魚をおいしく食べるということ|知っていたからって釣れるわけじゃないけれど…《アーカイブ from 2012》 | SWマガジンweb | 海のルアーマンのための総合情報メディア

魚をおいしく食べるということ|知っていたからって釣れるわけじゃないけれど…《アーカイブ from 2012》

魚のおいしい食べ方・持ち帰り方1

神経抜きは慣れないと少々残酷な気がするが、魚にしたら生きたまま窒息して死んでいくよりも見方によればはるかに安楽死となるから…

文:宇井晋介

※このエッセイはSWマガジン2012年5月号に掲載されたものです。

魚をおいしく食べる2つのポイント

釣った魚を食べるというと、はっきりと嫌悪感や意外感を表に出す人がいる。ゲームフィッシングなのに何で釣った魚を食べるの? スーパーで買えばいいじゃん、というかもしれない。

しかしながら誤解を恐れずにいえば、同じ魚を食べるならスーパーで買うより自分で釣った魚を食した方がはるかに自然への負荷は小さい。スーパーに並んでいる魚ももともとは海や川で取れたものだ。養殖魚にしてもほとんどは稚魚を自然から取ってきて大きくしたものだし、卵からできた完全養殖にしたって餌はすべて自然界から調達してきたものである。つまり、この地球上の魚資源はすべて海や川と太陽が作り出したものに他ならない。

ただ1点違うことがある。それは自分が釣った魚を食べることと、店で買って食べることの間の「無駄の違い」である。我々が1匹の魚を釣るためにどれだけの野生の魚を無駄にするか。1匹釣るまでにたとえば3匹の魚に糸を切られてしまえば、あるいはそこで傷ついて人知れず死んでいく魚がいるかもしれない。だが、誤って目的でない魚を釣ってしまった場合には、すみやかに海に帰してやればそこに無駄は発生しない。

魚のおいしい食べ方・持ち帰り方2
自分で釣った魚を食すことは自然への負荷が小さいといえる。

しかし、漁業はそうはいかない。定置網にしろ底引きトロールにしろ巻き網にしろ、1匹の魚を取るためにはその何倍もの市場に出回らない魚、すなわち無駄な資源がゴミ同様に処理されてしまうのだ。ただ漁師さんの名誉のためにいわせていただくと、これは決して漁業者の責任ではない。漁獲の方法上、あらゆる魚が入ってくるのは仕方ないのだ。その点で釣りはあらゆる漁法の中で最も無駄が少ないといえる(ただし、魚が減圧症で死んでしまうような深い海の場合は必ずしもそうではない)。

だからアングラーは堂々と自分が釣った魚を食べればよい。「魚を食べない」という人には勝てないが、魚を食べる人なら誰でもあなたの方が魚と魚資源にはやさしいはずである。

また同じ食べるなら、おいしく食すのが命をいただく代わりのせめてもの義務である。別にそうしなくては魚に申しわけがないというわけでなく、魚が浮かばれないというわけでもないが、私たちの自己満足としてでもいいからおいしく食べたい。

魚をおいしく食べるには2つのポイントがある。1つは「旬」を外さないこと。そしてもう1つは「上手に持ち帰ること」である。

魚の旬を外さない

まずおいしく食べるにはその魚が旬であること。最近はすべての食品に旬がなくなってきたといわれる。旬には2つの意味があるが、1つは最もおいしい時期のことであり、もう1つはその食品が最もたくさん出回るころをいう。

人間が人工的にその生長をコントロールできる野菜や果物では、温度や照度コントロールによって1年中流通ルートに乗せることができ、いつでも手に入れることができる。このため多く出回る時期がなくなってしまったものがたくさんある。また、いつ食べても同じで、特別においしい時期というのがなくなってしまった。

魚でもそれは同じであるが、野菜などに比べてまだ旬の感覚は強い。しかしながらマグロやタイ・ヒラメなどのように広く養殖されている魚については確かによく出回る時期というものは少なくなった。養殖魚はまるで工場製品のように市場の要請と価格によって出回るからだ。もっとも野菜と違って魚は天然ものもまだまだ多く流通しており、よく出る時期というものはどの魚にもある。

もう1つは味の旬だ。魚は産卵期などを控えて餌をたくさん食べて脂が乗っているころが一番おいしい。たとえばヒラメだと春の産卵を終えた魚は身が薄くなり、脂も抜けてちっともおいしくない。だが、夏から秋になると脂肪を蓄えてだんだん味がよくなる。産卵前の寒い時期には肉も厚くなり、脂肪も蓄えられて最もおいしくなる。これがヒラメの旬である。

ただ、魚の旬の時期は地方によってかわる。特に日本は南北に細長い国なので魚が取れる時期がずれる。また、水温も異なるので同一の魚であってもその産卵期がずれる。よっておいしい時期もずれるわけである。

魚のおいしい食べ方・持ち帰り方3
味の旬を求めて楽しめるのも釣りの魅力だ。

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