釣果を操る「光」の秘密【PART2 シーバス&ライトゲーム編】 | SWマガジンweb | 海のルアーマンのための総合情報メディア - Part 2

釣果を操る「光」の秘密【PART2 シーバス&ライトゲーム編】

光にまつわる8つのキーワード

生物が外部からの刺激を受けて反応し定位することを走性といい、魚類では走光性、走流性、走化性などが議論されることが多い。今回のテーマである走光性は一見すると本能による生得的行動ととらえられがちだ。しかし、さまざまな要因が複雑に絡み合った結果であるため一概に断言するのは困難だ。そこでいくつかのキーワードをもとに解説したい。

①走光性…光に集まる「正の走光性」を持つ生物がいる反面、光を避ける性質や、場合によってそうした行動を取る「負の走光性」を持つものもいる。

②索餌集群説…正の走光性を持つプランクトンを捕食するために光に集まる小魚がいて、それを捕食するためにさらに大型魚が集まること。釣り人にとって最も理解しやすいケースだが、これがすべてではない。

③条件反射…日の出や日没の光量が著しく変化する時間帯にはプランクトンが表層に密集することから、照度変化を刺激とする条件反射が備わっているという考え方。朝夕が多数のゲームにおいて時合となりやすいことの理由でもある。日の出や日没は地形によってタイムラグが生じることから、それを加味したポイントのシフトを行なえば1日2回しかないまづめどきを2倍、3倍にすることも可能だ(図A参照)。しかし、明るければよいというわけではない。

シーバス&ライトゲーム 明暗3

④好適照度…暗過ぎると効果が薄く、明る過ぎると表層まで上昇せず好適照度となるレンジに定位する。「水清ければ魚住まず」といわれるように、底まで見えるほど強い光が当たる場所には意外と魚が少ないものだ。ただし、好適照度は水質などの条件に左右されるし、魚種ごと、さらには同一魚種でも成長過程で異なる。明順応、暗順応も異なることから基準を設けるのは容易ではない。

⑤探求反射…自然とは異なる人工的な光に「何だろう?」という興味本位で集まること。ベイトがいないのに集まる黄昏メバルや1匹狼的な行動を見せるシーバスの存在が好例であろう。

当然、明かりに興味本位で集まるので自動車も含め、ヘッドライトで照らし出されても忌避反応を示すだけだ。同様に、外灯が突然消えた際にもパニックを起こす。しかし、このときのベイトのイレギュラーな動きはフィッシュイーターの捕食本能のスイッチを入れる。よって、定期的に点滅する施設の照明や断続的に起こる自動車や船舶などの照明をうまく活用すれば効率よくヒットチャンスに結びつけることができる。

⑥照射角度…⑤を考えるうえでは照射角度の理解が必須となる。日光や月光などの自然光は、光源が遠くにあるため地表や水中を垂直に照射する。そのため鳥が水平に飛んだり、魚が一定レンジに定位できるのだ。外灯はそれより低いので虫が光源にぶつかったり、魚がぐるぐると円運動を起こして一定レンジに定位できないという現象が起こる。

ヘッドライトや船舶、車の照明はさらに低くて海面近くに位置する。照射幅も狭いので指向性が強く、魚からすれば光が向かってくるように見えるためよりパニックを起こしやすい。忌避反応を利用した戦術においても重要な部分だが、ナブラ撃ちと同様にトレースラインが重要だ(図B参照)。

シーバス&ライトゲーム 明暗4

⑦照明の種類…人間の目に見える可視光線の波長は360~830㌨㍍である。それよりも波長の短い領域を紫外線、長い領域を赤外線と呼び、これらは人間の目には見えない不可視光線である。熱に変換される赤外線は大半が水面で吸収されるのに対し、物質に化学的な影響を与える紫外線は可視光線以上に水中深くまで浸透する。当然、水中で生活する魚類は紫外線領域に対する感度は高く、ルアーマンに人気のケイムラカラーの効果もうなずける。

ところが、自然光や従来の外灯である蛍光灯、水銀灯の光は紫外線を含んでいるが、波長の限定が比較的容易であることから一般的な白色LEDなどは可視光線以外をほぼ発しないように設計されている。「釣り場周辺の建物や外灯、自販機の照明器具がリニューアルされてから虫が少なくなったが、同時にベイトも魚も減ってしまった」ということをよく耳にするのもこうした理由からだ。ランニングコストの面などから今後は大半の外灯がLEDに置きかえられることは必然であり、考慮すべき事項のひとつと考えている。

⑧色…これも重要な要素だ。イカが青色、サンマが赤色の集魚灯を好むことは有名で、魚種ごとに色の好みがあるようだ。

初冬から春の時期に河口回りなど河川の影響を受ける釣り場において多くのフィッシュイーターにとってのベイトとしてはずせないシラス(稚アユ)も、黄色や緑色を好む一方で赤色や青色を忌避する傾向が顕著であることが実験により明らかにされている。アユの養殖場では黄色の透過性の屋根を設置することによって定位するレンジが表層に近くなり、摂餌効率が上がるとさえいわれている。

実際の釣り場でも、普段は緑色が点灯、もしくは黄色が点滅している感知式の信号機が赤色にかわったとたんシラスがパニックに陥ってイレギュラーな動きを見せることがある。また、稚アユのソ上ルートなど回遊コースの中で赤色の照明が当たる場所が狙い目となることもある。こうした条件を持つピンポイントは捜せばたくさんあると思う。

なお、参考文献として①~⑥では「魚類の生態からみた漁法の検討23 魚はどうして光に集まるのか(上) 東京海洋大学 有本貴文」から一部引用させていただいた。

釣りを始めたころ、不用意な光の存在が釣り場に与える人的プレッシャーについて学んだ際、アイザック・ウォルトンの「釣魚大全」で有名な「Study to be quiet!!」という言葉を思い出し、ハタとヒザを叩いた。しかし、人的な影響が及ばない釣り場は現代社会にはほとんどないといっていい。むしろ、今回のテーマからは短所をうまく長所に転ずることができれば大きな武器となるということに気づいた。

こんなことは知らなくても魚は釣れる。だが、さらに上を目差すうえでは必要不可欠な要素であると信じて私自身トライ&エラーを繰り返している。大半は勘違いだったりするが、その過程が楽しくて仕方がない。

シーバス&ライトゲーム 明暗5

失敗を重ねるたびに知識欲が増え、ますます釣りがおもしろくなる。

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