営はできるかもしれないし、それによって魚が増えるかもしれない。しかし、たとえば私たちが普段相手にしている魚にも漁獲枠が定められる可能性が出てくることは間違いなく、私たち釣り人にとっては大ピンチである。

実はそれを見越して、すでに遊漁関係者と水産庁あたりとの話し合いが開始されている。ただ、今後どういう風に話が進むのかはまったく分からず、一般の釣り人への漁獲制限や将来的にはライセンス制導入などの話も出てくる可能性がある。遊びの釣り人に対してさまざまな規制がかけられることの多い外国に対して、日本はとても寛容な国で、一部の禁漁区域や民有地を除いては誰がどこで何を何匹釣っても文句をいわれることはない。それが根底からかわるかもしれないのである。

釣りエッセイ 漁業・遊漁2
規制により我々にとっての釣りが根底から覆るかもしれない。

ただし、私たち釣り人が楽しむのはあくまで遊びの釣りであるが、それによって生計を立てている業種も少なくない。釣り具メーカーや遊漁船などは当然だが、その他、観光や宿泊業など実にさまざまな人たちが「遊漁」によって大きな恩恵を受けている。世界一の釣り好き国、日本において「遊漁」は産業経済的な面からも決して無視できないものなのである。今後、論議がどういう方向にいくかは分からないが、ここは釣り人も、そして釣りに携わる業界の方々も、手を携えて「遊漁」の権利と自由を主張すべきときだろう。

ただ、これをお読みのみなさんも感じているように、日本のいや世界の漁業資源は急速に枯渇方向へ向かっている。その点では、資源保全は今や私たち釣り人にとっても、漁業者にとっても避けて通れない問題となっている。資源が無限にあった過去とは違い、私たち遊びで魚釣りを楽しむ人間にも、権利と同時に義務が課せられることは今や時代の流れである。

これを機に、漁業者と遊漁者のお互いが魚の減少や漁場環境の保全について責任をなすりつけ合ったり、いがみ合う構図を過去のものとし、日本という国土・文化になじんだ新しい魚資源の管理の仕方について一致協力できる体制づくりをしていってほしいものである。そう考えると、今回のできごとはピンチではなく、むしろ70年に1度の滅多にないチャンスが訪れたと考えることもできそうだ。

フィッシングタウン串本通信

私の住む串本は全観光客の1割が釣り客という釣りの町。その串本で今行なっているのが『フィッシングタウン串本プロジェクト』です。釣りに関するイベント開催などを通じて釣り人を増やすとともに、釣り以外のアウトドア体験などへ誘導する取り組みです。また、さまざまな取り組みを通じて将来の釣り人口増加に貢献することも目的としています。

ここでは、このプロジェクトの活動や串本での釣りの話題、海の話題を発信していきますのでどうぞよろしくお願いします!!

冬のターゲット

串本は冬でも暖かく、1年を通じて釣りがてきます。年も明けていよいよ本格的な冬に突入し、さすがの常春の国・串本も寒くなってきましたが、それでも雪が降ること自体が珍しい町です。黒潮離岸が続く状況とはいえ、串本の西側は水温18~19度をキープしています。

串本の東側防波堤(通称:赤灯台)では2018年末時点でマアジがサビキで入れ食い。型もよいですよ。もちろん、ルアーアングラーはアジングで狙えます。

2018年は不調が伝えられたアオリイカもぼちぼち1㌔オーバーが見られるようになりました。数は例年に比べると渋く、ボウズも覚悟の釣りとなりますが、これからどんどん型がよくなるので期待しましょう。船を使えば3㌔オーバーも夢ではない巨大アオリイカ、レッドモンスターのシーズンはこれから。ティップランで狙いましょう。1年中さまざまなエギングが楽しめるのも串本の魅力ですね。

磯のファイター、ヒラスズキや青物もこれから海がシケるとチャンス増。特に西から南西の風が強い、暖かい日がおすすめです。波に注意してチャレンジしてみて下さい。季節風に強い串本湾でのカセ釣りもこれからまだ楽しめます。カセ釣りは沖に停めたボートに渡して釣りをする楽ちんでよく釣れる釣り方。これからだとマダイやメジロ・イトヨリ・マトウダイ・マアジなど高級魚が目白押しです。

最後に、とても大事なことですが、海で釣りをするときはどんな釣りでもライフジャケットを必ず着用して下さいね。あなたの身はあなた自身でしか守れません。

釣りエッセイ 漁業・遊漁3
新年、鯛島に昇る朝日(串本町)。

【宇井晋介・プロフィール】

幼いころから南紀の海と釣りに親しみ、北里大学水産学部水産増殖学科を卒業後、株式会社串本海中公園センターに入社。同公園の館長を務めた海と魚のエキスパート。現在は串本町観光協会の事務局長としてその手腕を振るっている。また、多くの激務をかかえながらもSWゲームのパイオニアとして「釣り竿という道具を使って自然に溶け込む」というスタンスで磯のヒラスズキ狙いやマイボートでのおかず釣りを楽しんでいる。

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