ターゲットの行動パターンを読んだ戦略でメーターオーバーのシイラをキャッチしよう!!《前編》
ひとたびヒットすれば激しいジャンプとランを繰り返し、ランディングされてもなお抵抗をやめないシイラ。南風とともに接岸してくるメーターオーバーとのパワーファイトを味わうための条件の絞り込み、取るためのファイトスタイルを《前編》と《後編》に分けて詳しく紹介します
解説:黒川弘樹
ショアシイラゲームの魅力
和歌山県の中~南紀エリアは5月ごろの暖流の接岸でターニングポイントを迎える。ここからの水温の上昇にともなってさまざまな魚種が活性を高め、5月中旬ともなれば沖合でシイラの姿が見られ始める。
シイラは非常に魅力的なターゲットだ。さまざまなルアーに好反応を見せるSWゲーム向きの魚だが、特におもしろいのはトップウォータープラグの釣りだろう。ハイジャンプをともなうド派手なバイト、一気のダッシュ、フックを外そうと2度、3度とジャンプを繰り返すファイトは視覚的に興奮度を高めてくれる。
また、万力と呼ばれるだけあってそのパワーも一級品だ。メーターオーバーともなるとヘビークラスのロッドをフルベントさせる強引を味わわせてくれる。寄せてからの取り込みも容易ではない。磯際にきてからも暴れ回るし、長くて平たい魚体が足もとで横向きになってからは強烈な水の抵抗を受けるからランディングにてこずる場面も多く、この魚をキャッチするまでのプロセスにはショアの青物ゲームの基本が詰まっているといってもいいだろう。
シーズナルパターン
私のホームである中~南紀の場合、早ければGWぐらいから沖合でシイラの姿が見られだす。シーズンのカギを握るのは黒潮の接岸状況だ。四国の足摺岬から紀伊半島の潮岬にかけて黒潮があまり蛇行せず直線状に流れる年回りは水温が安定しやすくてシイラの回遊が多くなる。
シーズン初期は条件的に不安定だ。晴天が3日ほど続いたあとは期待できるが、晴れていても北西風の吹く気圧配置だと気温があまり上昇しないからシイラの活性は高まらない。南風の日が続いて気温が上昇傾向となることでシイラの表層での回遊が多くなってルアーへの反応も強まる。
水温が順調に上昇し、イワシ・アジ・キビナゴといったベイトの回遊が活発になればシーズン本番。8月初旬あたりまでが高確率で大型のチャンスがあるときだ。シイラは大型になるほど単独行動を取る傾向が強まるので型がよいときは数が出ないが、サイズアップを狙うならこの時期をハズせない。
ただ、このシーズンの大半は梅雨時期であり、釣行が大雨に邪魔をされることが多いのが難点だ。近年は短い梅雨に集中豪雨的な降り方となることが多く、雨のたびに沿岸部が濁った水潮に見舞われる。そうなると地磯の釣りは困難で、沖磯や沖波止でのゲームとなるが、それもあまり期待できない。雨が上がると西風が吹きつけて中~南紀では水面が撹拌されることで水温が下がるからだ。水潮と低水温を嫌ったシイラやベイトは回遊レンジが下がりがちで全般に活性は高まりにくくなる。
梅雨明け以降は水温低下の心配はほとんどないが、今度は台風の影響で水潮になることがある。もっとも、荒れた海況では釣行自体が危険だから無理せず状況の好転を待つべきだろう。釣行の際は数日前から天気図や黒潮の動向を注視し、状況を予測して釣行の可否や釣り場を考えたい。
ちなみに、和歌山では紀北から中紀にかけては大河川、中・小河川の流入が多く、比較的平野部が広いこともあって雨後は水潮になりやすい。その点、南紀では日置川から古座川の間に大きな河川は存在しない。だから雨後で少しでも水潮の影響を避けたいときは日置川よりも南で古座川より北のエリアが狙い目といえる。
魚の行動パターン&戦術
シイラの活性や回遊ダナは水温17度ぐらいを境に変化する。ここまで水温が上がるころにはカタクチイワシ・小サバ・小アジ・キビナゴなどの群れが中~南紀に接岸し、それを追う産卵を控えた大型のシイラが沿岸を回遊し始めるのだ。ただし、6月中旬までは昼夜の気温差が大きいからシイラの活性が高まるのは日がのぼってからになる。夏至に近づく時期ではあるが、あたりが完全に明るくなった6時以降に捕食スイッチが入って表層を回遊し始めることが多い感じだ。
状況を左右する最大のキーポイントは潮流だ。結局、水温もベイトの動きも潮によって支配されているわけで、シイラの活性は潮しだいということになる。釣行先を考えるときは暖かい潮の入り具合を示す紀伊半島の水温分布などを気にしたいし、釣り場では潮目のラインをいち早く見つけ、潮が動いている時間帯にどれだけ効率よくアプローチすることができるかがヒット率アップの要点となる。
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