【UNCHAIN SKILL act.4】道具目線のエギングスタイル【前編】
シビアさが増す近年のエギングだが、その中で楽しめることはまだまだ多い。たとえばタックルに目を向けると、その選択や使い分けによってゲーム性を追求していくことができるから…
Text & Photo 安田栄治
[spacer]前回、この連載で詳しく紹介させていただいた「同一釣場・定位置における定点観測的釣行のススメ」の中級編において、中級者が資質の向上を果たす上でも定点観測的釣行が重要であることをお話しさせていただいた。
そして、「慣れ親しんだマイポイントで釣り座を固定し、自分の釣りや道具について模索する」という行為は、多くのメーカーテスターや商品開発を担うアングラーがとる手法でもある。そこで今回は、現在私なりに感じているエギングスタイルについて、道具目線で紹介したい。
ロッド
[spacer]ベーシックタイプ
近代エギングはダートする餌木の登場により大きく開花した。アオリイカの食味のよさのみならず、餌木を操作し、誘って乗せるというゲーム性の高さに魅了されたアングラーにより一大ブームが巻き起こった。
それにより専用ロッドとしては激しいロッド操作が可能なシャクりやすいタイプが一般的となった。以降の進化は軽量化・高感度化・ショートジャークに特化したファストテーパーといった要素が注目され、中にはビンビンのロッドも多かった。当初、個人的には反響感度に吃驚したが、感度として求められるのはそれのみではないと感じていた。また、シャクりやすさについても必要以上に餌木を動かすことでレンジや位置の把握がボケやすくなること、さらに当時の技術力では破損も多く好みではなかった。
その対策として尖った性能を幾分マイルドに戻すことや、補強材を入れることで問題がクリアされ、今では技術的進歩により安易に折損するようなロッドは皆無となった。おおむねこのような流れが最近まで続いてきた。
尺メバル用ロッドの登用
私自身は10年ほど前に尺メバルブームが到来した際、各社からいっせいに尺メバルロッドがリリースされたタイミングで「これをエギングに取り入れることはできないか?」と試行錯誤を繰り返した。
マックス10~14㌘の負荷に設定されながら、同クラスのエギングロッドと比較すると全体的にやわらかくて細い。ロッドパワーに関しても尺メバル狙いでときおりヒットする80㌢アップのヒラスズキにも対応できていたので不安はなかった。実際にフィールドで試すとオン・オフを知らせる反響感度のみならず、荷重変化も鮮明に伝えてくれた。手もとに感じる「手感度」だけでなく、視覚的にとらえることができる「目感度」にも優れており、アングラーの不用意な操作ミスによる餌木の挙動も抑えてくれる。
結果として1パイを取りにいくようなシビアな状況では同行者に遅れを取ることが少なくなり、自分が求めたより緻密な釣りが可能となった。これまで覚知できなかった微細なイカの反応や追随による水流変化、ボトムやストラクチャーの質、そこから推測する地形変化、潮流の変化や方向、位置の把握と出現・減衰の時系列変化などがリアルタイムで把握できるようになった。これをフレキシブルに自分の釣りに反映できるメリットは大きかった。
その中でアオリイカは意外と餌木を触りにきており、これまで把握できなかった反応が多いことも分かった。ロッド全体がしなやかに追随するため、アングラーの不手際による無意識な餌木の挙動変化を抑制し、食い込みにも違和感を与えにくいことからナチュラルなアプローチが可能となる。
もちろんウィークポイントもある。遠投が効きにくくてアキュラシーも低い。ティップではなく、バットでシャクれば餌木をクイックに動かすことや大きく飛ばすことも可能だが、キレのある連続ジャークを演出するのは難しい(あくまでも目的外の使用で自己責任の範疇だが…)。他にも3.5号までの餌木は扱えるものの、それ以上は難しい。また、根掛かりや藻掛かりには対応しにくいため、春エギングのメインロッドとして使用するのは心もとない点も否めない。
しかし、尺メバルロッドならではの繊細さや弱さ、軽量性による総合的な感度と操作性で緻密な釣りが実現できるため、今でも秋~厳寒期には使用している。近年は反響感度に特化したアジングロッドを秋エギングに登用するアングラーも多いが、反響感度のみが感度ではないということを忘れてはならない。
近年注目しているロッド
そして、前述した尺メバルロッドのマイナス部分を補うために選択したのが、2クラスライトなエギングロッドだ。こちらもメーカーが推奨する適合餌木の号数を上回るのであくまでも自己責任だが、3号表記で4号、3.5号表記で4.5号の餌木まで折損もなくゲームを楽しめている。もちろん、破損に対するマージンの取り方や設定は各メーカーによってさまざまなので見極めが必要だが、垂らしを長めに取ってていねいにキャストし、ティップでエグるようなシャクリではなく、バットでシャクるようにするのが扱い方のコツだ。上級クラスに採用されている高弾性ロッドよりも、中断性でやわらかい中級クラス以下のロッドの方が扱いやすい。
これは設定号数を上回る餌木を使用することによる弱さ、軽量性による感度を求めた設定である。尺メバルロッドほどの感度は望めないが、破損に対する安心感や操作性、汎用性など、それ以外の部分では高いレベルで要求を満たしてくれている。
それと、近年注目しているのがソリッドティップを搭載したエギングロッドだ。従来は「ソリッド=やわらかくて乗りがよい」、「チューブラー=張りがあって高感度」というような定義があるが、最近は技術の進歩により各々の欠点をカバーし、補完できるようになってきた。製造方法の違いによりソリッドの方が細いということぐらいしか素材別の差異はなくなってきたと感じている。
しかし、ソリッドティップ搭載のエギングロッドはオフショアのティップランエギングに端を発していること、もともとメバルロッドを用いていたこともあり、求める部分は同根。そこにショアで必須となるキャスト性能が加味されているため、私自身、このロッドによりこれから自分のエギングがどのように前へ進んでいくのか興味津々だ。
ロングロッド
かなり前から各エギングロッドのラインナップに存在しながら、なかなか表舞台に立てていないのがロングロッドだ。有効性についてはロングレングスを生かした遠投性能をイメージすると思うが、そもそも遠投はロッドの力だけではなく、さまざまなノウハウやテクニックが必要となる。それを理解した上でロングロッドを用いればさらに飛距離が伸びるが、一定距離を越えると餌木がほとんどアクションしないこともあり、私はあまりそこに注目していない。
確かにロッドレングスを生かせばより遠くの餌木をしっかりと動かすことも可能だが、それよりも長さを生かした高い跳ね上げやラインの送り込み、ロッド操作でより長時間に渡ってラインテンションを保てることに注目している。願わくばMやMHメインの現状から、MLやLの9.6㌳以上の登場を期待している。
ショート・ハード系ロッド
一世を風靡したショート・ハード系ロッド。主に磯に差してくる大型の赤系アオリイカに対してポイントや条件を読み、釣り場を取り巻く厳しい環境を克服して果敢に攻めるスタイルにマッチする。私自身、機動力に難があることからほとんど実践しないパターンだが男前で素敵である。
ロッド自体に関しては取り回しや操作性のよいショートレングスとパワーに注目している。たとえば根掛かり地獄のシャローや春シーズンの藻のジャングルなど、誰もが攻めあぐねるような手つかずのフィールド、見落とされるような小場所、人気釣り場の不人気スポットなどでも活躍が期待できるだろう。効率よくラン&ガンするのもいいし、改造するしかないものの4.5号スーパースローモデルで餌木のアクションではなく、サイズ的な存在感でじっくりアピールするのもおもしろいと思う。食性に対するアピールだけではなく、興味や排他的衝動に訴えるアプローチだ。
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