【スローピッチジャーク・ステップ7】続・魚の視覚について
【ステップ6】に引き続き魚の視覚について紹介したい。魚は餌をとらえるためにさまざまな器官を駆使しており、最終的に目を使う。そして、その部分に特化したテクニックがスローピッチジャークだと考えている
解説:加藤啓之
魚は速く動くものに対して素早く的確に識別できる
スローピッチジャークはジグのタテ方向の移動距離を極力抑え、その後のスムーズな動きを生み出し、連続的にジグをヨコに向かせるというのが基本アクションだ。では、魚はなぜ連続的なヨコ方向の動きに興味を示すのだろうか?
魚が捕食しやすいベイトの状態は以下の通りである。
①平衡感覚を失ってクルクルと回っている。
②群れからはぐれて逃げ回っている。
③気絶して浮きも沈みもせずに漂っている。
この中で最も捕食しやすいのは③の「浮きも沈みもしない」状態だ。しかし、ジグは鉛なので放っておくと沈んでしまう。そこで、スローピッチで連続的なヨコ方向の動きを演出することにより人間の目から見て最もそれに近い状態を作り出すわけである。このテクニックを生み出した佐藤統洋師匠の着目点はココにあると思っている。
魚の時間に対する感覚は人間の55倍といわれている。つまり、人間にとっては瞬間的な時間の長さであっても、その55倍の流れで見ているといえる。
これを前提に考えるとタテ方向の移動距離が短く、すぐさまヨコを向くという一連の動きを連続的に演出すれば、魚には浮きも沈みもしない状態に見えているはずだ。魚の目は速い動きに対して素早く的確に動くものを識別できる。まさにその能力を逆手に取った釣り方になるわけである。
魚の色覚と視軸について
【ステップ6】では視野や視力について紹介したが、それ以外に色覚や視軸も無視できない部分だ。色覚はジグのカラーを選択するうえで非常に悩む要因である。視軸は視野の中のどこを軸としているかにより、ジグをアピールさせるポイント、アクションがかわってくると思う。では、それぞれについてもう少し突っ込んで考えてみよう。
●色覚…僕の場合、ジグのカラーはカサゴやハタ類などはピンク、マグロやカツオなどはブルー、ブリ族はピンク、マダイは黄色、ピンクなどでスタートすることが多い。ただし、魚には色覚があるものとないものがいる。
前述した中で色覚を持つ魚はカサゴ・ハタ類・ブリ族・マダイ、色覚がないのはマグロ・カツオとなる。色覚を持つ魚はそのとき食べている餌、太陽の高さや光の入射角で変化する光量、生息している場所の水色などで、色に対する興味がかわってくるように思う。
そもそも色とはその物体に太陽光がぶつかり、跳ね返った光が我々の目に届いて色として識別されている。たとえば植物の葉は、葉という物体に光が当たりそれが拡散して緑色のものとして目に届く。海の青も信号の色もすべて同様で、本来物体には色がないようだ(そのように見えたことがないので…??)。
魚も人間と同じで(人間が魚と同じというべきだろうが…)、網膜の中では光量によって細胞が入れかわり、ものを見ている。明かるいところでものを見る場合は錐体(細胞)視、暗がりでものを見る場合はかん体(細胞)視となるのだが、では色覚がない魚に色の好みがあるのはなぜなのだろう?
マグロ・カジキ・カツオなどは色覚がないが、なぜかブルーに好反応を示す。その理由として、これらの魚は色の濃淡、つまり明暗のコントラストの違いで判断しているように思う。特にジグのカラーリングでは片方(背側)の端がブルーでその他がホログラムより、片面ホログラムで対面が薄いブルーというパターンが有効となる。以前に「薄いブルーは魚に見えにくい」と聞いたことがあるが、これが正しければホログラムのフラッシングとライトブルーの見えにくさからくる明暗の差に反応しているのではないかと考えている。
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